イスラエルとハマスの戦争、ソーシャルメディアで拡散される偽情報と広告

ソーシャルメディア上でのイスラエルとハマス間の戦争に関する偽情報が新たな問題となっています。NewsGuardの最新レポートによると、こうした偽情報に広告が掲載され、企業やブランドが意図せずに政治的なプロパガンダに関与してしまう可能性があると指摘されています。

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フェイクニュースの拡散(DALL-E)

ソーシャルメディア上でのイスラエルとハマス間の戦争に関する偽情報が新たな問題となっています。NewsGuardの最新レポートによると、こうした偽情報に広告が掲載され、企業やブランドが意図せずに政治的なプロパガンダに関与してしまう可能性があると指摘されています。

偽情報が9200万人以上に到達、収益化も

この分析は2023年11月13日から11月22日にかけて行われ、30のバイラルツイートが対象でした。これらのツイートは、イスラエル・ハマス戦争に関する虚偽または誤解を招く主張を行っており、累計で9200万人以上の視聴者に到達していました​​。

レポートによると、これらのツイートは10のアカウントによって投稿され、それぞれがこの紛争に関連する偽情報の繰り返しの拡散者としてNewsGuardによって特定されていました。これらのツイートには86の主要なブランド、教育機関、政府機関、非営利団体からの合計200の広告が掲載されており​​​​、これらの広告はアルゴリズムを通じて自動的に配信され、ブランド自身は自社の広告がどこに表示されているかを知らずにいました​​。

また、これらのツイートの中には、ハマスによるイスラエルへの攻撃が「偽旗作戦」であるとか、CNNがイスラエルでのロケット攻撃の映像を捏造したといった、非常に誤解を招く主張が含まれていました。30のツイートのうち半数(15)は、Xのクラウドソースによるファクトチェック機能であるコミュニティノートによって事実確認が行われていましたが、残りの半数はそうではありませんでした​​。

Xは投稿者と広告収入を共有していることから、これらの誤解を招く情報も広告主と誤情報の拡散者の間で収益が分け合われていることが想定されます​(Xはコミュニティノートが付いている投稿では収益配分はしないとしている)。広告主は誤情報の横に広告が掲載されることによってイメージ悪化を受けるだけでなく、偽情報を発信するプレイヤーを稼がせる事にも貢献してしまっているということになります。

イーロン・マスクは収益の一部を寄付すると発表

Xのオーナーであるイーロン・マスク氏は反ユダヤ的な言動で非難を受けています。マスク氏は15日、「ユダヤ人コミュニティは、自分たちにはやめてほしいと言ってきた憎悪をそのまま白人に向けている」という投稿に対して賛意を示しました。これを受けて幾つかの大手広告主が出稿を取り止めたと明言しています。

また、民主党の政治家たちは、Xがハマスのプロパガンダから利益を得ていると非難しており、ソーシャルメディア企業に対する政治的圧力も高まっています。

こうした事態の収拾に向けてマスク氏は広告収入の一部をイスラエルとガザの病院に寄付することを発表しました。しかし、一部とはどのようなものかは明らかにされていません。

政治的、ビジネス的の両側面から非難を受ける形となったXですが、同社に限らずソーシャルメディア企業は、広告の掲載基準を見直し、偽情報やプロパガンダに関連するコンテンツを厳しくチェックする必要があるでしょう。これには、先進的な技術の利用や人間による確認作業の強化が求められます。

広告主も、広告が掲載されるコンテンツに対する監視を強化し、自社のブランドイメージや倫理基準に合致しないコンテンツに関連する広告の掲載を避けるべきです。

さらに、消費者に対しても、ソーシャルメディア上の情報の真偽を見極めるための啓蒙活動が必要です。正確な情報を求める意識の高まりが、プラットフォーム側に対しても改善を促す一因となるでしょう。

《Manabu Tsuchimoto》

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Manabu Tsuchimoto

Manabu Tsuchimoto

デジタルメディア大好きな「Media Innovation」の責任者。株式会社イード。1984年山口県生まれ。2000年に個人でゲームメディアを立ち上げ、その後売却。いまはイードでデジタルメディアの業務全般に携わっています。

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