早いものでもう年の瀬。皆様にとって2019年はどのような一年だったでしょうか? 2019年1月にオープンしたMedia Innovationも最初の一年を終えようとしています。これまで10回の特集企画、13回のイベントを開催し、多くのメディア業界のキーパーソンを取材してきました。12月特集は「メディア業界2020年の展望」という事でこれまで登場いただいた皆様にメッセージをいただきました。

11月特集は「メディアとコマース(EC)の展望」にご登壇いただいたフラクタの代表取締役で、革製品ブランドとして根強いファンを持つ土屋鞄製造所の取締役も務める河野貴伸氏に、2019年の振り返りと2020年への展望について聞きました。

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2019年はメディア業界にとってどのような年だったでしょうか?

私はメディア業界というよりも、EC業界やブランド側の人間なので、当事者とはちょっと違う視点になってしまい恐縮ですが、2019年はメディア業界の方達からECのご相談を非常に多く受けるようになった、と感じています。Cookieの規制など「広告」というマネタイズに限界が見え始めている中で、メディアが本来あるべき姿とは何なのか?「何を」「誰に」提供し、ビジネスを成立させるのか。これをメディア業界の皆さん自問自答されているのだなと感じます。その一環として、あらためてECに対して真摯に向き合っていこうという強い意思を感じる一年だったと思います。

これからのメディアに求められること、直面する課題はどういったことでしょうか?

「原点回帰」だと思います。2019年、ECに興味を持っていただき、お話をさせていただいたメディア企業さんに対して、僕が伝えたことは「モノを売る」こと自体、当たり前ですがめちゃくちゃ大変だということ。お話をお聞きすると皆さん「やっぱそうだよね・・・」とおっしゃいます。

気付いているけど、でもやらなければ前に進まない、どうしたらいいんだ、という状況なのかなと。その中で、数少ない成功事例を見ると、結局地道にやるべきことを愚直に積み重ねている。そして、それら成功事例に共通していることは「メディア」と「EC」の役目がはっきりしていることが挙げられます。これは「メディア」は「文化」を司り、ECと併せて、総合的に「コト消費」を実現しているということです。

このバランス感覚がとても重要で、どちらかに傾くと一気に衰退する。そこをどう舵取りするか。できる限り成功の可能性を引き上げるためにも、より「尖った(誰に対して、どんな価値を提供するのかが明確である状態)」メディアの存在が求められてくると思っています。

インターネットの世界は「数値が可視化できる」ことが大きな特徴であり強みですが、逆にそこに縛られすぎているでは?と思っています。インプレッションの多さだけが価値を推し量る数値ではなく、どれだけユーザーに支持され、熱狂的なファンを生み出せるかが、これからの課題であり、重要な鍵になってくると感じています。そういった意味での「原点回帰」を求められるのではないかと個人的には感じています。

2020年に取り組みたいと考えていることはどういったことでしょうか?

2019年において、個人的な反省は、予想以上に世界は「インスタントに結果を求める」方向に加速したことを見極めきれなかったことです。

情報過多が更に加速、人々にとってはもはや「時間」はあらゆる場面で「奪われる」ためにあり、脳が安息できるタイミングは限りなく少なくなっています。そんな中で「よりシンプルに、わかりやすく、インスタントに結果や効果」を求めるニーズは高まっています。

ブランドやECの世界では「コト消費」を考えることが当たり前になりつつありますが、その先には「ヒト」を消費させない「安息できる場」や「シンプルかつ欲求を満たしてくれる象徴的な体験(シンボリック・エクスペリエンス)」を求められてくると思っています。つまり「消費されない」ために「場」や「体験」から安息を得るため、そしてその「場」が継続され続けるように、ユーザーが「投資」する世界。「消費」から「投資」への意識シフト。

今後10年はこの「投資」を集められるブランドやメディアが生き残っていくのでは?と個人的には仮説を立てており、その検証の始まりの一年としたいと思っています。

そのためには、もっと「ブランド」をまずは増やすことが重要だと考えています。すでに世の中には多くの体系化されたブランド理論があり、それらは書籍から学ぶこともできますし、優れた専門家にコンサルティングしてもらうこともできます。しかし、どうしてもまだ日本の企業は「ブランディング 」に対して予算が付け辛い、成功が見え辛いから投資できない、という意見が多いと思います。

私たちは、ブランディング の入り口をもっとわかりやすくし、企業自信が自分たちがブランドであると認識し、ブランディング という行為に向き合える環境を作るお手伝いをしていきます。特に我々が持つもう一つの強みである、「コマース」という数字につながるチャネルとパッケージングすることで、成果に対してもわかりやすくすることで、障壁を下げ、ブランドを生み出す機運をもっともっと高められると考えています。

2020年はそれらを実現するSaaSサービスや、プロダクトを矢継ぎ早にリリースしていきたいと考えています。