Twitter Blueの「広告非表示機能」は、パブリッシャーに収益以上に重要なものをもたらす

11月に米国でもスタートした、Twitterの定額サブスクリプションサービス「Twitter Blue」。ツイートのプレビューや取り消しや、ブックマークによる整理など、Twitterのヘビーユーザーを向けの機能を提供していますが、その目玉機能の一つに「広告無しでのウェブ記事の閲覧」があります。

Twitter Blue購読者は、ワシントン・ポストやバズフィード、ロイターなどの提携メディアの記事にタイムラインからアクセスすることで、広告を表示することなく記事を閲覧することができます。これはもともと、Twitterが買収したサービス「Scroll」で提供されていたものです。

米ピュー研究所が9月に公開したレポートによれば、米国のTwitterユーザーの69%が、Twitter上でニュースを入手していることが報告されています。Twitterは、ニュースパブリッシャー読者を獲得し、収益を上げるために重要なプラットフォームと言えるでしょう。

パブリッシャーがTwitterと提携し、広告非表示で記事を提供することにはどんなメリットがあるのでしょうか?

Twitter Blueが提供する「広告無し記事閲覧」機能では、ユーザーがアクセスした割合や回数に応じて、購読料の一部が提携メディアへ支払われます。Twitterは発表のなかで、「それぞれの提携メディアが、読者1人に対して広告を表示することで得るよりも50%多くの収入を得られるようにすることが目標です。」と述べています。しかし、米メディア「アドウィーク」は、パブリッシャーがこのサービスに参加する理由は、収益の増加だけではないと指摘します。

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「収益増加ではなく、より洗練されたデータや透明性の高い支払いの枠組みなど、他の多くの利点がTwitter Blueの価値を高めています。これらの要素のおかげで、Twitter Blueは、前身であるScrollとは契約しなかったロサンゼルス・タイムスやワシントン・ポストのような出版社と契約することができました。」

この機能では、ユーザーが提携メディアのサイトにアクセスして記事を閲覧することに変わりはないため、パブリッシャーはトラフィックデータを失うことはありません。また、ヘルプページによれば、Twitterは「クッキーおよび類似技術」を活用することで、ユーザーがサイトに何回アクセスし、どれくらい滞在したかを計測します。このデータは匿名化され、パブリッシャーにも共有されるとのことです。

デジタル戦略を進めるメディアにとって、閲覧データを収集することの重要性が高まっています。加えて、大手プラットフォームのニュースサービスに記事が転用されることに多くのパブリッシャーが不満を抱いており、この透明性の高い仕組みこそがパブリッシャーにとって魅力になっている、というのです。

コロンビア・ジャーナリズム・レビューのチーフ・デジタル・ライターであるマシュー・イングラム氏は、アドウィークの取材に対し、「Facebook、Google、Appleが提供する同様のパブリッシャー・プラットフォームと比較して、Twitter Blueは、読者を含むすべての関係者にとって透明性のあるモデルを用いてパブリッシャーに支払いを行っている」と述べています。

なお、Twitter Blueユーザー側も、どの媒体にどれだけの割合が支払われているのかを確認することができます。

ミズーリ大学ジャーナリズムスクールの教授デイモン・カイソー氏のツイート

Twitter Blueに登録するのは、Twitterのヘビーユーザーや一部のニュース好きに限られると思われますが、パブリッシャー、プラットフォーム、そして読者の健全な関係を実現するための試みとして期待されて

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【12月6日更新】メディアのサブスクリプションを学ぶための記事まとめ

デジタルメディアの生き残りを賭けた戦略の中で世界的に注目を集めているサブスクリプション。月額の有料購読をしてもらい、会員IDを軸に読者との長期的な関係を構築。ウェブのコンテンツだけでなく、ポッドキャストやニュースレター、オンライン/オフラインのイベント事業などメディアの立体的なビジネスモデルをサブスクリプションを中核に組み立てていく流れもあります。

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