国産のサブスク支援プラットフォーム「Bplats® Platform Edition」を提供するビープラッツ株式会社。同社の創業者で代表取締役社長を務める藤田健治氏は、三井物産でのシマンテックやライセンスオンラインの立ち上げから数えて、サブスク領域の経験は四半世紀に迫るといいます。

また、同社は4月に株式会社サブスクリプション総合研究所を立ち上げ、より中立的な立場で、サブスクの啓蒙にも乗り出します。藤田氏と、ビープラッツ副社長でサブスクリプション総合研究所の代表取締役社長も務める宮崎琢磨氏にお話を聴きました。

―――サブスクリプション総合研究所を立ち上げたきっかけを教えてください

宮崎: ビープラッツは設立から12年、実は私も藤田も前職時代から数えると、もう四半世紀近くもサブスクというものに向かい合ってきました。

いまサブスクが非常に大きな注目を集めているわけですが、2つ改めて考えるべき点があると思っています。1つは、サブスクは新しい概念ではなくて、昔からある概念でありつつ変質していっていること。もう1つは、サブスクはビジネスの側面から語られることが多く、かつ個々の商売から見た第一人称的な考察が多いことです。

一方でサブスク、特に「新世代のサブスク」は、単なるビジネスの一流行ではなく、大きなパラダイムの移り変わりとして俯瞰的に捉えた方がいいのではないかと思っています。昨今、サブスクという言葉が急に流行しているのも、このパラダイムの変化が表出してきているからに他ならないのではないかと。そんな中、一旦個社のビジネスから距離を取った中立的な立場でサブスクを考え、他機関とも連携して研究できるような組織を作ろう、ということでサブスクリプション総合研究所を立ち上げました。

―――大きいパラダイムというのは?

宮崎: そもそも、「本来的なサブスク」というのはかなり広い概念で「ビジネスにおいて顧客との継続的な関係が担保されている状態」ではないかと私達は考えています。いまサブスクで提供されるサービスは非常に多岐に渡ります。音楽、映画、飲食店、服、家具・・・人によって思い浮かべるものは異なりますが、この概念においてはどれもサブスクです。また、サブスクは決済・課金の手段のことだと誤解される事が多いのですが、これは十分条件に過ぎなくて、あくまでもサブスクとは「ビジネスにおいて顧客との継続的な関係が担保されている状態」であろうと思います。

藤田: サブスクは日本語では「定期購読・定期支払い」と訳されることもありますが、単に「お金の取り方」という風に捉えれば、昔からある公共料金や携帯電話や新聞の支払いなど、旧来的で特段珍しいものではなくなります。紙で結ばれる保険や保守契約もそういった旧来型のサブスクの例といえるでしょう。では何がサブスクの持つ可能性の本質であり、新世代型サブスクが引き起こすパラダイムシフトなのかというと、モノからコトへの変化と、その先の「新たな価値」を創造し、ビジネス革命を起こすことではないかと思います。

ビープラッツ代表取締役社長の藤田健治氏

―――なるほど。ビジネス自体を変革していくことが本質だと

宮崎: 藤田の言うように、新世代のサブスクが持つ可能性の最たるものに、ビジネスの変質性があり、これには3つの区分があると思っています。(1)は既存のモノの提供方法を月額化・定額化するもの。これは主に経済的なメリットを訴求する場合が多いですが、裏を返すと単なる値札の付け替えに過ぎず、ビジネスはあまり変質しているとはいえません。(2)は技術革新などを背景に、売るモノがコトに変化するもの。例えば映画や音楽のサブスクでは「DVDやCDを買う」行為が「いつでも聞ける環境を手に入れる」という形に変化しています。これはスマホやクラウドを通じて常にインターネットに繋がるという技術革新が実現したものです。(3)は(1)と(2)の組み合わせで、「新しい価値」を創造するものです。例えば、自動車の販売というモノから新たなライフスタイルを提供するカーシェアリングやライドシェアというコトへの切り替え、さらに自動車自体を移動サービスの一環と捉えるMaaSへの発展などが挙げられるでしょう。

藤田: 常に繋がる環境の整備、スマートデバイスを通じた細かなパーソナライゼーション、ビッグデータの蓄積と利用などを活かして、モノからコトへの移り変わりが起こっていて、それによってルールが変わり、今までと全く異なる新規参入者が短期間でメインプレイヤーに代わるというような事が起きうる時代になっています。経済合理性だけでなく、技術革新、さらには市場・企業のリテラシーの変化が、この新世代サブスクへの流れを後押ししているとも言えるかと思います。

―――それらは旧来型のサブスクとは異なるものだということですね

宮崎: 先に述べた「ビジネスにおいて顧客との継続的な関係が担保されている状態」という定義は今も変わらないのですが、サブスクリプション総研ではそこに下記の5つの要素が加わったものを「新世代型サブスク=SMARTサブスクリプション」だと呼んでいます。

Sequential 連続性
Mutual 相互性
Alterative 変質性
Responsive 即応性
Transformable 転用性

また、これらの頭文字を取って「SMARTサブスクリプション」と呼んでいます。

ビープラッツ副社長で、サブスクリプション総合研究所の代表も務める宮崎琢磨氏

Sequential(連続性)は、アップセル・クロスセルといった次の購買行動を連続的に引き起こしうるという性質を指したものです。単一の商材ではなく、様々な商材やラインナップを組み合わせることによって、顧客の状況によって最適な商材を選択させていき、LTV(Life Time Value=顧客の生涯価値)の概念を生み出すものです。これは次のMutual(相互性)であることと密接な関係があります。

Mutual(相互性)は、プロダクトアウト型の一方向ではなく、顧客からも何らかのトリガーを引くことができる、という双方向性を指すものです。感覚的にはサブスクであれば当たり前のように思えますが、オンラインのマイページや顧客アカウントがなければ難しいため、実は、旧来型のサブスクリプションにはあまり見られなかった概念です。この相互性を追求するモデルでは、次に挙げるResponsive(即応性)と両輪となって、企業としての考え方も、商品が中心ではなく、顧客が中心になっていくと思われます。

Alterative(変質性)は、既存製品の月額化・定額化ではなく、モノからコトへの変化、新たな価値の創造などの変化、つまりビジネスモデル自体の変質を実現していることで、先のパラダイムシフトのくだりでお話ししたこととなります。車の例以外にも、決済ビジネスで言えば、レジはモノの販売にあたります。そこからクラウド型のレジはモノからコトへの変化を実現しました。さらにオンライン決済やQR決済などは、別のオンラインプラットフォームとの融合など、さらに進んだビジネスフィールドを創造するものだと言えるでしょう。

Responsive(即応性)は、1対多ではなく、1対1の(パーソナライズされた)関係を構築するものです。顧客と直接繋がり、反応やデータを知ることで、個々の顧客にあったサービスや商品の提供ができるようになっています。D2C(Direct to Consumer)も、この新世代サブスクのResponsive(即応性)について、別視点から捉えた見方とも考えられます。

Transformable(転用性)は、構築した仕組みや取得したデータを基にして、さらに高度なモデルへの転換が可能であることを指し、Alterative(変質性)の次に来る概念です。例えば、工業用のコンプレッサーのメーカーが、コンプレッサー機器を販売していたモノ売りモデルを、使用した圧縮空気量に対して支払う形の従量型サブスクにまず転換しました。さらに、この顧客データを把握することで、より高度なサービスを顧客に提供していく、という次のステップへ進もうとしています。

以上の5つの要素を含んだものを「SMARTサブスクリプション」と呼んでいますが、これらは必ずしも全てを含んでいる必要はなく、このうちの幾つかを含むものが「SMARTサブスクリプション」ではないかと考えています。

―――企業がビジネスモデルをサブスクに変革しようと思ったら、どのように手を付けていけばいいでしょうか?

宮崎: まずはできるところからビジネスモデルを変えていくのが肝要かと思います。前述のコンプレッサーメーカーの例でも、最初から利用した圧縮空気の量で課金というゴールに到達したわけではありません。例えば、最初は単に月額費用に変えるところから始めて、次に原価ではなく顧客に提供した価値ベースの価格に変えて、最後に使用量ベースに変えていく、Sequential(連続性)の流れを経ていきます。このAlterative(変質性)を実現するためには、どのくらいの価値を顧客に提供できているか、顧客の動向がどうかを把握する必要、Mutual(相互性)さとResponsive(即応性)さの視点が現れてきます。このステップを踏まえていけば、更にプラスαの価値を提供するモデル、Transformable(転用性)なモデルへのヒントも得られると思います。

藤田: そこまで行くと、研究を主とする総研の役割を超えて、個社のサブスク化の支援という事業になってきますので、弊社のような事業会社の役目かと思います。弊社ではサブスクに取り組まれる企業向けに「サブスクリプション プロジェクトノート」という30ページほどの冊子をご提供しています。これまでに述べたような、私達が考えるサブスクで重要になってくる考え方や整理を、ノートに書き出していくことで構想できるというものです。また、会社としては単にサブスクを実現するプラットフォームを提供するだけでなく、事業化を支援する会社でありたいと思っていますので、一緒に伴走していきます。

―――「Bplats® Platform Edition」はどのようなプラットフォームなのでしょうか?

藤田: 「サブスクリプションをすべてのビジネスに」と掲げているのですが、事業者がサブスクを始めようと思った際に、ワンストップでサポートできる機能を取り揃えたプラットフォームを提供しています。サブスクで煩雑になる商品管理、契約プラン管理、料金計算、請求管理などのバックオフィス系はもちろんのこと、商品を販売する際のマーケットプレイスやマイページも提供していますので、フロントを自社開発せずとも商品販売をスタートできます。

また、「つながる機能」もウリの一つです。例えば、商材の仕入れに対応しています。IoT商材ですと、通信回線やSORACOMのチップを一緒に売りたい場合があると思いますので、既に連携が行われています。Microsoft AzureやAWSみたいなクラウドサービスも同様です。また、代理店商流でパートナーに商材を提供するためのプラットフォームとしても利用できるようになっています。各代理店に「Bplats®」の無償版を入れてもらう事ができます。また、決済も各決済代行会社に接続ができますので、既にお使いの会社を引き続き利用できます。

今後も外部サービスとの連携は強めていきたいと思っていますので、優れた外部サービスを活用しながらサブスクをドライブできるようなプラットフォームになっていくと思います。

―――サブスクに対する風向きが変わってきたのを感じられますか?

藤田: そうですね。去年くらいから少しずつ声をかけていただける機会が増えてきました。いまでは勉強会をして欲しいというような声も多いです。そういうこともあって、サブスクリプション総研を立ち上げました。

サブスクについての理解も徐々に広まっているように思います。これまでは大企業さんと話をすると、最後は「私達の仕様にカスタマイズして欲しいので」ということで、どちらかというとシステム開発会社のようなビジネスに落ち着いてしまう事が多かったのですが、他社と繋がれる「Bplats®」の魅力を活かすためにはカスタマイズではダメだということがようやく理解されてきました。先日発表したトヨタ自動車の「KINTO」のような事例もようやく出せるようになってきました。これからますます広がっていくと思いますので楽しみにして欲しいですね。

【4月特集】サブスクリプションはメディアをどう変えるか?

4月特集に合わせて、オフラインイベント「Media Innovation Meetup #3 サブスクリプションはメディアをどう変えるか?」を4月17日(水)に開催します。

特集に登場するサブスクリプション総合研究所の宮崎琢磨 代表取締役社長、キメラ/CAMPFIREの大東洋克取締役COO、そしてメディアコンサルタントとして世界のメディア事情に詳しいソーシャルカンパニーの市川裕康氏にも世界のメディアのサブスク事情についても解説いただきます。

終了後には軽食と飲み物を用意した懇親会も実施します。

■概要
日時 2019年4月17日(水) 19:00~22:00
会場 〒160-0004 東京都新宿区四谷3-9 第一光明堂ビル 9F TIME SPACE 四谷 ※四谷四丁目駅から徒歩2分
主催 株式会社イード

■スケジュール
18:30 開場
19:00 開演、主催者挨拶
19:05 各登壇者からプレゼンテーション
    株式会社ソーシャルカンパニー 代表取締役/メディアコンサルタント 市川裕康氏
    ビープラッツ株式会社 取締役副社長 宮崎琢磨氏
    株式会社キメラ/株式会社CAMPFIRE 取締役COO 大東洋克氏
20:05 パネルディスカッション
21:00 懇親会
    軽食とドリンクを用意します
22:00 終了

席に限りがございますので、Peatixより是非早めにお申込みください。