特定非営利活動法人 肖像パブリシティ権擁護監視機構は、2025年度の肖像権・パブリシティ権等の侵害疑義事案に関する実態調査の結果を公表しました。調査期間は2025年4月から2026年3月で、インターネット調査、アンケート・ヒアリング調査、削除対応の実証が行われています。
主要SNS(TikTok、X、YouTube)における侵害疑義投稿数は延べ4万件以上、閲覧回数は約3.35億回に上ることが確認されました。声の無断利用についても、海外アカウントによる多言語の冒用事案が多数確認されています。
画像生成AIプラットフォーム(sea art AI、PixAI)では、芸能人等の肖像を学習させたLoRA等のモデルの無断作成・公開が引き続き行われていました。本年度は侵害の根源となるモデル自体の削除実証も実施されています。
具体的には、某俳優の肖像を使用したLoRA等のモデル20件を対象に、芸能事務所の協力のもと2026年1月から2月にかけて削除申請を行い、削除率100%を達成しました。ただし、削除完了後も同一人物のモデルが新たに投稿される事案が確認されており、定期的なモニタリング体制の構築が不可欠とされています。
経済的損失の試算については、業界初の試みとして2つの観点から算定が行われました。1つ目は1投稿あたりの利用料相当額を投稿件数分積み上げる方法、2つ目はSNSでの総閲覧回数に同等のリーチを広告で買った場合の換算値による方法です。その結果、確認できた範囲だけでも約20~45億円規模の経済的損失が生じていると試算されました。

ただし同機構は、この試算が調査対象に含まれる主要SNS上の事案に限定した保守的な参考値であり、未確認投稿や削除済み投稿、無許諾商品の流通、声優・音声AI関連被害の全体像などは含まれていないと説明しています。
業界174社から有効回答を得たアンケート調査では、侵害疑義事案を「全て把握」または「概ね把握」と回答した事務所は約28%にとどまりました。対応ガイドラインの策定状況は約52%が「検討中」で、策定済みはわずか1.1%です。予定なしも46.6%に上り、個社での対応の困難さから業界全体としての指針を求める声が高まっています。
一方、約51%の事務所が「事前審査・許諾があれば利用を認める」と回答し、適切な管理下での活用に前向きな姿勢も確認されました。課題としては契約ルール・倫理ガイドラインの整備が90%超、対価設定の難しさが約76%、改変リスクが約74%と挙げられています。
2026年4月には法務省において「肖像、声等の無断利用による民事責任の在り方に関する検討会」が発足しており、制度面での議論も活発化しています。同機構は本年度新設の声優部会を通じて声優の権利保護にも取り組む方針です。本調査はIPFORWARDグループのIPconnect株式会社が受託・実施しました。



