エスイノベーション・星野氏、フジテレビジョン・清水氏、朝日メディアラボベンチャーズ・山田氏が語る『メディアのイノベーションと地域連携の今』とは?文化放送・浜カフェとのコラボ企画

Media Innovationでは、メディア関係者の方々に有益な情報をお届けできるよう、日々取材をし、イベントを開催してきました。ただ、従来型のメディアのビジネスモデルの延長だけでなく、その垣根を超えて、まさにイノベーションを起こしていくことも大切なのではと考えております。異分子結合をメディアは場づくりを通して促せるのでは、という仮説のもと、同じ「イノベーション」を番組名にもつ、文化放送の「浜松町 Innovation Culture Cafe」(通称:浜カフェ)とコラボレーションさせていただくことになりました。

登壇者
・星野 善宣(エスイノベーション 代表取締役社長)
・清水俊宏(フジテレビジョン 編成制作局コンテンツ事業部副部長 兼報道局 兼広報局)
・山田正美(朝日メディアラボベンチャーズ 投資担当ディレクター)

Media Innovation浜崎(以降MI浜崎):まずは自己紹介をよろしくお願いします。

パートナーオブスターズ株式会社 代表取締役 星野さん:はい。最初に自己紹介と系列の会社をご紹介させていただきます。2007年に起業し、パートナーオブスターズ株式会社を設立しました。基本的にはスタートアップのリソースシェアや広告PR 、インキュベーションのご支援をさせていただく会社です。

14年ぐらいこちらを経営する中、出身が新潟というところから6年前に新潟ベンチャーキャピタルの取締役として2号ファンドの組成から入ました。ベースは東京にあり、新潟と2拠点を行ったり来たりしながら、首都圏のスタートアップと新潟の地域課題のマッチング、新潟県内のベンチャーの投資でのご支援という取り組みをしています。

ファンドの方は、僕が6年前にはいってから作ったのが地方創生新潟1号というファンドで、規模としては18億1千万円です。新潟の金融機関、地銀、新潟の事業会社(スノーピーク、ハードオフなど新潟の上場企業)、国の方の基盤機構からお金をお預かりして、新潟の企業や、新潟とリレーションをもって地方課題を解決する会社19社にご出資させていただいています。社長が新潟出身というところでnoteに出資したりもしています。

ゼロイチであるスタートアップの支援をさせていただいていましたが、地方は中小企業や伝統ある企業が多いため、ここが成長しないと地域経済が回ってこないというところがあり、中小企業の事業継承やDX推進などの支援を行っています。テクノロジー、ヒューマンリソース、ケーススタディを共有して実績を作り、地方にとってのイノベーションの在り方をどんどん共有しながら、新潟スタートで全国展開しようというサービスをつくっています。

MI浜崎:詳しいお話をありがとうございました。続いて山田さん、お願いいたします。

朝日メディアラボベンチャーズ 投資担当ディレクター 山田さん:朝日メディアラボベンチャーズの山田と申します。親会社が新聞社で、インターネットの台頭で厳しい業界なので、新規事業、オープンイノベーションをやっていこうというところで、ベンチャー投資を中心に行っています。

2017年までは親会社で投資していましたが、スタートアップ企業とお付き合いする中で、手続き面や制度面で馴染まないところがあるので、子会社化しました。

親会社からだけでなく9社ほどから出資をうけていて、ファンド規模は20億円ちょっとくらいです。

投資領域はメディア企業と言いながらメディア以外のところが多く、国内ではD2C、サブスク、DX、働き方改革、シリコンバレーではテクノロジーに投資をしています。

並行してアーリーステージまでの若いベンチャーのご支援もしていて、「できること何でもやります」という感じですが、親会社がメディアなのでPR面のご支援は特に強いです。系列問わず新聞社やテレビ会社と交流があるので、ベンチャー企業をご紹介しています。

出資してもらっている企業とも密に連携していて、投資するしないに関わらずベンチャー企業と接点を持てるように紹介しています。

紹介がきっかけでベンチャーに投資する企業も生まれてきています。

オープンイノベーションの一環としてベンチャー投資をしたい場合に、VCに紹介頼むと情報の非対称性がありコミュニケーションがとりづらいという問題がありますが、うちはもともと事業会社をやっていてVCもやっているというところから、コミュニケーションもスムーズにとれますのでお声がけいただければというところです。

MI浜崎:ありがとうございます。お次は清水さんお願いいたします。

フジテレビ オンラインメディア戦略担当 清水さん:今日はテレビが今なにを考えているか、地域と連携して何ができるかということをお話できたらと思っています。

まず私自身は、編成制作局のコンテンツ事業部というところに所属しておりまして、報道と広報を兼務しています。チーフビジョナリストという変わった肩書を持っておりまして、いくつかの組織に所属しています。

もともと報道畑の人間で、政治部で小泉純一郎氏や小沢一郎氏の担当など与野党問わずやっていました。新報道2001やスーパーニュースの演出、ニュースJAPANのプロデューサーなど、地上波で情報をいかに早く正確に分かりやすく伝えるかということをやっていました。

2016年に当時のコンテンツ事業局に移動し、そこからはデジタル畑へと移りました。放送だけじゃない方法で情報を伝える形や、情報をマネタイズするやり方なども考えています。一方で、今でも毎年、福島第一原発に取材に行ったりと、自分の原点である記者の仕事もしています。

テレビの仕事に「テレビというデバイスにコンテンツを流す」というものがあるんですが、なぜテレビに流すかというと、見ている人が多いし、リッチな体験をしてもらえるからです。ただ、コンテンツを見られるデバイスや場所がPCやスマホ・タブレットなどがいくつも誕生しました。別の場所や別のプラットフォームで情報をうまく伝えられるのであればそこに流していくということもします。テレビというデバイスに流すだけでなく、コンテンツを使った驚きや感動の伝え方を常に考えています。

メディアと地域との関係というテーマを考えると、先日様々なメディアの幹部の皆さんと情報交換をしたのですが、オンラインイベントを開催したら地方のお客さんを取り込めた、地方紙に広告を出した方が全国紙に広告を出すより本が売れたなどの事例も多く聞かれました。ブランディングに地域をうまく活かすなど、メディアのイノベーションに地域を巻き込めば可能性があると感じています。

メディアのイノベーションでは、「テレビといえばこれ」という制作の流れや放送に対する固定観念のようなものが制作者側にも視聴者側にもあって、それを乗り越えないとイノベーションが起こりにくいんです。そんな中で、テレビで大勢に伝えるほどではないけれど知りたい人は一定数いる出来事をLIVEとしてネットに流したり、地震など速報原稿の自動生成をしたり、取材した映像がなくてもテキストだけでニュースを発信したりと、これまでのテレビ局では考えなかった新しい取り組みをしています。

TVはプラットフォームとコンテンツが武器で、テクノロジーを持っている企業や地域とどんどん連携していくのがいいと思っています。

テレビは大きな川に例えることができます。大きな川の流れでどうコンテンツを届けるかだけを考えがちだった今までの傾向から、支流、溜池、水たまりとシームレスな連携をしていくことが、これからのテレビに必要なことだと考えています。

MI浜崎:皆様ありがとうございます。パネリスト同士でなにかご質問はございますか?

星野さん:清水さんのお話を聞いて地方も似てるなと思ったところは、「川の流れから出られない」というところです。

「守らなければいけない」というところから抜け出せず、地方の中での文化に対してなかなかイノベーションを起こしづらいという課題があります。

フジテレビの中でイノベーションを起こす上で、こうしたらうまく行った、ここが難しいなどはありましたか?

清水さん:大体のケースが、壁を自分たちで決めてしまってその世界に閉じこもってしまっているというものです。テレビは24時間のタイムテーブルで、リモコンで8チャンネルを押してもらいたい。それ以外のことを考えようとしてもつい、「スポンサーがいるから…」「芸能事務所とのしきたりが…」などと、できない理由を並べてしまいます。

そこでイノベーションを起こす方法は、「外に味方をつくること」です。そして、失敗を恐れずに勝手に社内でやってしまうことです。

私が新しく始めたYouTubeチャンネルの「#シゴトズキ」もそういうやり方で、どんどん社外の協力者を増やして、頭の中で企画を固めて、社内はハンコが必要になりそうな段階になって報告しました。

「報連相」って子どもの頃から言われますが、私はそれに凝り固まらない方がいいと思っています。何も形になっていない状況で報告しても、報告された人がその上の人に報告し、その人がさらに上の人に報告し、とみんなの作業が増えるだけです。やるなら、報連相ではなく、「ソウ・レン・ホウ」かなと。相談→連絡→報告という順番がいいと思っています。

危ないかもしれない、経験のある上司に聞いたらもっとうまくいくかもしれないというときは相談した方がいい。だけど、「なんでもかんでも報告」するのはうまくいかない原因です。事前に報告するのが面倒くさくて、「じゃあ、やらなくていいか」なんてことにもなりがちです。

上司との事前の会話を否定しているわけではなくて、大きな悪影響がどこかに生じる、例えば、「新潟でこんなことやったら新潟の企業が全部なくなってしまうかも!」なんてちょっとでも嫌な予感がするのであればもちろん相談したほうがいいですよね。ですが、誰かに迷惑がかかる心配がないのなら、まずやっちゃいますね。そんなことばかり言っていると、社内の敵が増えるかもしれないですけど。

星野さん:共感ですし、外との連携は本当に大事ですよね。

清水さん:新潟ならではの課題感にはどんなものがあるのでしょうか?

星野さん:いわゆる地方に言われる課題感は新潟には少ないです。以前はハードルがあったり、否定的な人がいたかも知れませんが、今は第二世代、第三世代と若い世代に変わっていることと、課題が緊急事態的になっていて、否定している場合ではないというところでみんなが課題に対して前向きというところがあり、動きやすくなっていると感じます。

清水さん:そうなんですね。確かに、メディア全体で海外支局を減らす傾向にある中で、フジテレビ系列の新潟総合テレビはベトナムに支局を作ったりしていて、攻めの姿勢の面白い動きをしていますね。

清水さん:山田さんに出資先のスタートアップを紹介してもらったことがあります。フジテレビはフジ・スタートアップ・ベンチャーズを通じて、メディアとのシナジーを起こせるところに出資したいという傾向が強いんですが、山田さんにご紹介頂いた方は必ずしもそうではないところが多いなと感じたのですが、出資の判断などはどのようになさっているんでしょうか。

山田さん:僕たちはメディア本体でやっていることを出先でやる必要はないという考え方で、預かったお金を親会社にシナジーがある先に投資ということはしておらず、ピュアなVCと同じ投資判断で投資しています。

清水さん:その中で注目している企業やジャンルなどはあるんでしょうか?

山田さん:ジャンルを絞ってしまうとそれしか見ないので、特定のジャンルにフォーカスして見るということは基本的にはしていません。10年間でなにが起こるかわからないので、10年の最初にここに絞りますということはあまりしていないんです。

ファンドを立ち上げてすぐに投資したのがD2Cやサブスクで、トレンドが来たので良かったですが、AIでもフィンテックでもSaaSでもブロックチェーンでも、そこは分け隔てなく除外せずウォッチしています。

MI浜崎:山田さんからお二人に聞いてみたいことはありますか?

山田さん:地方の企業に投資をする機会もいただくのですが、東京だと当たり前に前提としてあるものが、地方にはなかったりすると感じます。経験がないことによる情報格差があり、プロトコルが合わないと感じるんです。採用も、地方では東京にいるような人材を採用しづらいと感じます。

星野さん:地方にあるスタートアップ・ベンチャー企業と、首都圏にあるそれは性質が違うと感じていて、投資もバリエーションを考えて投資すると逆に負担をかける場合があったりします。

成長計画や事業計画自体も性質が違いますが、地域の企業は地域課題に対するソリューションを提供しているという側面から、順調に成長する、きちんとビジネスをやってる企業でもあります。

現状のスタートアップベンチャーだと、イグジットのパフォーマンスの作り方などを変えることでバリエーションが低くても成功率を上げるモデルでいくと、東京によくあるモデルとは違うモデルとして成功できます。

中長期的な視点でいくと、コロナ禍で首都圏にある企業が入ってくるケースが増えています。これによって、地方企業側のリテラシーが上がったり、文脈が変わってきて情報格差が緩和されていきます。

地方は固定費が安いので、より可能性が高いスタートアップが地方に生まれて来る段階になると、変わってくるかなあという段階ですね。

タイミングをずらせば今の首都圏と同じようなスタートアップモデルが出てきて、その時は、優秀な人材が首都圏から地方にうつって来ていると思います。

山田さん:東京と同じようなスピード感で10年ファンドをやるのは厳しいなと感じていて、15年、20年ファンドで地方に貢献しますというスタンスでないと、「IPOしようぜ!」とお尻をたたくような感じだと追いついてこないですね。

星野さん:IPOが出てくるのは3年に1回、5年に1回といった頻度ですね。

出資していてもそんな感じなので、従来のモデルだけでは成り立たないと思います。

清水さん:地方の事業者さんと「出会えない」という課題感があります。

星野さん:地方の企業は地方のメディアとつながりが濃く、取り上げてもらいやすいとう緩やかさがあります。その人達にとって、首都圏のメディアにはあまり関係・関心がなく、代理店を挟んで広告を出稿する先という認識です。

そこを、直接的に首都圏のメディアとやれるとなると可能性も出てきますね。面白いコンテンツを持っていたり、これからは場所もコンテンツ化していくと思っていて、施設として数も持っていますし。地方の場所を持ってるところと首都圏のメディアがつながっていくと、いろいろ面白くなっていくのではないかと思います。

福岡や静岡は支社があるなどの理由で首都圏とのリレーションが強いですが、新潟とかだと、新潟県内の企業が多いです。そこはこれから変わっていくと思います。

MI浜崎:お話ありがとうございました。新規事業に携わられる方や既存事業から変わっていくなど新しいことを始めたい方にメッセージをお願いします。

清水さん:僕自身は自分のミッションとして、「新しい時代の伝え方を創る」というものを掲げています。

JAXAの方や遠隔医療の方など全く違うジャンルの方と話していると面白いですし、「自分たちに何ができるか」を考えるきっかけになります。

例えば遠隔での手術にどれくらいの遅延があるとどれくらい影響があるかという話は、地方に情報を伝える上でARなどを使うときにも通じてくるな、と気づいたり。

メディア関係者で集まりがちなところに新しい血を入れたいですね。

「今までの経験」は殻にもなると感じていて、YouTube番組「#シゴトズキ」では私はMC兼プロデューサーなんですが、企画や出演者に関しては「最終的な責任はとらなきゃいけないので拒否権はあるけど、清水には決定権はない」というやり方をとっています。若手に権限とお金を預けると、いろんなことができるんです。本当に危ないときには自分で止めればいいだけなので。

新規事業に携わる人にアドバイスをするとしたら、「上司の言うことを聞かない」、「若手に任せる」、「自分が若手なら好きなことをどんどんやる」ということです。

「死ぬこと以外かすりきず」なんて言っている人もいましたが、小泉純一郎氏が自民党内の反対を押し切って郵政民営化法案を通そうとしていたとき、「もし失敗したら戦国時代なら首が飛んだだろう。だけど、この法案が通らなくても自分が殺されることはない。衆議院議員もクビにならないかもしれない。そんな小さなリスクなら、自分の信念に従ってやるべきだ」と言っていました。

面白いことをやろう!新しい時代を作ろう!と思うのであれば、そのミッションに従って行動していけば、失敗も全て経験値になります。

星野さん:自分で会社を起こしたり支援したりする中で、PDCAのP(プラン)に時間をかけすぎる光景をよく目にするんですが、早く行動に移して、D(ドゥー)C(チェック)A(アクション)でアクション検証をかけるところにどれだけ注力して時間をかけるかが重要だと思っています。

計画に時間をかけすぎると、止まったり懸念事項で進まなかったり、時間がかかりすぎて実行する頃には世の中の流れが変わっていたりするので、プランに時間をかけすぎないということが重要です。

山田さん:「好きなことをやりましょう」と思っていて、重要なのは、どういうモチベーションでやるかです。「新規事業をやりましょう」と新規事業を始められるのではなく、それより5年10年好きで続けられることを見つけられるかどうかが重要だと思っています。

「新規事業をやらなきゃいけないから乗り気じゃないけどやりましょう」というのは辛いので、好きなこと、つまりはある程度自分の時間を割いてでもやりたいことをやるのが、結果的に新規事業を続けるコツだと思います。

MI浜崎:真面目に真面目にとなりすぎて苦しんでいる人に力になりますね。

登壇者とこの対談を見た人の間に事業の発展や、新しいことが生まれればと思います。

こんな仲間がほしい、こんなことでご一緒したいというお話があればお願いします。

星野さん:僕は首都圏に本拠地を置きながら地域に課題と可能性を感じ新潟から活動を始めています。

「地域と連携したい」、「地方を面白くしてみたい」という気持ちがある方はお声がけいただければ嬉しいですし、一緒に頑張りたいです。

山田さん:自分が提供できるものは、ベンチャー企業とのリレーションの提供です。そういった点でお役に立てればと思います。

清水さん:『#シゴトズキ』は単なるYouTube事業ではなく、教育事業・コミュニティ事業だと思ってやっています。イベント運営や、コミュニティ作りをやっていきたい。「シゴトズキを増やして世界を変えたい!」という仲間を増やせたらと思います。

また、「フジテレビってまあまあ大きいから近寄りづらい会社なのかなと思っていたけど、意外とすぐに話ができるんだな~」と感じてもらえたらと思います。

MI浜崎:文化放送の出演者同士のプロジェクトが生まれているということもあるようなので、プロジェクトが生まれていったらいいなとおもいます。

2,773ファンいいね
226フォロワーフォロー
2,429フォロワーフォロー

【10月12日更新】メディアのサブスクリプションを学ぶための記事まとめ

デジタルメディアの生き残りを賭けた戦略の中で世界的に注目を集めているサブスクリプション。月額の有料購読をしてもらい、会員IDを軸に読者との長期的な関係を構築。ウェブのコンテンツだけでなく、ポッドキャストやニュースレター、オンライン/オフラインのイベント事業などメディアの立体的なビジネスモデルをサブスクリプションを中核に組み立てていく流れもあります。

最新ニュース

浜崎 正己
メディアの立ち上げと運用を支援する(株)メディアインキュベート の代表。1988年千葉県生まれ。Twitter : https://twitter.com/masaki_hamasaki

関連記事