ウクライナに侵攻したロシアは国内での情報統制を強めていて、主要なソーシャルメディアがブロックされる中、注目されているのがテレグラム(Telegram)です。ロシア人の開発者が2013年にリリースした匿名性の高いメッセンジャーです。国産ということもあってかロシア国内での人気も高く、そのため「政府がブロックするのは難しいのではないか」と言われ、ロシア国内に情報を届ける手段として脚光を集めています。
テレグラムはロシア出身のパーヴェル・ドゥーロフ氏によって立ち上げられたメッセンジャーアプリで、暗号化された通信で匿名性が高いのが特徴。ロシアやウクライナでも人気がありますが、ロシア政府とは長い争い合いの歴史があり、ドゥーロフ氏は現在はドバイで活動しています。その性質から、ISISや極右やQAnonなどが情報を発信する場ともなってきました。
今回、ロシアが様々なコミュニケーションチャンネルを閉じた事で、世界のメディアは異なる経路を見出そうとしていますが、テレグラムもその一つ。これまでもガーディアンやBBCがアカウントを運用してきましたが今回、ニューヨーク・タイムズとワシントン・ポストがアカウントを開設。早速、ニューヨーク・タイムズは4万人、ワシントン・ポストは1万人のユーザーを獲得しています。
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また、ロシアのジャーナリスト、イリヤ・バーラモフ氏が立ち上げているVarlamov Newsは今回の戦争が始まってから登録者を5倍の130万人まで増やしたそうです。独立系ジャーナリストとして戦争の真実を伝えようとする同氏のアカウントではウクライナの市街地で繰り広げられる破壊や、先日ロシアの国営チャンネルで「戦争を止めろ」と訴えた従業員の動画などの情報をロシア後で伝え多くの再生があったということです。
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一方でテレグラムの登録者数の統計データを提供するTelemetrioによれば、ここ一週間で最も登録者を増やしたニュースアカウントは通信社の「ロシアの今日」(RIAノーボスチ)であり、ロシア政府の公式の声を伝えています。
ウォール・ストリート・ジャーナルはロシアの独立系メディア「メデューザ」のイヴァン・コルパノフ氏の「テレグラムはロシアに対する情報戦のツールで敵の存在だとは見做されていません。ロシアにおける無修正のジャーナリズムと、いわゆるジャーナリズムがテレグラムでは同居しています」という声を伝えています。