ハーバード大学ケネディスクール併設の研究機関であるSHORENSTEINセンターが、出版社におけるデータの活用法や、サブスクリプションについてのレポートを発表しました。

今回の調査ではアメリカ国内の500以上の出版社を対象に2011年~2018年の期間に行われています。

市場浸透率を用いて市場を測定

サブスクリプションでは、出版社はその地域やデジタル読者、関連するユニークビジターによって市場を測定、これを市場浸透率としました。この市場浸透率は、出版社の地理的な強みを証明する有用な指標となります。

この調査で最も市場浸透率が高かったのがMinneapolis Star Tribune Networkでした。同社が発行するミネソタ州最大の新聞「Star Tribune」のデジタル版は、市場浸透率31%となり、調査対象約500社の中でトップとなりました。さらにこの数値は、平均の約2倍の数値となります。「Star Tribune」に次いで市場浸透率が高かったのが、1872年に創刊された日刊紙のデジタル版「Boston Globe」で23%でした。

伝統的な印刷版の新聞を発行している出版社であっても、ユニークで必要不可欠な情報源としての地位を確立できれば、デジタル分野での大きな需要を生み出す事は可能であると、この2社が示唆しています。

大手出版社のストップレートは業界中央値の倍

この調査では、ペイウォールによって離脱した読者の割合(ストップレート)に注目しています。

調査対象である500社以上の出版社のうち、約50%は読者全体の1.8%をペイウォールは止めているにすぎません。

調査対象となった出版社の大多数が、成功している出版社にストップレートで後れを取っていることがわかりました。ストップレートが低い出版社の中には、購読を希望する読者が少なく、不十分な場合もあります。

一方で、このストップレートは業績によって左右されます。大手出版社のストップレートは、業界全体の中央値である3.64%に対して約2倍となっています。

無料で提供される記事は減少傾向に

従量制課金モデルを採用している大半の出版社は、無料で読むことができる記事を月5記事以下に設定していることがわかりました。

「指定の本数までは無料」というシステムが導入された当初は、広告収入の減少等の懸念も見られ、無料で読める本数を増やしたり、読者がペイウォールを回避できるような対応をとっていました。

例えば、McClatchyがサブスクリプションを導入した当初は1か月あたり25記事を無料で提供していましたが、読者がサブスクリプションモデルになれた現在では、調査対象のほとんどの出版社でこの本数を減らしています。

サブスクリプションで成功している出版社は、どのコンテンツを無料で提供するのか、明確な理由とガイドラインを持っていることが判明しました。このルールにより、読者をサブスクリプション購読へと促すアプローチのテストが可能となります。

今回調査の対象の中で高いパフォーマンスを示している出版社は、ほぼすべての記事もしくはコンテンツを有料としており、例外は限られていました。この例外には、死亡記事やスポンサードコンテンツなどが当てはまります。

登録の過程で読者の約90%が離脱

一度サブスクリプションの登録を試みた読者が、最終的に購入に至るまでに約90%が離脱していることが10社の主な出版社のデータからわかりました。

購入プロセスの最初のステップである、価格選択の提示を見た読者のうち次のステップ(メールアドレスの提供)へ進んだのはわずか29%であり、支払い情報の入力へ進んだのは14.8%、9.9%が購入が完了したことを示す確認ページに到達しています。

この割合はモバイルの場合さらに大きく、デスクトップの約5倍であることが調査によりわかっています。