新しい年がやってきます。2023年はメディア業界にとってどのような一年になるでしょうか? Media Innovationに縁を持っていただいた皆様に、今年の振り返りと、2023年に向けての展望を伺いました。
株式会社イード 執行役員 メディア事業本部長
1984年、山口県生まれ。学生時代に立ち上げたゲームメディア「インサイド」を、株式会社IRIコマース&テクノロジー(現イード)に譲渡し入社。ゲーム関連のメディア運営や、アニメなどエンタメ関連の事業を統括を経験した後、社長室でM&A、投資、アライアンス構築などを担当。2016年よりメディア事業の責任者となる。現在はイードのメディア運営全般を指揮する傍ら、2019年には「Media Innovation」を立ち上げ、メディア業界全体の発展のための活動を行っている。
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今年の仕事を振り返ってみて、いかがでしたか?
メディア業界には様々な課題がありますが、大きな意味で「読者と直接繋がり、信頼されるブランドになる」ということが求められるというのはいつの時代も変わらないのではないかと思います。私が所属する株式会社イードはこのMedia Innovationもそうですが、バーティカルな専門領域のメディアを得意としていますので、その世界の皆さんと、どう深く繋がっていくのか、というのが課題だと思います。
会員になってより深く接してもらえる、コンテンツを通じて購買行動に繋げてもらえる、サブスクリプションでコンテンツに対価を払ってもらえる、単に記事を読んでもらうだけでなく、何かアクションを起こしてもらう、そうした事ができるメディア作りが求められています。ここ数年来の取り組みではありますが、少しずつ形になってきていて、一定の手応えがあります。
お酒のメディア「nomooo」のM&Aなど、引き続き沢山のメディアに加わっていただくことができましたし、残念ながら運営終了となってしまったEngadget日本版のチームを支援して「テクノエッジ」を立ち上げたり、Web3に特化したファンドのArriba Studioに投資をしたり、個人的にも新しい経験を色々とすることができました。
一方で、Media Innovationでも度々お伝えしているように、広告ビジネスの厳しさは増す一方で、景気後退の影も鮮明になってきました。まだまだやれることは沢山あったな、という反省もある一年でした。
2022年のメディア業界で印象に残ったことを教えてください
メディア業界に限った話ではありませんが、色々な意味で世界の転換点にあるのではないかと感じる事が多かったです。2月に始まったウクライナ戦争は、現代でも先進国同士の戦争が現実に起こり得るという事を大きなショックを伴い教えてくれました。自然とアジアはどうなのかと視点が向かいます。
戦争に起因するインフレ、コロナ禍対策として供給された過剰流動性の逆回転は緩やかに続いてきた経済成長を止めました。GAFAのような不動と思われた存在も大きなダメージを受け、大規模なレイオフがありました。スタートアップへの資金提供も細り、苦境に陥る会社が出てきました。景気後退の煽りを真っ先に受ける広告の落ち込みが鮮明となり、メディア企業も厳しくなってきています。そしてこの厳しさはまだ始まったばかり、という気がしています。
2023年のメディア業界、ご自身の取り組みたい仕事について教えてください
メディア業界はここからが正念場だと思います。粘り強くやっていく必要があると思います。
「読者と直接繋がり、信頼されるブランドになる」というのはいつの時代も変わりませんので、それを今の環境下でどうやって実現していくか改めて考えていきたいと思います。
Stable Diffusionなどのイラスト生成、ChatGPTのようなAIチャットの登場は驚愕でした。やはりAIをどう取り込んでいくかは今後数年の大きな鍵になっていきそうです。仮想通貨の市況は低迷していますが、ブロックチェーンのプロジェクトは確実に進化を続けていて、ゲームを中心に実サービスも2023年はどんどん登場してきます。こうした技術をどう応用していくかはメディアにとって重要になるでしょう。
楽ではない市場環境ですが、こういう時だからこそ、プライドを持って良いメディアを作るという原点に立ち返って、仕事をしていければと思っています。2023年を楽しみましょう!