メディアにとって個人の発信はやはり大事か【Media Innovation Weekly】2/13号

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メディアにとって個人の発信はやはり大事か【Media Innovation Weekly】2/13号

おはようございます。Media Innovationの土本です。今週の「Media Innovation Newsletter」をお届けします。

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今週のテーマ解説 メディアにとって個人の発信はやっぱり大事

先週とても印象的な出来事がありました。

金曜日に、日本銀行の新総裁に植田和男氏が内定したという報道がありました。植田氏は日銀の総裁に選ばれた初めての学者出身者であり、選考レースではダークホース的な存在で「植田って誰?」というサプライズがありました。

この疑問に応えるコンテンツを各社が出していくわけですが、筆者の目に目立ったのは、元日経新聞の後藤達也氏でした。後藤氏は最初の報道があってから、1時間も経たないうちに「【日銀総裁候補】植田氏ってどんな人?」という記事を自身のnoteで公開し、そのツイートは55万件ものビューがありました。

さらに象徴的に感じたのは、NewsPicksが翌朝のトップコンテンツとして「【日銀総裁】ノーマークだった植田さんって誰?」という記事を出してきたことです。もちろんNewsPicksの記事には関係者への取材も含まれていて、体系的に植田氏を描く事に成功している良い記事だと思います。ただ、レスポンスには差がありました。

2022年3月に日経新聞を退職した後藤氏は、既にツイッターのフォロワーが50万人を超え(日経在職時に運営していたアカウントは37万人で既に閉鎖済み)で、月額500円のnoteには2万人以上の購読者がいるそうです。noteだけで年間1億2000万円(当然決済手数料はありますが)、クリエイターエコノミーの時代の成功者と言って過言ではないでしょう。

そんな事を考えていたら、プレジデントオンラインにて今年1月に毎日新聞を辞めてフリーになって、YouTubeで活動を始めた宮原健太氏の話が掲載されていました。

ちょうど、PressGazetteがニュースレタープラットフォームのサブスタックスを分析した記事を出していて、それによれば、上位27のニュースレターで2200万ドル(約28億円)の収益を上げているとしています。サブスタックの成長には陰りもあるという見方もありますが、多くの成功事例が出てきています。

サブスクリプションモデルで日本で成功しているのは後藤氏のように経済やビジネスをテーマにしたメディアという印象が強いですが、サブスタックでは圧倒的に政治カテゴリが成功を収めているそうです。日本でも今後、政治カテゴリでも可能性があるかもしれません。

宮原氏は記事の中で、「ネット社会は魅力ある個人がインフルエンサーとなってファンに支えられるような場となっている」と指摘した上で「新聞社が情報を売るためには、個人の発信を重視してファンを作っていく必要があるのではないか」と提言しています。

個人の記者にとっては自分の発信を磨くことによって、将来後藤氏のような成功を収められる可能性が出てきますし、そうした努力を会社として後押しすることがメディアとしての成長を生み出していく可能性がありそうです。

Pianoのセミナーでも日刊スポーツの有料会員の獲得は記者のソーシャルメディアからが重要な経路になっているという話がありました。

ツイッターの経営問題から浮き彫りになったソーシャルメディアとの向き合い方をどうするかという課題はあるにせよ、個の時代に相応しいメディアの作り方を考えていく必要はありそうです。

今週の人気記事から OpenAIに約4兆円もの時価総額がついたわけ

ここ最近はAIの話題でもちきりです。それを主導してきたOpenAIは「ChatGPT」で世間の度肝を抜き、マイクロソフトから1兆円の投資を受け、同社の検索エンジン「Bing」には最新バージョンのAI「GPT-4」の搭載を開始しました。一部ユーザー向けにロールアウトが開始されていて、その性能は更に衝撃的なものになっているようです(インプレスの解説)。そんなOpenAIについて記事では紹介しています。

1.ChatGPTをリリースしたOpenAI、なぜ4兆円もの超高額な評価額がつくのか?

2.「radiko」アプリが全面リニューアル

3.Mintoと講談社が コンテンツホルダーと共同でクリエイティブ制作、SNSマーケを支援

4.noteがデータ基盤に採用したSnowflake、膨大なコンテンツを高速に分析してデータドリブンな意思決定を実現【PR】

5.街中にアニメやアート作品をARで表示する実証実験イベント「京橋まちなかARミュージアム」開催

6.「Forbes JAPAN SMALL GIANTS」、攻める自治体・茨城県境町と連携協定を締結

7.次世代SNSアプリ「TapNow」のサンゴテクノロジーズ、総額1億円の資金を調達

8.アイレップが連結子会社「ReD.」を設立、ブランディング戦略や新規事業開発をリード

9.博報堂DY「HAKUHODO EC+」が「地域DXソリューション」 産直ECモール立ち上げなど、地方自治体・事業者のDX・EC支援

10.C2022年下期、インターネット広告市場は苦境CARTA COMMUNICATIONS調査

会員限定記事から アマゾン、27億ドルの純損失

テック大手の苦戦が鮮明になっています。各社ともに厳しい業績を発表し、大型のレイオフを連発していますが、先週決算を発表したアマゾンは過去最大の年間27億ドルの純損失を計上。オンラインストアの売上高、AWSの売上高ともに市場予想を下回りました。同社も1万8000人の従業員を削減することを検討しているとのこと。「検討」に留まっているのが、今のアマゾンの弱さを表現しているのかもしれません。

1.アマゾン、過去最大の年間純損失27億ドル・・・売上高は予想を上回るものの、1株当たりの純利益は下振れ

2.グーグル、ChatGPTに対抗する AI「Bard」を発表・・・数週間以内に公開へ

3.Twitter、クリエイターに広告収益を配分へ・・・イーロン・マスクCEOが表明

4.厳しい経済環境をメディアが乗り切るためには【Media Innovation Weekly】2/6号

5.グーグル、検索結果ページで、再生可能なポッドキャストを表示する機能を廃止

6.ヴォックス・メディア、「Variety」「Billboard」など運営のPenskiからの戦略出資を受ける・・・同社が筆頭株主に

7.アップルの売上高が5%減、2016年以来最大の四半期減収に・・・翌四半期の不安残す

8.【メディア企業徹底考察 #96】投資ファンドがWOW WORLD GROUPをTOBで非上場化へ、企業価値向上の青写真は?

9.Pinterest、増収ながら赤字が続く・・・約150名をレイオフ

10.【メディア企業徹底考察 #92】文教堂の事業再生は計画通りに進んでいるのか?

編集部からひとこと

母校で就活生向けに話して欲しいという嬉しい話をもらったので週末行ってきました。自分も社会の一面しか知らないわけですが、今週のテーマに取り上げたような、個の時代は確実に強まっているように感じます。それについて偉そうな話を沢山してきたのですが、「他の人と競争するのではなく差別化する」ということと、「社内じゃなくて社外に通じる専門性を獲得する」ということが大事なんではなかろうかというのが今の自分の結論です。どんな企業を選ぶかという以上に、どんなキャリアを構想するのか、といういい機会になればと思っています。

《Manabu Tsuchimoto》

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Manabu Tsuchimoto

デジタルメディア大好きな「Media Innovation」の責任者。株式会社イード。1984年山口県生まれ。2000年に個人でゲームメディアを立ち上げ、その後売却。いまはイードでデジタルメディアの業務全般に携わっています。

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