NHKと民放各社は放送とインターネット配信の同時配信や見逃し視聴の仕組みを整えつつありますが、著作権法等で放送には認められている権利処理や制限の方法が配信では認められていないことが、各社の負担となっています。
放送事業者は配信に当たって改めて許諾等をすることなく、一括で円滑な権利処理が行えるよう要望をしてきましたが、権利者側は正当な対価が得られる保証がないとして反対の姿勢を示してきました。この問題は放送事業者を管轄する総務省と、権利者側に立つ文化庁が長年に渡って議論してきましたが、平行線が続いてきました。
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9月に発足した菅内閣は規制改革による経済成長を目指していて、規制改革推進会議などで幅広い規制のあり方について議論していて、その中の一項目として放送と通信の同時配信に関する権利処理についても俎上に上がりました。先月25日の会議では河野太郎・規制改革担当大臣が慎重姿勢を示す文化庁に対して「やる気がなければ担当部署変更もあり得る」と強い姿勢を示したとも報じられました(規制改革推進会議での意見概要)。
そして6日に開催された河野大臣の会見では、文化庁が方針を転換した事が明らかにされました。
河野氏は「同時配信は日テレがテストを開始し、NHKも100万件を超える登録があるそうです。一方で同時配信では著作権処理ができずに黒塗りの”フタかぶせ”という状態になるのがEテレで3割程度あると聞いています」と指摘。こうした状態は視聴者にとって利便性を損なうだけでなく、同時配信が進む事による放送事業者、権利者の利益の享受を妨げるのではないかと話しました。
さらに河野氏は「細部はともかく、基本的な方向性は出たと聞いているので総務省、文化庁でさらに議論を進めていって欲しい」とコメント。「菅内閣は国民の利便性を実現する規制改革に取り組んでいて、それをこれまで以上のスピード感を持ってやるというのを大事にしています。会議をダラダラ何度もやって結論を先延ばしにするのは許されないと何度も言ってますし、スピード感を持って結論を出してもらえると考えています」と話しました。