「新たなスタートアップ・エコシステム形成への挑戦」電通グロースハックプロジェクトが考える地方スタートアップの可能性とメディアの未来

スタートアップや新規事業担当者の、サービス成長や現場が抱えている課題の解決を目的に立ち上がった電通グループ横断チーム「電通グロースハックプロジェクト」。支援内容は多岐に渡り、ウェブやアプリ、広告やサービス内改善といったソリューションの区分けはなく、全…

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<p>左:株式会社電通デジタル・上野 雅博 氏、右:株式会社電通デジタル・大橋 誠也 氏</p>
  • <p>左:株式会社電通デジタル・上野 雅博 氏、右:株式会社電通デジタル・大橋 誠也 氏</p>
  • 「新たなスタートアップ・エコシステム形成への挑戦」電通グロースハックプロジェクトが考える地方スタートアップの可能性とメディアの未来
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スタートアップや新規事業担当者の、サービス成長や現場が抱えている課題の解決を目的に立ち上がった電通グループ横断チーム「電通グロースハックプロジェクト」。支援内容は多岐に渡り、ウェブやアプリ、広告やサービス内改善といったソリューションの区分けはなく、全領域でサービスを提供している。

事業戦略策定支援、KPI選定から課題抽出、仮説構築、施策エグゼキューションまで一貫した支援や、XR(VRやAR等)技術による新ビジネス創出などにより、企業のサービス成長を支援する。

そこで今回は、プロジェクト責任者の上野氏とメンバーの大橋氏にインタビューを行い、実際のサービス内容について伺った。

左:株式会社電通デジタル・上野 雅博 氏、右:株式会社電通デジタル・大橋 誠也 氏

株式会社電通デジタル・上野 雅博 氏

早稲田大学政治経済学部卒業。電通グロースハックプロジェクト代表。大手インターネット広告代理店でSEOコンサルタントのキャリアを経て、2016年に電通デジタルへジョイン。CRO(Conversion Rate Optimization)サービスの立ち上げに携わり、Webサイトへの集客から収益化まで一気通貫のコンサルタントとして貢献。また、アプリ改善のコンサルティングサービスを開発し、電通及び電通デジタル共同で電通グロースハックプロジェクトを発足。スタートアップを中心にデバイスやソリューションに捉われない事業成長支援を推進中。

株式会社電通デジタル・大橋 誠也 氏

2018年より電通デジタルへジョイン。 2011年よりフィーチャーフォンからスマートフォンへとデバイスが切り替わる中でのユーザー体験の最適化をインターネット代理店、アプリデベロッパーの両社を通して体験。サービス立ち上げからプロモーションまでの全段階において、常にユーザー体験が最優先される事業成長を目指すコンサルティングに強みがある。

―――電通デジタルに入社したきっかけを教えてください

・上野 雅博

私は人材コンサルタントの仕事からキャリアを始めています。マーケティング職へは、担当業界の影響で興味をもったことをきっかけに、別の広告代理店への転職のタイミングで職種チェンジしました。その数年後、人材業界で働いていた時にご縁があった方からのお誘いもあり、当時のネクステッジ電通(現電通デジタル)に入社しました。

電通デジタルに入ってからはSEO、CRO(Conversion Rate Optimization)などの、広告以外のオウンドメディアコンサルティングのソリューションを提供していました。

ただ、個人的にブラウザ向けサービスだけに閉じているのが嫌で、当時アプリに強い代理店出身の方とアプリ版SEOやCROサービスのようなソリューション開発を社内副業のような形で行っていました。すると意外にも同じような想いを抱いている人が社内に多くいたためバーチャル組織化しました。それが今の電通グロースハックプロジェクトの原型です。

ちょうどその頃電通の事業企画部門でも同様の活動をしているという話があり、電通の片山さんも合流し、電通・電通デジタル共同のバーチャル組織になりました。その後、実際売り上げも立ってきたことから、2019年の3月にはバーチャル組織を運営する主幹グループ「グロースハックグループ」が電通デジタル内に組成され、2019年6月に電通デジタル公認プロジェクトになりました。

メンバーは広告・ソリューションの領域の隔たりなくプロジェクトに参画してくれており、、今は事業成長支援を目的に網羅的にソリューションを提供しています。特にスタートアップ、大手の新規事業が中心です。

・大橋 誠也

大学卒業後アドウェイズに入社しました。当時はスマートフォンのアドネットワークが立ち上がった時期だったので、広告運用者としてプランニングをしていましたが、2015年アカツキに転職し、コンテンツをみる仕事をしました。そのあとにアドウェイズに戻り、運用型広告のマネージャーをしていました。

電通デジタルに入社後は、上野とまさに考えていることが一緒だと思い、一緒にグロースハック業務に携わることになりました。

―――「電通グロースハックプロジェクト」ではスタートアップ支援をしていますが、地方のスタートアップをどう思いますか?

「地方」という言葉が適切かは分かりませんが、ここで仮に「東京以外」という定義で使わせていただくと、実際に現地の方の話を聞く限り、地方でスタートアップをやりたいと思っている人、始めたはいいけど軌道に乗せられない人が多いように感じます。

地方のスタートアップに聞くと、出資してくれるようなVCも、グロースハックを支援するような方も、東京に比べると少ないそうです。職種的にはPMのようなマネジメント職が少ないということでした。地方と東京で明確な差があるのが現状で、スタートアップ市場が盛り上がる中で、東京じゃないと事業拡大が難しいというのは、率直に言って勿体ないと感じています。例えば、東京以外では、都道府県の特色が出ていて面白いスタートアップが多いんです。

先日イベントを行った京都では京都大学発のスタートアップや医療や繊維などの領域でスタートアップが盛んだったり、旅やマインドフルネスといった領域のスタートアップが比較的多かったりします。

ですから、私はそういう人たちのためのサポーターになれたらいいな、と思っています。だから僕自身でスタートアップを立ち上げることはありません(笑)。新たなスタートアップ・エコシステム形成への挑戦ですね。「これから成長にドライブをかけたい!」という時に頼れるところがあるんだ、ということを今後も発信していきたいです。この取り組みが巡り巡って東京の一極集中解消に一石投じられたらな、と。

今僕らが求めているのは全国のスタートアップの皆様の生の声ですね。「スタートアップジャーニーengawa」という先日開催したイベントはその一環です。スタートアップを設立して、何がしたくて、何に困っているのか。それが知りたいです。

「電通」という名前からで萎縮されてしまうことも多いのですが、それはまだまだ我々の想いや実態、実績を届けられていないからに他ならないので、まずは気軽に声をかけてもらえる存在になりたいです。電通グロースハックプロジェクトを駆け込み寺のように活用していただき、全国の想いを持った方々がスタートアップを立ち上げられるような世の中にしたいです。

―――電通グロースハックプロジェクトの今後の展望などはありますか?

「グロースハック」は、マーケティングに近い粒度で漠然としている概念ですが、我々は「事業成長支援」という定義をしています。独自フレームワーク化を進め、電通グループのあらゆる部署へ浸透させていきたいと思っています。

ソリューションを深掘りする社内の専門組織は絶対にあるべきなので組織横断の「バーチャル組織」という体裁は持ちつつ、現在6名いる主幹グループを中心に事例や知見を束ね、拡大していくつもりです。

電通グロースハックプロジェクトでは社外にも開かれたバーチャル組織でありたいと思っています。実際、直近IPOしたようなスタートアップの在籍者や別の広告代理店から独立したようなグロースハック人材も参画メンバーとして複数名受け入れています。

なので、地方文脈で言えば、全国にメンバーを増やしたいですし、日本全国の熱い想いを持っている方々と毎週オンライン会議をするとかもっても面白いだろうなぁと思ってます。社内メンバーでもZoomやslackなどでオンライン会議は増やしていますね。あとシンプルに思うところとして、情報インフラが整ってきたので、自由な働き方をもっとしていって欲しいと思っています。特に今の若い世代はそれを実践しようという傾向が強いですね。

―――メディアについて思うことはありますか?

電通グループの会社として、「グロースハック=事業成長支援」を掲げている電通グロースハックプロジェクトができることはもっとあるはずと感じています。最近メディア企業様からの問い合わせはマネタイズ課題が頻繁に出てくるイメージです。「広告が売れない」とか、「広告収益を上げるためにPVを増やしたい」「ファーストパーティーデータを強固にしたい」とか、「タイアップ記事どこかないですか」、という話が多いです。

しかし、マネタイズも大事ですが、マネタイズと、届けたいビジョンと追うべき優先順位が逆転してしまうと、何かのために立ち上げたはずなのに、「届けたいものはなんだったっけな?」という状態に陥ってしまいます。これは大企業でありがちなソリューション縦割り組織では実現が難しい傾向があります。

広告集客やPV/セッション数増加といったことを得意とする専門部隊はいたとして、それらを横断しながら継続的な「事業成長」を目指している部隊がいないという壁にぶつかりがちです。なので、電通グロースハックプロジェクトでは、そのようなメディア企業様の「ビジョン」「価値観」と「マネタイズ」を上手くディスカッションして理想状態に進めていきたいと考えています。

―――電通グループならではの強みはありますか?

豊富な情報と、案件の規模感、人との繋がりがうちの強みですね。情報が集められる、集まってくるという状況があるのは強いです。例えば、オリンピックのような規模の案件は電通グループでしか携われないですし、ARなどのXR系やMaasなど最先端テクノロジーは必ず誰かが専門家として関わっています。本気で探せば会えない人がいないので、何かをやろうと思った時、すぐに動き出せます。

一方、電通グループとして困っていることもあります。スタートアップの皆様からは「敷居が高い」と思われてしまうことがよくありますね。民間企業である以上、当然ある程度は我々の収益も見られはしますが、それ以上に、起業から事業拡大までの地域格差をなくして、全国のスタートアップの企業力の底上げを行うというミッションの実現が第一優先です。

―――最後に地方のスタートアップの皆様へメッセージを

通常電通や電通デジタルがメインでご支援している大手企業様とは異なるスタートアップを支援し続けられている理由でもあるのですが、単純に僕らはスタートアップが好きなんですよね。だって、あそこまで本気で世の中を良くしたい!って想いで働く組織体ってあまり無いと思うんですよね。彼らが追いかけている世の中が実現するのであれば、彼らを支援するのが一番世の中を良くするのに手っ取り早いはずです。

我々電通グロースハックプロジェクトも本気で世の中を良くしようと思っております。

直近では、スタートアップの皆様のためになればと、米国Amplitude社と一緒に300万円以上するツールの提供を1年間無償で提供するプランも始めています。これからドライブをかけようとしているスタートアップ方々、少しでもお困りごとがございましたら、ぜひお声がけください。


■電通グロースハックプロジェクト(GHPJ)とは

主にスタートアップ企業を対象としたグロースハック支援のための電通グループ横断チーム。電通の事業企画部門で始まったプロジェクトと、電通デジタル内でスタートアップ企業への課題解決のために活動していたバーチャル組織が合流し、2019年3月、運営の主幹グループである「グロースハックグループ」が電通デジタル社内で設立。同年6月に電通および電通グループで公認され、様々なフェーズでスタートアップ企業の成長を支援するチームとして展開している。

電通グロースハックプロジェクト公式サイト

《浜崎 正己》

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浜崎 正己

浜崎 正己

メディアの立ち上げと運用を支援する(株)メディアインキュベート の代表。1988年千葉県生まれ。Twitter : https://twitter.com/masaki_hamasaki

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