帝国データバンクが、2024年度の出版社の倒産発生状況について調査・分析を行った結果を発表しました。2024年度に発生した出版社の倒産は31件となり、前年度(17件)の約1.8倍に増加しています。
2020年度以降、出版社の倒産は20件を下回る低水準が続いていましたが、9年ぶりに30件を超え、増加の兆しが見え始めています。出版業界の事業環境は悪化の一途を辿っており、小規模事業者を中心に破綻が相次いでいます。
スマートフォンの普及により電子書籍が一般化したことに加えて、SNSや動画配信サービスなどで多くの情報が発信されるようになり、オンラインで手軽に情報を入手できるようになったため、紙媒体の需要は大幅に落ち込んでいます。さらに、少子化の影響により副教材や主に大学生が使用する専門書を取り扱う出版社などは、廃業・清算が選択肢として浮上しているとされます。
近年は、紙やインクの価格高騰により製造コストが上昇しています。需要減の中、わずかな利益で事業を続けている出版社が増加しており、2023年度の業績では36.2%が「赤字」となり、過去20年で構成比が最大となりました。減益を含めた「業績悪化」は、6割を超えています。
今後について、帝国データバンクは事業環境のさらなる悪化が懸念されるという見方を示しました。要因として、少子高齢化による読者の減少やオンライン広告の普及による雑誌への広告出稿の減少、紙・インクなどの価格上昇、人件費の増加などが挙げられています。
また、印刷や書籍小売といった周辺業界も厳しい環境が続くことが予想されることから、DX、IT化を進めて生産性や流通形態の再編を図るなど、抜本的な対策の必要性が指摘されています。厳しさを増す状況の中、出版社はどのように事業モデルを変化させていくのか、各社の動きが注目されます。