インフォデミック: 「誤情報」を正すメディアの努力が逆効果を生む可能性

パンデミックが世界で猛威を振るう中、政治家や医療専門家、疫学者たちは、平坦化曲線、コンタクトトレース、R0、成長因子といったコロナウイルスの対策に関する知識の共有に寄与しました。同時に、私たちは「インフォデミック」、つまり、真実と誤情報を切り離すことが…

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<p>Photo by Max Muselmann on Unsplash</p>

本記事はThe Conversationに掲載された、オーストリアのAustralian National UniversityのEryn Newman教授とAmy Dawel教授とアメリカのUniversity of Southern CaliforniaのMadeline Claire Jalbert教授とNorbert Schwarz教授による記事「Seeing is believing: how media mythbusting can actually make false beliefsstronger」をCreative Commonsのライセンスおよび執筆者の翻訳許諾の下、掲載するものです。

パンデミックが世界で猛威を振るう中、政治家や医療専門家、疫学者たちは、平坦化曲線、コンタクトトレース、R0、成長因子といったコロナウイルスの対策に関する知識の共有に寄与しました。同時に、私たちは「インフォデミック」、つまり、真実と誤情報を切り離すことが難しい情報が氾濫しているという課題に直面しています。

コロナウイルスに関する誤った情報は、深刻な問題を引き起こす可能性があります。「免疫力を高める」とされている「治療法」や5Gが発生させる電磁放射線に関連した陰謀論などの誤情報が蔓延していますが、既にこうした誤情報により直接的な被害が起こっています。マクロ的にはコロナウイルスから身を守るための誤った情報を信じている人々は精神的に安定した状態にあるのかもしれません。

ソーシャルメディア企業は、こうした誤った情報の広がりを抑えるために対策を講じています。対照的に、主要メディアやその他の情報発信媒体は、誤情報の発信を強化している状態にあるといえるでしょう。

しかし、こうした誤情報の発信は意図せず、国民に明らかになることで裏目に出る可能性があります。

「誤情報と真実」の公式

ニュースメディアや健康福祉に関するウェブサイトでは、コロナウイルスに関する「誤情報と真実」に関する記事が数え切れないほど掲載されています。一般的に、記事は太字で誤った情報を共有し、それが誤情報である理由の詳細な説明とともに掲載されています。

このコミュニケーション戦略は、現在進行中の反ワクチン運動や他の健康に関する誤情報に対抗するための試みで、これまでも利用されてきた戦略です。

これらの記事が普及している理由の一つは、読者が積極的にそうした記事を検索しているからです。例えば、グーグルでの検索トレンド「コロナウイルスに関する誤情報」は3月に世界的に急上昇しました。

情報の誤りを指摘したり、誤情報と真実を対比させたりすることは、直感的には誤情報を正すのに効果的であるように思われます。しかし、研究によると、このような修正戦略は誤った情報をより身近に感じさせ、結果として新しい人々に誤情報を広めてしまう可能性があることが明らかになっています。

親しみやすさが信用を生む


《The Conversation》

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