メディア化する巨大流通企業、ウォルマートによるTikTok買収提案は自然な選択肢

世界150カ国でリリースされ、累計20億ダウンロードを突破しているという、ショートムービーアプリ「TikTok」が世界的な逆風にさらされています。米国では安全保障上の理由から排除が進められ、8月上旬のトランプ大統領による大統領令で45日後以降、米国企業が運営元のバイトダンスと取引をすることを禁じるとしました。

これを受けて、TikTokの売却の動きが加速しています。

新型コロナウイルスも追い風にしたTikTok

TikTokは中国のバイトダンスが開発。中国では「Douyin」という名称で提供されていますが、国際版の「TikTok」はこれとは切り離された存在だと説明されています。気軽なショートムービーは若者を中心に人気を集めていて、特に新型コロナウイルスによって自宅での生活を余儀なくされた環境下で大きく成長し、今年の第2四半期(6月末)には一年前と比べて、中国を除くグローバルで月間利用者数が72%増加、北米では123%という成長ぶりでした(GWI調査)。

GWI調査によるTikTokの成長。新型コロナウイルスによって加速しているのが見て取れる。特に南米での加速が著しい

売却命令では様々なプレイヤーの名前が取り沙汰されていますが、最有力と見られるのがマイクロソフトです。同社はCEOのサティア・ナデラ氏がトランプ大統領と会談を行い、米国・カナダ・オーストラリア・ニュージーランドの事業を対象に買収交渉に入り、9月15日までに完了する事を目指すとしました。懸念されているデータの扱いについては全てのデータを米国内に転送すると述べました。

ウォルマートがマイクロソフトとタッグを組んで参戦

一方で、これだけの魅力的な事業の売却は滅多にないということもあり、様々なプレイヤーの名前が浮かんでいます。例えば、SNSのツイッターは予備的な協議を行ったと伝えられました。さらに業務用ソフトウェアで世界的な大手であるオラクルの名前も上がりました。マイクロソフトもオラクルもクラウド事業を強化していることから、TikTokに興味を示しているのではないかという指摘もありました。

ここへきて浮上してきたのがウォルマートです。言わずと知れた流通の世界最大手で、27カ国に1万1500店舗を展開し、220万人を雇用、2020年度の売上が55兆円にも達するという巨人です。先週末に報道されると、130ドル近辺で取引されていた株価は137ドルまで跳ね上がり、一時は140ドルに達するなど株式市場も好感しているようです。本稿ではなぜウォルマートは手を挙げたのか、なぜ市場は好感したのか、その理由を考えてみたいと思います。

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Manabu Tsuchimoto
Manabu Tsuchimoto
デジタルメディア大好きな「Media Innovation」の責任者。株式会社イード。1984年山口県生まれ。

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