MIの6月特集「メディアのサブスクリプション戦略2020」では、メディアの新しいビジネスモデルとして世界的にチャレンジが続くサブスクリプションについて取り上げます。6月30日(火)には7社がサブスクを語るオンラインセミナーも開催。サブスクに挑戦するメディアの話を直接聞けるチャンスです。ぜひご参加ください。
総合月刊誌「文藝春秋」が月額900円のデジタルサブスクリプションサービス「文藝春秋digital」を開始して8カ月がたちました。「文藝春秋digital」の最大の特徴はメディアプラットフォーム「note」上でサービスを展開していることです。
雑誌デジタル版の有料サブスクリプションでnoteを使ったのは文藝春秋が初めて。
政治経済から文芸まで扱う総合月刊誌のデジタル化がどのように進められ、「note」を使うことでその可能性はどう広がったのか。文藝春秋編集部で「文藝春秋digital」を担当する村井弦氏に聞いてみました。
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目次
文藝春秋らしさを考え有料サブスクリプションを選択
―――まずは、村井さんがこれまでどんなお仕事をされてきたのかをお伺いできますか。
村井: 2011年の入社以来、ずっと紙の雑誌の編集者をやってきました。入社してまず「週刊文春」に4年間在籍し、その後「文藝春秋」へ異動しました。2019年7月に文藝春秋デジタル版の立ち上げを命じられ、以降この事業にかかわっています。
―――雑誌のデジタルビジネスというと、無料の広告モデルか、読み放題サービスへの提供というのがこれまでの常道だったと思います。そんな中で、「文藝春秋」は単独での有料サブスクリプションを選択されたわけですが。
デジタル化を進める時、まず課題としていたのが「文藝春秋」らしさをデジタル化にどう表現し、ブランド戦略につなげるかでした。それは確実な収益が見込めるにもかかわらず、雑誌読み放題型のサービスへの参加を見送ってきた理由でもありました。
また、総合月刊誌である「文藝春秋」のコンテンツはじっくり読ませ、読者にも考えさせるものが中心です。PVの数を追う広告モデルには向いていないと思っていました。そういうことから「文藝春秋」単独で、有料サブスクリプションの途を探るということでプロジェクトがスタートしたのです。
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―――「文藝春秋」は芥川賞・直木賞と深くかかわることで「文壇」発展に寄与していたり、さまざまな提言を掲載する場として「論壇」の一翼を担ってきた。ある意味雑誌を中核とした、プラットフォームでもありました。
noteの代表・加藤さんが「note」をはじめる時、デジタル時代の「文藝春秋」みたいなプラットフォームを作りたいという主旨の話を書かれています。
デジタルであってもこれまで「文藝春秋」が果たしてきたのと同じような役割をもち続けたいという気持ちは、我々も当然持っていました。