【メディア企業徹底考察 #155】GameWith失速の裏でGame8が大躍進、攻略サイトに何が起こっているのか?

ゲーム攻略サイトを運営する株式会社GameWithが、4月10日に2024年5月期通期業績の下方修正を行いました。

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【メディア企業徹底考察 #155】GameWith失速の裏でGame8が大躍進、攻略サイトに何が起こっているのか?
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ゲーム攻略サイトを運営する株式会社GameWithが、4月10日に2024年5月期通期業績の下方修正を行いました。

売上高は従来予想比6.7%減の35億円、営業利益は同82.9%減の6,000万円に改めました。売上高、営業利益ともに前年を割り込む見込みです。1億9,000万円としていた純利益は、3億4,000万円の純損失に一転。コロナ禍の2021年5月期以来の最終赤字となります。

その裏で好調なのが、最大のライバルである株式会社ゲームエイト。同社の好調を受けて、親会社の株式会社Gunosyは上方修正を発表しています。

ゲーム攻略サイト市場に何が起こっているのでしょうか?

主力のメディア事業が1割もの減収に

GameWithの2024年5月期第3四半期累計(2023年6月1日~2024年2月29日)の売上高は、前年同期間比3.1%増の27億100万円、営業利益は同53.8%減の1億1,400万円でした。第3四半期までは増収で進捗しています。通期減収の予想を出したのは、3Q単体(2023年12月1日~2024年2月29日)の売上減が激しいためです。

決算短信より筆者作成

2024年5月期3Q単体の売上高は、前年同期間比6.7%減の8億4,600万円でした。2Q(2023年9月1日~2023年11月30日)の売上高は前年同期間比3.0%の増加となっていただけに、正に急ブレーキがかかった格好です。

GameWithは主力のメディア事業の他にeスポーツ、NFTなどの新規事業を展開しています。落ち込みが激しかったのはメディア事業。2024年5月期3Q単体の売上高は、前年同期間比で12.6%減少して5億3,900万円となりました。何らかのトラブルで一時的に広告が出稿できなくなったなど、突発的なものであれば減収の見通しを発表することはないでしょう。根本的に収益性が失われていることを示唆しています。

決算説明資料より

GameWithは2021年10月にプロeスポーツチーム「DetonatioN Gaming」の運営元である、株式会社DetonatioNの株式59.82%を2億5,000万円で取得しています。eスポーツは2つ目の収益基盤となる重要度の高い事業ですが、2024年5月期3Q単体は1.0%の減収。GameWithはDetonatioNの買収によって生じたのれんの減損処理を行い、2億6,800万円の特別損失を計上しました。

eスポーツ事業において、当初計画していた収益性が得られなかったことを示しています。

収益基盤であるメディア事業が失速し、成長をけん引するはずだったeスポーツも伸び悩んでいる状況なのです。

スマートフォンゲームは緩やかに衰退産業へ

GameWithはメディア事業の減収の要因として、広告単価の低下を挙げています。PV数の減少ではありません。アクセス数はGoogleのアルゴリズム更新などで急激に減少することがあります。広告単価の減少要因には、パフォーマンス(クリック率)の低下や出稿数(クライアント数)の縮小などが挙げられます。PV数が大きく変わっていないということは、流入するユーザーの質が急激に変化したとは考えられず、出稿数が減少している可能性があります。

GameWithの主な取引先はGoogleとサイバーエージェント。2023年5月期はGoogle経由の売上が5億2,300万円ありました。メディア事業の売上高全体の2割を占めていることになります。

サイバーエージェントはウマ娘の大ヒットの反動で、一時的に収益性が悪化しました。そのため、2023年9月期3Q~4Q(2023年4月1日~2023年9月30日)の広告費を絞り込んだという経緯があります。しかし、2024年9月期1Q(2023年10月1日~2023年12月31日)の広告費はウマ娘がヒットした以降で最大となっています。従って、サイバーエージェントのGameWithへの出稿が急激に細くなるとは考えられません。

■サイバーエージェント販管費内訳推移

決算説明資料より

GameWithはGoogle経由の広告が減っている可能性があります。

ゲーム市場は規模を拡大し続ける成長産業のように見えますが、実はスマートフォンゲームの市場は2020年を境に減少へと転じました。ゲーム産業の中でもスマートフォーンゲームの規模は大きいものの、拡大から縮小へと向かったとなると、既存のゲームプレイヤーが課金を繰り返し、新たなゲームに手を伸ばすユーザーが減るという内向きの産業になりかねません。すなわち、広告効果が弱くなるのです。

ファミ通ゲーム白書2023より

ゲーム会社も市場の冷え込みに対して、警戒感を高めています。

バンダイナムコホールディングスは、2月14日に新規開発を計画していた5タイトルの中止を決めたと発表しました。スクウェア・エニックス・ホールディングスも2月5日に大型ゲームの開発に集約する体制へと変更することを明らかにしています。

かつてスマートフォンゲームはヒット作を生み出し、周年記念企画でテコ入れを図ってタイトルの長期収益化を実現するというモデルで繁栄しました。しかし、今はヒットしても長続きすることがほとんどありません。開発には多額の投資が必要な一方、得られるリターンが少なくなっているのです。

GameWithがスマートフォンゲーム市場の変化に飲まれた可能性は大いにあるでしょう。

海外メディアのゲーム広告は好調か?

しかし、競合のゲームエイトは好調です。Gunosyは2024年5月期通期業績予想の上方修正を行いました。売上高は予想比1.3%増の72億9,000万円、2億6,000万円としていた営業赤字を3,000万円まで圧縮する見通しを示しました。

収益性の向上に貢献しているのがゲームエイト。ゲームエイトは2024年3月期3Q単体(2023年10月1日~2023年12月31日)の売上高が前年同期間比21.7%増の5億7,200万円となりました。

Gunosyは好調の要因として、海外メディアにおけるRPM(広告1,000回あたりの収益額)が好調に推移していることを挙げています。今年に入ってGunosyはしきりに海外メディアが好調であることを強調しています。

国内の不調または伸び悩みを海外メディアが補っている可能性は多いにあるでしょう。

GameWithも2018年7月に英語版のゲーム攻略サイトを立ち上げていますが、海外メディアへの言及はありません。収益貢献は極めて少ないものと予想できます。

隆盛を誇ったスマートフォンゲーム市場。その産業は今、大激変の時代を迎えています。ゲーム会社はもちろん、メディアをはじめとした周辺で事業を展開する会社も方針転換や新規事業への進出など、備えが必要になっているのかもしれません。

《不破聡》

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