【メディア企業徹底考察 #16】債務超過に転落した広告写真のアマナ、10億円の資金調達で成長軌道に乗れるか?

広告写真の制作やストックフォトの販売を行う株式会社アマナが、2021年3月31日に債務超過に陥り、上場廃止に関わる猶予期間に入ったと発表しました。アマナは新型コロナウイルス感染拡大で広告代理店などからの発注数が減少し、2020年12月期の売上高が25.0%減の172億6,800万円となりました。売上減の煽りを受けて15億2,300万円の営業損失(前年同期は9,700万円の黒字)を計上。24億6,700万円の純損失(前年同期は2億2,300万円の赤字)を出していました。

■アマナ業績推移(単位:百万円)

決算短信より筆者作成

広告需要は依然として完全回復しておらず、アマナは苦境に喘いでいます。2021年12月期の売上高は前期比12.6%増の194億5,000万円とやや回復する予想を出しているものの純利益は1億6,000万円と、ギリギリで利益を出せる状態です。2021年3月末時点での債務超過額は7億6,100万円で、このままでは債務超過の解消はできません。

2022年12月末までに債務超過の解消ができなければ上場廃止になります。しかし、アマナは第三者割当増資によってこれを回避する一手を打ちました。文房具大手のコクヨや倉庫事業の寺田倉庫などを割当先として新株を発行し、合計で10億5,600万円を調達するのです。ただし、資金調達をしてもなおアマナの自己資本は薄い状態が続いており、コロナが長引けば再び債務超過転落も視野に入ります。

営業系の人員が利益を圧迫する結果に

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アマナは1979年4月に存続会社として設立されたアーバンパブリシティが前身となる会社です。広告写真などのビジュアルコンテンツの企画制作を行っていました。2004年7月にはマザーズ市場に上場。テレビやWebで頻繁に目にする株式会社アマナイメージズは子会社の一つです。この会社のほかに、アートフォトを販売する株式会社イエローコーナージャパンやWebメディア運営の株式会社料理通信社など10数社を子会社として抱えています。

新型コロナウイルス感染拡大前まで、売上高は1~3%前後で増加していましたが、マザーズ上場の会社としてはやや精彩を欠いていました。同時期、広告代理店大手の電通や博報堂は3~5%前後で売上高を積み上げていたのです。また、アマナは2017年12月期から営業利益が減少の一途を辿っており、3.6%だった営業利益率は2019年12月期に0.4%まで落ち込んでいます。2019年12月期から利益重視の経営姿勢を前面に出しましたが、ここまで利益率が悪化すればそれも頷けます。

アマナはクリエイターや機材レンタルなどの外注費が原価の多くを占めています。2017年12月期から原価を下げることには成功しています。わずかではありますが、コロナ禍でも原価率は2019年12月期を下回りました。外部の協力会社を適正に評価・選定するシステムを導入し、必要以上に経費がかからない体制を築いたのです。しかし、原価をいくら切りつめてもそれ以上に販管費が膨らんでおり、2019年12月は販管費率が40%を超えました。これでは原価を切り詰める意味があまりありません。

■2017アマナ原価(率)と販管費(率)の推移(単位:百万円)

決算短信より筆者作成

販管費が増加している原因は人件費にあると考えられます。アマナは営業力強化を推進しており、営業系で稼働している人員が他部門と比較して増加しています。2018年12月期に493人だった営業系人員は2019年12月期に518人、2020年12月期に557人となりました。2020年はコロナで売上高が急減し、慌てて受注強化を目論んだものと考えられますが、人員の増加が裏目に出てしまいます。

■稼働人員数(単位:人、百万円)

決算説明資料より筆者作成

そもそも、コロナ前の2019年12月期で営業系人員1人当たりの売上高は4,450万円となり、前期比1.5ポイント減少していました。それがコロナで3,100万円まで下がったのです。企画力や提案力が問われる広告系の営業は、高いプレゼン力が必要となるため、社会人経験の薄い人材には向きません。一方、提案力の高い人材は広告代理店などの上流の会社に入ってしまいます。代理店から下りてくる仕事が多いアマナのポジションは、企画提案力の強い人材が集まりにくいものと考えられます。広告代理店の下請けに甘んじず、自力で案件を獲得する営業力は会社の成長にとって極めて重要です。しかし、その結果が業績に反映されるのには長い時間がかかるものと予想できます。

この苦しい状況下で手を出したのが不適切な会計処理でした。

取締役の了承後も行われていた不正処理

アマナは2020年12月期第3四半期の決算作成作業において、子会社アマナデザインの取締役兼ゼネラルマネージャーが担当する案件で、長期にわたる3,500万円の未収金があったことから、回収可能性を検討するためのヒアリングをしました。その結果、売掛金は実態のない案件での売上、すなわち架空売上であることがわかりました。これをきっかけにアマナは特別調査委員会を設置。本格的な調査に乗り出します。

不適切会計は架空売上のほか、原価の付け替えなど、いくつかのパターンがありました。その中でも、原価の付け替えはやや悪質でした。制作担当者が、赤字、もしくは利益率の悪い案件の原価を、他の案件に付け替えて支払っていたものです。不適切処理を行った背景には、案件単体で赤字が出ることにより、クライアントとの取引がなくなることへの危機感がありました。この担当者は執行役員や役員にこの事実を相談。すると、今度は執行役員が主体となり、支払いが滞った原価を一括で支払わず、粗利が出るよう分割、あるいは原価を付け替えて支払ったといいます。不適切会計処理の事実を把握してもなお、役員が了承した上で執行役員が主体となり、それを継続していたことになります。

アマナは2018年にも中国子会社の人件費を巡る不適切な会計処理があり、再発防止に努めていました。確かに、クライアントへの配慮や制作物へのこだわりという観点で見ると、不適切な会計処理をする気持ちがわからなくもありません。しかし、これが会社を守り、株主に成長を約束する経営陣が率先して行っていたとなれば話は別です。会社が成長するためには、案件単体が抱える問題を根本的に解決し、利益を出す体制に変えなければなりません。この視点が欠けていることこそが、成長の阻害要因になっているのです。

アマナが飛躍するためには、大きく2つの道があると考えられます。1つは営業力の強化で案件数を伸ばす道です。もう1つはサービス力の強い商品を開発する道です。サービス力の強化はM&Aで成長企業を取り込むのが手っ取り早い方法ですが、今はそれをするだけの資金力に欠けています。自社で開発するのも時間がかかり、この道を選ぶ可能性は低いでしょう。そうなると、営業力の強化が必要不可欠になります。それと同時に、本質的に利益を出す体質へと改めなければなりません。この地味な取り組みを推進できるかどうかが、分水嶺となります。

アマナは10億円の資金調達で上場廃止という最大の難局を乗り切ることはできます。しかし本質はそこではありません。債務超過と資本業務提携をきっかけとして組織の変革を遂げることができるのか。その試練に立たされていると言

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