成長し続けるオンラインショッピング、パブリッシャーのeコマース戦略・・・レポート「Media Moments 2021」

メディア界のニュースや見解を紹介している「Media Voices」と「What’s New In Publishing」は、2021年のメディア業界の動向をまとめたレポート「Media Moments 2021」を発表しました。前回の印刷編に続き、今回はeコマース編についてご紹介します。 2020年末にもブラ…

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成長し続けるオンラインショッピング、パブリッシャーのeコマース戦略・・・レポート「Media Moments 2021」

メディア界のニュースや見解を紹介している「Media Voices」と「What’s New In Publishing」は、2021年のメディア業界の動向をまとめたレポート「Media Moments 2021」を発表しました。前回の印刷編に続き、今回はeコマース編についてご紹介します。

2020年末にもブラックフライデーとサイバーマンデーのオンラインショッピングのプロモーションが行われ、そしてクリスマス商戦の波に乗った欧米の消費者たちのおかげで、2021年始め、Eコマースの小売業者はその収益を数えるのに忙しくなりました。英国での売上は186億2600万ポンドで、その総額は英国だけで2019年の同時期より56.2%も増加したとのことです。

旧来の小売大手やスーパーマーケットチェーンだけでなく、既存の強力なeコマースやアフィリエイト機能を持つパブリッシャーもその消費の恩恵を受けました。例えば、ハーストUKのeコマース売上は、2020年第2四半期だけで322%の伸びを示すなど、パンデミックの最初の数カ月に見られた成長には及ばないものの、パブリッシャーのeコマースへの意欲は高まり続けているようです。

拡張の年

コンテンツとコマースの融合

年初、eコマースの波に乗った企業たちは、その成功のために再編成や統合を図りました。Dennis Publishing を保有するExponentは、収益化という面で困難な1年を過ごした後、3月に自動車関連タイトルを統合し、別会社Autoviaを立ち上げ、それを中心に構築したeコマースビジネスを独立させました。

Autoviaは、Dennis Publishingの自動車関連コンテンツと、自動車販売サイト「BuyACar」を組み合わせ、アイデア出しから制作、推薦まで、購入プロセスのすべてをコントロールする試みでした。当時、会長のピーター・プラム氏は、「出版社のeコマース戦略を成功させるためには、エコシステム全体を所有する必要がある」と述べています。

この戦略は自動車やハイテクに限ったものではありません。スウェーデンでは、Aller Mediaが5月にウェディング関連のプロバイダーとプラットフォームであるMy Perfect Dayを買収しました。Aller社のeコマース部門責任者であるフレデリック・ブロンクビスト氏は、「人々はセルフケアやオンラインショッピングに時間とお金を費やしており、家で過ごしながらインスピレーションを受け、喜びを見出したいと感じている」と述べています。

これに対して、7月にForbesが試みたように、単に衣服にブランド名をつけてeコマース戦略を発表することに頼ったブランドもあったようです。

最新技術をコマースに活用

一方で、技術の進歩は貴重な印刷物をeコマースファネルに挿入する手段であると考えたバプリッシャーもいて、雑誌「Grazia」と「Heat」は5月、QRコードなどを使わずにスキャン可能な画像を掲載し、消費者を直接ストアへ誘導して詳細情報や購入オプションを提供するサービスを開始しました。このような試みは世界中の他の出版社でも行われており、購買ファネルの開口部をさらに拡大しようとしています。

その拡大の一因となったのは、サードパーティ企業や他のプラットフォームによって実現されたeコマース向けソリューションのブームです。バーチャル体験や、常時オープンしているバーチャルストア、InstagramやSnapchatなどのプラットフォームにおける数多くの専用フィルターやレンズのおかげで、パブリッシャーやブランドはARやXRを使用して消費者に直接商品を販売する機会を得ました。

Futureの規模拡大

2021年のeコマースは、英国のメディア企業Future PLCを抜きにして語ることはできないと筆者は述べています。同社は、2020年のeコマースとアフィリエイトの収益が10億ドルを超えると発表した後、その成功をさらに強化するために、前述のDennis Publishingを含む多くの企業買収を行いました。アナリストのコリン・モリソン氏は、「Dennisの買収は、Futureが米国と金融メディアでさらに速く成長する機会を創出し、成功したeコマース・アフィリエイト・マーケティングのスキルを新しいポートフォリオに応用することも期待される」と述べています。

収益機会はあるが、今後の雲行きはあやしい

業界最大手の優位性


《Kasumi Matsumoto》

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