7月13日、Pew Research Centerは米国ニュースルーム全体の雇用が2008年から2020年で26%も減少していることを報告しました。人数でみると約11万4千人のうち3万人が職を失ったということになります。しかしその内訳をみていくと、減少の主要因は新聞社の57%減少であり、デジタルパブリッシャーは114%の大幅増になっていることもわかりました。また、新聞社の雇用割合がニュースルーム全体で62%から36%まで落ち込む一方、デジタルパブリッシャーの割合は6%から21%となり、逆転の兆しが見えてきていると言えます。
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減少を続けるニュースルームの雇用
米国ニュースルームの雇用人数は2008年の時点では約11万4千人でしたが、2020年までの12年間で26%の約3万人を失うこととなりました。この減少は毎年一定というわけではなく、2014年までの減少が著しくなっています。具体的には、その年までに約2万4千人が職を追われていることになります。特に2009年が約1万人で最も大きな減少幅を記録しているようです。以降の6年間は、微減ではありますが、比較的安定しているように見えます。ただ、この調査には新型コロナウイルスによるパンデミックの影響は完全に反映されておらず、調査結果よりさらに減少している可能性もあるでしょう。
窮地に立たされる新聞社
ニュースルーム全体の雇用が減少する中、最も深刻なのが新聞社です。新聞社の雇用は2008年時点で約7万1千人であったのが、2020年には約3万1千人まで56%も激減しています。また、ニュースルーム全体では2014年までの減少がほとんどと前述しましたが、新聞社については年々定常的に減少しており、窮地に立たされていることがよくわかります。加えて、同社の過去の調査から2020年の8月時点で、新聞社の三分の一が大規模なレイオフを経験していること、約2千8百の新聞社が政府からの援助を受け取っていることも判明しており、上記を裏付けています。
デジタルパブリッシャーは堅実に成長中
新聞社が窮地に立たされている一方、デジタルパブリッシャーはこの12年間で大きく成長しました。ここで言うデジタルパブリッシャーとは、オンライン上でのみニュースを発行する企業を指し、紙媒体の新聞発行を休止してデジタルに移行した新聞社も含まれています。デジタルパブリッシャーの雇用は、2008年時点では約7千4百人でしたが、2020年には約1万8千人となり、144%も増加しました。増加のペースは毎年堅実に増えていく形ですが、直近の2019年、2020年の増加数が顕著に大きいようです。パンデミックによる影響が完全に反映されていないデータであるため、その影響を考慮すればさらに増加していても不思議ではないでしょう。
ニュースルーム全体の中の雇用割合で見ると、デジタルパブリッシャーの割合は6%から21%まで増加した形となっており、全体ではそこまで大きいものではありません。しかしながら、2008年で62%を占め最も割合の多かった新聞社が2020年には36%まで割合を落としていることを考えると、この先両者の雇用割合は逆転する可能性すらあると言えます。もっとも、テレビ関係の雇用割合も25%から35%へ増加しているため、デジタルパブリッシャーが米国ニュース業界において雇用面で支配的になることは難しいとも言えそうです。
パンデミックの影響を完全に反映できていないにしても米国において紙媒体の新聞が衰退産業であることは疑いようがなさそうです。より詳しい調査手法はこちらでも確認で