AIを活用してニュースの新しいビジネスモデルを構築する

COVID-19の流行が経済に多大な影響を及ぼしており、ジャーナリズムにとっては世界中のメディアが衰退するほどの危機になるかもしれません。

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AIを活用してニュースの新しいビジネスモデルを構築する

本記事はThe Conversationに掲載された、フランスのUniversité du Québec à Montréal (UQAM)でジャーナリズムを専門とするAlexandra Wake教授による記事「How artificial intelligence can savejournalism」をCreative Commonsのライセンスおよび執筆者の翻訳許諾の下、掲載するものです。

新型コロナウイルスの流行が経済に多大な影響を及ぼしており、ジャーナリズムにとっては世界中のメディアが衰退するほどの危機になるかもしれません。

ジャーナリズムの未来とその存続は、人工知能(AI)にかかっているかもしれません。ニューヨークのコロンビア大学でジャーナリズムを専門とするフランチェスコマルコーニ教授によると、AIは「経験から学び、人間のようにタスクを実行するインテリジェントマシン」とのことです。また、教授は最近ニュースメーカー、人工知能、ジャーナリズムの未来を主題とした本を出版しました。

マルコーニ氏は、ウォールストリートジャーナルとAP通信(世界最大の報道機関の1つ)のメディアラボの責任者でした。彼の論文は明確で議論の余地がないのが特徴です。例えば、「ジャーナリズムの世界は新技術の進化に追いついていない」がその例です。この論文からも分かるように、ニュース編集室はAIを利用して、その新しいビジネスモデルを考え出す必要があります。

マルコーニ氏はジャーナリストとメディアオーナーは不足しているため、AIはジャーナリズムのビジネスモデルの中心にあるべきだと考えています。ケベック大学モントリオール校のジャーナリズムの教授として、私は1990年以来、この業界の進化を追跡してきました。

例えばカナダのCanadian Press通信社は、AIを使用する珍しいメディアの1つです。同社はAIを用いた高速翻訳システムを開発しました。フランス通信社(AFP)もまたAIを活用し、加工された写真の検出を行っています。

AIはジャーナリストの代わりにならない

人工知能はジャーナリストを代替し、仕事を奪う存在ではありません。マルコーニ氏は、現在の記者のタスクの8~12%のみが将来機械により処理されるようになると考えています。これにより、編集者とジャーナリストはより付加価値のあるコンテンツの作成に集中することができます。例えば長期のジャーナリズム、特集インタビュー、分析、データ駆動型ジャーナリズム、調査ジャーナリズム等がその例です。

現在、AIロボットはAPでのスポーツスコアや四半期決算報告、スイスでの選挙結果、ワシントンポストでのオリンピック結果について、2から6段落をつけるなどの基礎的なタスクをこなしています。こうした現実がある一方で、これはAIの限界も示しています。

大規模なデータベースを分析するAIロボットは、ビッグデータにトレンドや異常が発生すると、ブルームバーグニュースのジャーナリストにすぐにアラートを送信できます。

AIは、オーディオとビデオのインタビューの内容を文字に起こすことで、記者の時間を大幅に節約することもできます。AFP社はすでにそうしたツールを利用しています。大規模なデータベースに依存する汚染や暴力に関する主要なレポートについても同様です。人工知能は複雑なデータをすぐに処理・分析できます。

ジャーナリストは、事実確認や分析、状況把握、情報収集などの重要な作業を行います。AIにはこれらを処理できる能力がありません。つまり、人間はジャーナリズムのプロセス全体の中心になる必要があるのです。


《The Conversation》

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