クッキーレスは既に始まっている―ポストクッキーIDで先行するLiveRamp今井氏に聞くパブリッシャーの進むべき道

グーグルがブラウザ「Chrome」におけるサードパーティクッキーの利用廃止を2023年後半まで延期すると発表しました。クッキーはウェブ広告の礎になってきた技術で、これが利用できなくなることで広告の収益性が大きく毀損されると考えられています。パブリッシャーは2023…

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グーグルがブラウザ「Chrome」におけるサードパーティクッキーの利用廃止を2023年後半まで延期すると発表しました。クッキーはウェブ広告の礎になってきた技術で、これが利用できなくなることで広告の収益性が大きく毀損されると考えられています。パブリッシャーは2023年に向けて何をしていけば良いのか、有識者に聞きます。

ポストクッキー時代に向けて、様々なソリューションが現在提案されていますが、その中でも有望視されているのが共通IDソリューションです。これは、クッキーに代わる共通IDを作ろうという試みで、複数の技術が提案されています。

共通IDとは一体どのような仕組みで、どのように導入すれば良いのか、共通IDを提供する一社であり、世界的なデータ接続プラットフォームを展開するLiveRamp JapanでHead of Partnershipsとしてビジネスデベロップメントに従事する今井則幸氏にお話を伺いました。

今井則幸氏
Head of Partnerships, LiveRamp Japan

2010年に米Yahoo!社が提供していたRight Mediaに入社し、日本市場でのAd Exchangeビジネスの定着と拡大に尽力。その後MediaMath社をはじめグローバルの広告プラットフォームで日本市場のビジネス展開、デジタル戦略とソリューションの専門知識を培ってきました。2019年3月に現在のデータを安全かつ効果的に活用するためのデータ接続プラットフォームのLiveRamp JapanにHead of Partnershipとして入社。IDソリューションをパブリッシャー、テクノロジープラットフォームといったパートナーへの提供を担当。

―――まずLiveRampについて簡単に教えてください

LiveRampは2011年に米国サンフランシスコで創業した会社で、ファーストパーティデータを活用するソリューションやテクノロジーの開発を行ってきました。「データ接続プラットフォーム」と称していて、企業が様々な形で持っているデータを繋ぎ合わせ、有効活用する為の技術になります。「データの時代」と言われますが、実際に企業内で点在するデータを使いこなすのは意外に骨が折れる仕事で、これをオンライン/オフライン問わずに実現するような仕組みです。

サードパーティクッキーの規制が表面化する前から、2016年に可決された欧州のGDPR(一般データ保護規則)など、プライバシー重視の大きな流れが出てきていました。それを受けて、2017年頃から企画開発を進めてきたのがATS(Authenticated Traffic Solution)というサードパーティクッキーを代替するようなID技術です。実はグーグルがChromeの取り組みを発表する前から準備をしてきたものです。

―――ATSとはどういった仕組みなのでしょうか?

日本語にすると「認証トラフィックソリューション」というのが適切でしょうか。今までのクッキーやデバイスIDを使った広告ターゲティングは、ユーザーの知らないところで勝手にデータが使われてきました。これをユーザーの同意を得た上で使わせてもらうIDというのが特徴です。広告配信においても信頼関係が重要になってきます。オプトアウトの仕組みも用意し、ユーザーに寄り添った形になる事を最も大事に考えています。

具体的な仕組みとしては、パブリッシャーや広告主が保有するファーストパーティデータをキーに「RampID」というものを生成します。パブリッシャーの場合は、ログインの際にユーザーIDとして最も汎用的に使われているメールアドレスから「RampID」を生成し、ユーザーがサイトにアクセスし、パブリッシャーが広告をリクエストする際にPrebid経由でSSPに渡してもらう形になります。

広告主側においても、保有するファーストパーティデータを元に「RampID」を生成します。条件に応じて対象となるユーザーを抽出し、セグメント(そのRampIDのリスト)をDSPに送信します。これによりDSPはSSPからのビッドリクエストに含まれる「RampID」で買い付けの対象となるかを判断し入札します。

この仕組みの特徴としては、パブリッシャーと広告主の双方が不可逆のハッシュ化し、さらに受け取ったLiveRampが独自のアルゴリズムで「RampID」を生成しているので、メールアドレスを復元する事は不可能だという事と、パブリッシャーと広告主が持っている「RampID」は同じメールアドレスのユーザーであっても事業者ごとに異なる固有なものになるので、万が一いずれかの事業主のRampIDが漏洩してしまってもLiveRamp以外はマッチングすることが出来ないため、プライバシー保護の観点で非常に堅牢だという事が言えます。


《Manabu Tsuchimoto》

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Manabu Tsuchimoto

デジタルメディア大好きな「Media Innovation」の責任者。株式会社イード。1984年山口県生まれ。2000年に個人でゲームメディアを立ち上げ、その後売却。いまはイードでデジタルメディアの業務全般に携わっています。

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