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広告とユーザーの関係を正常化する大チャンス、Priv Tech中道社長・・・特集「After Cookie~メディアと広告の未来像」

Media Innovationの2021年1月特集は「After Cookie~メディアと広告の未来像」と題して、プライバシーを重視する世論の高まりや、サードパーティクッキーの廃止という技術的な制約の中で、メディアにおける広告やデータ活用がどのように変化していき、どのようなスタンスで望んでいけば良いかをキーパーソンへの取材で探っていきます。

GDPRやCCPA、そして日本の個人情報保護法の改正などで求められる要件の一つが「同意管理」です。個人情報の取得や利用に際して、ユーザーからの同意を取り、それを管理する事が求められるようになっていきます。その同意を管理するための存在がCMP(コンセント・マネジメント・プラットフォーム)です。

Priv TechはCMPの一つである「Trust 360」を提供している企業。同社はPR最大手のベクトルグループと、DMP専業のインティメート・マージャーとの合弁会社として設立されました。同社を牽引する中道氏はそのキャリアの大半を広告とデータに投じてきたと言いますが、それらの業界を取り巻く環境の変化を感じていて、インターネットの再構築が必要ではないかと感じているそうです。

中道大輔
Priv Tech株式会社 代表取締役
株式会社ベクトル Chief Privacy Officer 兼 新規事業開発室 室長
ヤフーでDMP、DSP事業の立ち上げやM&Aに携わった後、ジーニーではプロダクトマネージャーを経験。その後、ソフトバンクの法人事業部門の新規事業戦略室や、CDO室の立ち上げに参画。一貫して広告やデータに関わる事業開発に携わってきた。

データ活用の本質的な変化に向き合え

―――Priv Techはベクトルとインティメート・マージャーの合弁会社だという事ですが、どのような経緯で立ち上がったのでしょうか?

元々はベクトルの長谷川社長が副社長だった時代に共通の知人を介して知り合いまして、これまで携わってきたデータ活用をベクトルで活かして欲しいという事で参画したのが契機です。ベクトルはPR会社というイメージが強いと思いますが、子会社が40社以上ある規模にまで成長していて、非PRの売上が半数を超えています。その中にはB2Cでユーザーデータを扱う事業もあり、そうした事業群をデータで横串をさして連携できないか…という事を考えています。今はPriv Techの代表取締役を務めながら、ベクトルの新規事業開発室 室長とChief Privacy Officerを兼任しています。

同時に、プライバシー重視の潮流や様々な法規制、プラットフォームによるサードパーティクッキー廃止などの動きがあり、データの活用を改めて考えるフェーズにきていると感じています。PR会社という公共性のある事業を行っている立場として、ユーザー側の視点に立ってデータを守るという新しい取り組みも面白いのではないかという事でPriv Techの構想がスタートしました。同時期にインティメート・マージャーの簗島社長とも話す機会があり、一緒にやっていく事で更に大きく絵が描けるのではないかと意気投合して合弁でスタートする事になりました。

―――CMP(コンセント・マネジメント・プラットフォーム)という製品を開発しているそうですが、どのような製品なのでしょうか?

Trust 360」というCMPを開発中で、既にベクトルグループなどで試験導入が始まっています。CMPとは、個人情報保護法の改正で一部求められるようになるクッキーや個人情報利用についてのユーザーからの同意を管理するためのソリューションです。既に欧州のGDPRやカリフォルニア州のCCPAでは同意管理が求められている事から、欧米のウェブサイトでは同意を求めるポップアップを目にする機会が増えたと思います。

Priv Techの「企業サイトにおける、「クッキー利用に関する同意バナー表示」の有無に関する調査」(2020/12)よりMedia Innovation作成。英国はロンドン証券取引所の時価総額上位350社、米国はFortune500、日本はUlletにおける上場企業の各業種別売上高上位100社の約2000社が対象。

改正個人情報保護法でもクッキーと個人情報を紐付けて利用するような場合には同意の取得が求められるようになります。ただ、弊社の調査では日本企業で同意取得のバナーをウェブサイトに掲載しているのは僅か4.75%です。セミナーなどを開催しても機運の高まりは感じますが、実際の利用に踏み切る会社はまだ少ないのが現状です。

―――なるほど。日本企業はどのようなスケジュール感で動いていけば良いものなのでしょうか?

改正個人情報保護法は2020年6月に公布されて2年以内に施行される予定です。ですので、少なくとも来年中にはきちんと同意管理が必要になります。そう考えると意外に時間がない事に気づいて貰えると思います。「Trust 360」の導入だけですとすぐに完了しますが、全社的な個人情報の扱いを総点検して法律に沿った運用がきちんと出来るか確認する必要があるでしょう。

また、このプライバシー保護の潮流は本質的な変化だと思っています。単純に法律を守れば良いというレベルではなく、きちんとユーザーに納得してもらえるクッキーや個人情報の使い方を模索していく必要があると思います。法律を守っていたとしても無茶な使い方に対するレピュテーションリスクは今後どんどん高まっていくと思います。

―――導入に当たって課題となるような点はあるのでしょうか?

プロダクト自体は難しいものではありません。ただ、社内で稟議を通すのは苦労されるケースが多いようです。CMPの導入は、デジタルマーケティングの現場から提案されるパターンと、法務などから提案されるパターンが多いのですが、どちらも費用対効果が測りづらいプロダクトではあるので、もっと経営層や情報責任者のようなトップ層が旗を振らないとまだスムーズな導入が難しいように思っています。

同意管理はマイナスをゼロにするような守りの投資と思われる事が多いので現状は導入に二の足を踏まれるケースが多いのですが、今後は同意管理をきちんとしている事が、信頼できる企業の証の一つになっていき、導入する事で信頼を得るような攻めの投資となっていくのではないかと考えています。

Trust360の主な特徴

広告に迫られる抜本的な変化

―――同意を必要とするようになると、特にクッキーに依存しているデジタル広告はどのような影響を受けると考えられますか?

サードパーティクッキーが利用できなくなる影響がありますね。今のデジタルマーケティングはサードパーティークッキーを利用したリターゲティング(リタゲ)に過度に依存していますので、混乱があるはずです。CMPを使っても同意を取得できるのは半分程度だと考えています。リタゲ以外の選択肢(※1)や、サードパーティクッキーに代わる共通ID(※2)の模索、十分な同意を取るための関係値の構築など、法律の施行までにすべき事は沢山あります。

※1 コンテンツの文脈に沿った広告を配信するコンテキストターゲティングも有力な選択肢の一つ
※2 クッキーを代替するIDとしてThe Trade Deskの「Unified ID 2.0」、インティメート・マージャーの「IM Universal Identifier」などが提案されている

―――広告はかなりの変化を迫られそうですね

そうですね。ただ、どちらかというと、今までがバランスが悪かったと感じています。出稿側がデータを徹底的に集めて経済的なメリットを得る一方で、ユーザーは自分のデータがどのように使われているか知る方法がありませんでした。法律や技術的な変化が後押しして、ユーザーと企業が対等になって、ユーザーが嫌だと思うような使われ方が無くなっていくのは良い事だと思います。

大事なのは双方にメリットがある事だと思います。例えばアマゾンがデータを使う事によって欲しいと思える商品を的確にレコメンドするというのは受け入れられると思います。データを開示する事についてもアマゾンであれば安心だと思って貰えると思います。ですから信頼関係が大事になります。きちんとデータの利用方法や使う項目を開示して、メリットを丁寧に説明していく。同じCMPを使っても企業によって同意される割合は大きく差が出てくると思います。

―――メディアにはどのような変化があるでしょうか?

まずはサードパーティクッキーが使えなくなる事に対して、それを代替するようなソリューションが様々に提案され始めていますので、検討が必要でしょう。例えば共通IDはクッキーと同様の機能を持てると考えられています。これはインティメート・マージャーも開発をしていますし、海外のベンダーからも様々な提案があります。

ビジネス的には広告と平行してサブスクリプションのようなユーザー課金の仕組みが検討されると思います。サブスクリプションはメディアの質が問われます。ただ、広告で戦うとしても精度を上げるには個人情報利用の同意が必要になりますので、きちんとユーザーから同意を受けられるメディアか、という点で、メディアとユーザーの信頼関係が重要になっていくと思っています。きちんと運営されているメディアにとっては有利な状況になると思います。

―――「PRIV」というブラウザの開発もされていますね

まだミニマムに開発しただけですので、ユーザー数は限定的ですが、僕らとしては重要視しているプロダクトです。CMPはユーザーが一定、自分のデータを管理する仕組みですが、ブラウザ自体にデータを持つ事で、企業ではなく、ユーザーが手元で管理する事が可能になります。

さらに、ユーザーが企業へのデータ提供に同意して企業にメリットを与える対価としてインセンティブを得られるような仕組みを考えています。これによって、企業と消費者がより対等な関係を結べるのではないかと思います。

ブラウザは様々な種類がありますが、国産である事にも意味があると思っています。やはり海外産のブラウザは米国や欧州の法律を優先した設計になります。日本の法律や日本のユーザーが求める仕様を実装した選択肢も必要なのではないかと思います。

―――今後、データを取り巻く状況はどのように変化していくと考えられますか?

ユーザーのデータに対する意識は一気にというより、徐々に変化をしていっています。繰り返しになりますが、これまでは企業が一方的にデータを利用していたのを、公平な立場に戻したいと思っています。

メディアを始めとする企業は、改めてお客様との関係を見直す必要があると思います。一方的な行動ができなくなり、今までのビジネスモデルも改める必要もあります。質の高いコンテンツを持つメディアでなくては淘汰されるでしょう。ユーザーと企業が対等な関係を結ぶ、ちょっとしたインターネットの再構築がこれから始まるのではないでしょうか。

2021年1月特集 After Cookie~メディアと広告の未来像

  • もうすぐやってくるAfter Cookieの世界、メディアが直面する課題と好機とは?
  • 広告とユーザーの関係を正常化する大チャンス、Priv Tech中道社長
  • 株式会社インティメート・マージャー 代表取締役社長 簗島亮次氏
  • トレジャーデータ株式会社 Director of Business Development 小森康平氏
  • The Trade Desk Japan 株式会社 Director, Inventory Partnerships 白井好典氏
  • 株式会社ハースト婦人画報社 Hearst Data Studio 前西克哉氏、須藤摩耶氏
  • 株式会社コズレ 取締役サービス開発本部長 小川正樹氏

1月27日にはイベントも開催します!

毎月恒例のオンラインイベントでは今回の特集に登場いただいた皆様をお招きして開催します。

概要
・名称 Media Innovation Meetup #23 After Cookie~メディアと広告の未来像
・日時 2021年1月27日(水) 17:00~18:30(予定)
・料金 1000円 ※MIのライト会員以上のステータスの方は無料
・参加方法 登録すると参加するためのZoom URLがメールですぐに送信されます
・申し込み方法 このページの「申し込み」ボタンから。MIの会員登録、ログインが必要です

当日スケジュール
・17:00 イベント開始、主催者挨拶
・17:05~18:00 各社からAfter Cookieへの取り組みについてのプレゼンテーション
・18:00~18:30 パネルディスカッション、質疑応答

※本イベントは有料イベントですが、Media Innovation Guildのライト会員、プレミアム会員の皆様には無料で参加いただけます。月額980円からご利用いただけますのでこの機会にぜひご登録ください(詳細)。

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Manabu Tsuchimoto
Manabu Tsuchimoto
デジタルメディア大好きな「Media Innovation」の責任者。株式会社イード。1984年山口県生まれ。

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