独アクセルシュプリンガー、米ポリティコを買収・・・取引額は10億ドルと報道

現地時間8月26日、ドイツの大手メディアであるアクセルシュプリンガーは、ニュースサイトの米ポリティコを買収することを発表しました。2021年第4四半期に取引が完了する予定です。

アクセルシュプリンガーは、合弁事業である「ポリティコ欧州版」の未保有株式50%と、ポリティコの姉妹サイトでテクノロジーに特化した「プロトコル」も取得する意向です。詳細の金額は公表していませんが、取引額は10億ドルと報じられています

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ワシントンを含む全米および世界中の政治に関する深い視点と分析を提供するポリティコの権威性により、アクセルシュプリンガーのポートフォリオを強化するとしています。2007年に発行が開始されたポリティコは、この15年の歴史のなかで、世界で最も影響力のあるニュースサイトの一つとして地位を確立してきたとアクセルシュプリンガーは評価。現在、ポリティコと2020年に創刊されたプロトコルには、500人以上のジャーナリストが在籍しているとのことです。

また、両社は2014年にポリティコ欧州版を立ち上げて以来、ジョイントベンチャーパートナーとして活動してきました。ベルギーを拠点とするポリティコ欧州版は、ニュースルームと収益の両方を継続的に成長させ、2019年からは黒字化を達成しているとのことです。なお、経済専門誌の米ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)は現地時間8月16日、アクセルシュプリンガーがポリティコの買収に向けて交渉を進めていると報じていました。

ジャーナリズム研究所「ニーマンラボ」がポリティコの取り組みを評価

米ハーバード大学のジャーナリズム研究所「ニーマンラボ」は、今回の買収に至るまでにポリティコが実施してきた取り組みを、以下のように高く評価しています。

無料版と有料版の両方を運営

ニュースサイト「ポリティコ」を有料化するのではなく、同社は2010年、業界団体やロビイスト、防衛関連企業、銀行、医療関連企業などを対象とした別のサービス「ポリティコ・プロ」を開始した。これにより、一般ユーザー向けサイトは無料のまま、収益の半分をポリティコ・プロから得ている。

紙媒体からの収益も確保

デジタルに一本化するメディアもあるなか、同社はワシントンで無料配布する印刷版を創刊し、2021年現在も配布を継続している。政治業界で権力を持つ人や政治に関心のある人を主なターゲットにしたこの政治新聞は、ブランドマーケティングの役割を果たした。同社がデジタル版で大きな成長を収めていたときも、印刷版は総収入の60%を占めており、印刷版の安定した収入源があったからこそ、デジタル版の長期的な戦略が可能になった。

メールマガジンの活用

政府職員が使用できる携帯電話がBlackBerryだけだった時代に(iPhoneが発売されてから3年後)、同社は携帯電話ブランドBlackBerry用に独自のアプリを作った。これにより、当時新規参入のデジタルメディアであった同社が、潜在的な読者にリーチできた。

買収や新事業展開により規模を拡大

米Capital New York、ベルギーに本拠を置くEuropean Voice、米E&E Newsなど、中小規模のメディアを中心に積極的に買収をしてきた。また、ヨーロッパやカナダ、国内の複数の州で事業を展開し、地理的にも規模を拡大した。

起業家精神のある人材の育成

同社を退職した従業員がAxiosPunchbowlなどを立ち上げ、同社のDNAを受け継ぎつつ、ビジネスの規模を拡大してきた。従業員が退職したり起業したりするのをポリティコが好ましいと思っているわけではないが、結果的に起業家精神のある人材を育成している。

他メディアとの差別化

APやニューヨーク・タイムズと戦うには、何らかの差別化する必要があり、ポリティコはスピードとスクープで差別化を図った。ローンチ当初は一日中ニュース速報を流していた。これにより、政治に関心のある読者と政治業界で権力を持つ人の間で、信頼を得られた。その後は配信ペースを少し落とし、ボリュームのある政治報道を行うようになった。

アクセルシュプリンガーは近年、米国メディアの保有数を増やしており、2015年にはビジネスメディアのビジネスインサイダー、2020年にはニュースレターを運営するモーニング・ブリューを買収しました。今回のポリティコの買収により、アクセルシュプリンガーの成長戦略を実現し、米国のメディア事業を強化する狙いがあるよ

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Yuka Hirose
Yuka Hirose
ライター・翻訳者。大学で工学を学び精密機器メーカーで勤務ののち、2020年に独立。群馬県出身。

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