#フードポルノ : 人々はソーシャルメディア上にあるハイカロリーな食べ物に惹きつけられる

本記事はThe Conversationに掲載された、カナダのSaint mary’s universityでマーケティングを専門とする Ethan Pancer准教授とカナダのRyerson Universityでマーケティングを専門とするMatthew Philip准教授による記事「#FoodPorn: People are more attracted to social media content showcasing fatty foods」をCreative Commonsのライセンスおよび執筆者の翻訳許諾の下、掲載するものです。

COVID-19が流行し始めて以来、外出の機会が少なくなっています。そのため、ソーシャルメディア上で食に関する投稿が増えるのは当然のことでしょう。お気に入りのレストランやカフェ、ファストフード店へのアクセスが限られている中、人々はソーシャルメディア上で料理を安全に楽しむことができます。

その中でも、どのような投稿が最も興味を引き、オーディエンスエンゲージメントを得られるのでしょうか。

Journal of Consumer Psychology誌に掲載された私たちの最近の調査では、ソーシャルメディア上で描写される料理の栄養学的構成に焦点を当てました。BuzzfeedのTastyプロフィールに掲載されている何百ものFacebook動画のレシピと材料を調べたところ、カロリー密度がソーシャルメディアのエンゲージメントにポジティブな影響を与えることがわかりました。

興味深いことに、すべての栄養素が同じようにオーディエンスエンゲージメントに影響するわけではありません。飽和脂肪酸のように、人々の目に留まりやすいものの方が強い影響力を持つと考えられます。

目で見る食事

COVID-19は、私たちの食との関係性を根本的に変えました。何を食べるのかどこで食べるのかなぜそのような食べ方をするのかさらにはいつ食べるのか等です。

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パンデミックが始まってから、人々がソーシャルメディアを利用する時間が増え、ソーシャルメディアの普及は、人々の食への考え方にも変化をもたらしています。

この記事が掲載された時点で、Instagramには「#food」タグの付いた投稿が4億件以上、「#foodporn」タグの付いた投稿が2億5千万件以上までのぼり、ソーシャルメディア上には食べ物のビジュアルディスプレイが溢れています。

特に、Buzzfeedの「Tasty」は、Facebookで1億人以上のフォロワーを獲得し、月間視聴回数が10億回を超えるなど、世界最大のデジタル料理ネットワークとなっています。

食に関するメディアがオンライン上に遍在していることを考えると、視聴者の好みに合わせてメディアを作成したいと考えているコンテンツ制作者、マーケティング効果を高めたいと考えている広告主、消費者がより良い食生活を送れるようにサポートしたいと考えている健康支持者など、様々なグループにとって、エンゲージメントを形成する特性を理解することは非常に重要です。

栄養とソーシャルメディアエンゲージメント

人間は、脳が本能的に価値を見出した食べ物を求めるようにできています。カロリーの高い食品(ハンバーガー、ピザ、クッキーなど)を見ることは、一般的に快楽消費に先立って行われ、そのように人間が視覚的に食べ物に惹きつけられるのは自然なことです。

カロリーの高い食品を見つけて食べると、ドーパミンが放出されるため、脳の快感中枢が刺激されて、通常、気分が良くなります。このことから、料理の見た目で栄養成分を大まかに把握することができ、カロリーの高い食事を目にするだけで気分が良くなることがわかります。

オンライン上での行動に影響を与えるという点では、気分の良さとデジタルエンゲージメントの関係はよく知られています。ポジティブなコンテンツはバイラルになる可能性が高くなるため、閲覧者の気分を良くするコンテンツは、「いいね!」や「コメント」、「シェア」される可能性が高くなります。これらを総合すると、カロリーが高そうな食品メディアに視覚的に触れることで、ソーシャルメディアへのエンゲージメントが高まるでしょう。

脂肪が多い=エンゲージメントが高い?

私たちは研究の際に、BuzzfeedのTastyに掲載されている数百本のFacebook動画のレシピと材料を、テキスト処理アルゴリズムを使って調べました。その結果、カロリー密度がソーシャルメディアのエンゲージメントにプラスの影響を与えることがわかりました。さらにいくつかの実験では、カロリーの高い食品を視覚的に見た後に気分が良くなることがわかり、この関係を説明するのに役立つことが示唆されました。

興味深いことに、その関係性は栄養素によって異なります。飽和脂肪酸のように可視化できるもののほうが、より大きな役割を果たしているのかもしれません。

飽和脂肪酸は、バター、チーズ、肉、油などに多く含まれており、食品にジューシーさ、噛みごたえ、クリーミーさなどの感覚を与えることで知られています。

この結果は、WD-40で人工的な光沢を加えることで、食べ物をよりふっくら、しっとり、ジューシーに見せることができるという、料理写真のある種のアプローチと一致しています。

この結果は、興味深い問題を提起しています。例えば、脂肪分の多い食品の視覚的特徴を利用することで、野菜のような健康的な食品をより魅力的に見せることができてしまうのではないでしょうか?

このような栄養素の視覚的特徴を明らかにすることで、より健康志向の強い食品メディアコンテンツへのエンゲージメントを高める戦略を立てることができます。

アンプリフィケーションの重要性

しかし、なぜソーシャルメディアのエンゲージメントが重要なのでしょうか?

ソーシャルメディアのプラットフォームは、順位付けのアルゴリズムを用いて、エンゲージメントの高いコンテンツを優先的にブーストします。ただコンテンツを投稿するだけでは、それが閲覧されることはありません。むしろ、コンテンツへのエンゲージメントこそが、リーチを拡大し、より多くの人にコンテンツを届けることにつながるのです。不健康な食品やカロリーの高い食品を取り上げたコンテンツがエンゲージメントを獲得しやすければ、それらがより多くの人に届く可能性が高くなります。

今回の研究では、食品メディアの栄養成分がソーシャルメディアのエンゲージメントにどのような影響を与えるかについての初期の知見を得ることができました。特にパンデミックが発生した際に、消費者が食品メディアに夢中になる傾向が強まるため、このコンテンツへのエンゲージメントを高める要因を理解することは、公衆衛生上も非常に重要です。

これらのことが人々の食生活に影響を与えるだけでなく、人々が何を共有するかという点において、栄養が社会的なダイナミクスを形成し、最終的には人々の食生活に影響を与え、正常化させる可能性が示唆されています。

今度、SNSで食べ物の動画に「いいね!」を押したり、コメントしたり、シェアしたりするときは、その食べ物のどこに魅力を感じているのかを考えてみてく

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デジタルメディアの生き残りを賭けた戦略の中で世界的に注目を集めているサブスクリプション。月額の有料購読をしてもらい、会員IDを軸に読者との長期的な関係を構築。ウェブのコンテンツだけでなく、ポッドキャストやニュースレター、オンライン/オフラインのイベント事業などメディアの立体的なビジネスモデルをサブスクリプションを中核に組み立てていく流れもあります。

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