Media Innovationの6月特集は「地域メディアの現状とこれから」。世界的に地域の情報流通を担うローカルメディアの大きな役割が見直されています。一方で、「メディア砂漠」という言葉があるように、そのビジネスは簡単ではなく、地域にメディアが存在しないという場所が確実に増えていっています。特集では日本各地で地域の情報流通を担い、先進的な取り組みで未来を切り開こうとしているキーパーソンを直撃します。
兵庫県ナンバーワンの地方紙である神戸新聞が、全社挙げてのDX(デジタルトランスフォーメーション)に取り組んでいます。
電子版「神戸新聞NEXT」をはじめとするニュースメディアを充実させるとともに、一昨年末には動画製作・マーケティング専門子会社を設立し、ネット放送局「KOBE_TV」を立ちあげるなど、テキスト以外のコンテンツ配信にも積極的です。デジタル事業を統括する大町聡取締役に聞いてみました。
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株式会社神戸新聞社
取締役 デジタル事業担当 デジタル創造本部長兼 DX統括本部副本部長デジタル推進局長委嘱
目次
ニュースサイトだけで4種類ものメディアを運営
―――まずは大町さんのこれまでの経歴を教えていただけますでしょうか。
入社後最初に配属されたのは社会部でしたけど、若い頃から紙面の新しい企画や新しい事業の立ち上げにかかわることが多かったですね。
デジタル事業に本格的にかかわるのは、2007年に今のデジタル推進局の前身となるメディア局の「デジタル情報部長」になった頃からです。今の神戸新聞のニュースサイト立ち上げ、にかかわり、それからはずっとデジタルメディアの仕事を担当しています。
今のデジタル推進局の仕事はニュースサイトの技術と、広告などの営業が中心です。もともとのメディア局は、神戸新聞とデイリースポーツの配信業務も担当していたのですがその部分は各編集局が担当する形になっています。
―――神戸新聞は今、どんなデジタルメディアを運営されているのでしょうか。
ニュースサイトとしては神戸新聞の電子版である「神戸新聞NEXT」、スポーツ/エンタメ系の「デイリースポーツオンライン」、関西発の“やわらかニュース”のサイト「まいどなニュース」。21年4月に、アニメや漫画から、アイドルネタまでとりあげるサブカル/エンタメ系ニュースの「よろず~ニュース」を立ちあげたところです。
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―――ニュースサイト以外の取り組みはどうでしょうか。
ニュースサイト以外の取り組みも順調に拡大しています。昨年3月には動画配信サービスの「KOBE_TV」を、今年の5月からは、Voicyを使った音声ニュースの「めっちゃ兵庫」のサービスをスタートしました。メールマガジンの「ええやん兵庫」、「note pro」を使ったWebマガジンの「うっとこ兵庫」のサービスも始めました。
―――新聞社としては他に例がないほど、バラエティに富んだラインナップになっているのですね。デイリースポーツ、サンテレビ、京阪神エルマガジンなど、多彩なメディアをグループで発行しているということが一般の地方紙とは違った強みになっているのですか。