「ペイウォール」「ニュースレター」「ファーストパーティデータ」などメディア業界の6つのトレンドに関するレポート

パブリッシャー業界の調査を行う英What’s New in Publishingは、業界の6つのトレンドに関するメリットや課題をまとめたレポートを発表しました。同社によると、「コンテンツ分析」「ファーストパーティデータ」「ペイウォール」「eコマース」「ニュースレター」「ポッドキャスト」が事業強化のために重要であるということです。

本記事では、同レポートの概要を紹介していきます。

コンテンツ分析

ロイヤリティの高いオーディエンスを増やし、幅広い収益化の機会を得るには、どのようなコンテンツが効果的であるかを深く理解するためのツールが必要です。

メリット

・コンテンツ分析ツールのダッシュボードでは、新規ユーザーを惹きつけたコンテンツや、登録ユーザーが購読を開始したコンテンツがわかりやすく表示されます。トラフィックデータはマーケティング戦略に役立ちます。
・グループや個人の行動を理解することで、読者の関心を引き、コンバージョン率を高め、顧客維持率の高いコンテンツを提供できます。
・収益性の高い記事やフォーマットをリアルタイムに把握することで、コンテンツの収益化戦略を強化できます。新規購読者を最も多く獲得するコンテンツ、ロイヤリティを高めるコンテンツ、有料会員に転換させるコンテンツを特定し、優先順位をつけられます。

課題

・採用する分析プラットフォームが、コンテンツ戦略強化に必要な情報を提供してくれるかどうかが重要です。たとえば、ソーシャルメディアからの流入を強化したいのであれば、分析プラットフォームはソーシャルメディア分析に強いものでなくてはなりません。
・分析データを最大限に活用するには、まずは簡単にアクセスできるようにしなくてはなりません。ベンダーと協力して、適切な人に適切な情報を提供できるようシステムを設定することに時間を費やしましょう。
・人材は、分析プラットフォームと同様に重要です。少なくとも、分析プラットフォームが提供する情報を、自社のビジネスや目的に照らし合わせて理解できるような人材を育成する必要があります。

ファーストパーティデータ

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サードパーティクッキーが廃止されると、パブリッシャーが直接収集したオーディエンスデータにマーケティング担当者は注目するようになるでしょう。

メリット

・ファーストパーティデータを活用することで、FacebookやGoogle、Appleなどを介する必要がなくなります。これにより、ユーザーのあらゆる行動を理解する能力が高まり、ユーザーのニーズに合ったコンテンツや広告を提供できます。
・アクセンチュアによると、83%のオーディエンスが、よりパーソナライズされた体験を得るために自分のデータを共有することを望んでいます。ファーストパーティデータを活用して、ターゲット層に合わせた適切なコンテンツや広告を提供することで、信頼やロイヤリティ、エンゲージメントを向上させ、パーソナライズされた体験を提供できます。
・ファーストパーティデータは、サードパーティによるターゲティングに取って代わる可能性があり、改善の余地もあります。たとえば、プログラマティック広告でファーストパーティデータを利用することで、効率的に収益化できます。

課題

・ファーストパーティデータを適切に活用するには、データ戦略とデータ管理プラットフォームが必要です。プラットフォームの選択方法は目的によって異なりますが、少なくともすべてのコンテンツからデータを収集し、有用なオーディエンスセグメントを作成できるものでなければなりません。
・ニュースレターの登録者や新規購読者、意義のある行動データを取得するには、オーディエンスを惹きつけて維持するコンテンツが必要です。ブランドの信頼性を維持するためには、データの収集・保存・使用に関する透明性がさらに重要になります。
・サードパーティークッキーが廃止されると、フェイスブックやグーグルが広告エコシステムを独占すると考えられています。小規模のパブリッシャーが勝ち抜くためには、オーディエンスの質やブランドの安全性、強力なコンテンツなどの差別化できるポイントを打ち出していく必要があります。場合によっては、パートナー企業との提携が必要になるかもしれません。

ペイウォール

多くのパブリッシャーが、ペイウォールを設けることで収益化に成功しています。

メリット

・新型コロナウイルスにより、パブリッシャーとして生き残るには複数の収益源が必要であることが一層明確になりました。新聞の露店販売やイベントによる収益がなくなった場合でも、デジタル購読者がいることで収益を確保できます。
・ペイウォールにより購読者との関係性を構築すれば経常収益の基盤となり、新製品を立ち上げるきっかけにもなります。
・購読者からの信頼とロイヤルティが向上すれば、結果的にプレミアム広告やスポンサーにも利益が還元されます。

課題

・ペイウォールの前に一部のコンテンツを置くモデルは多くのパブリッシャーが採用していますが、どれほどのコンテンツを無料で公開するかについてよく考えなくてはなりません。個々のユーザーの行動履歴に基づいてペイウォールを提示するダイナミックペイウォールも注目されていますが、先行投資とリターンを比較検討する必要があります。
・購読を開始するユーザーに対して、定額制で十分なのか、最初は低価格もしくは無料で試せる方が良いのかなどを見極めなくてはなりません。
・ペイウォールを設置したらすぐに顧客維持のための戦略を考える必要があります。戦略にはさまざまなものがありますが、価値を提供し続けることは最低条件です。

eコマース

新型コロナウイルスの影響でeコマースの売上が記録的に増加し、多くのパブリッシャーはブランドロイヤリティを活用して、アフィリエイト報酬を得ています。

メリット

・コードスニペットを追加するだけで、商品レビューページを収益機会に変えられます。すでに商品に特化したコンテンツを制作しているパブリッシャーにとっては、負担は少ないでしょう。
・eコマースにより収益基盤を拡大できます。Skimlinks社によると、英国の上位50社のパブリッシャーは、2020年8月に記事1本あたり平均86ポンド(113.42ドル)の収益を上げていました。
・Ipsos社の調査によると、信頼できるパブリッシャーが提供する商品に関するコンテンツは、購入したい商品を絞り込むのに役立つと大多数の人が考えています。

課題

・ユーザーが公正なビジネスではないとみなす可能性もあるため、支払われた手数料に関して透明性を確保する必要があります。
・eコマースで大きな収益を上げるためには、トラフィック獲得やSEO対策に投資する必要があるでしょう。たとえば、英国のタブロイド紙「The Sun」は、5人のフルタイムスタッフと多くのフリーランススタッフで構成されたチームで「Sun Selects」という商品紹介サイトを運営しています。
・2020年にAmazonのコミッション率が変更され、新型コロナウイルスによりAmazonへの送客数が2倍になったにもかかわらず、収益が前年の半分になったパブリッシャーもありました。コミッション率引き下げによる影響を軽減するために、複数のパートナー企業と提携した方が良いでしょう。

ニュースレター

ニュースレターは、オーディエンスとの関係性を強化する手段として最適です。

メリット

・ニュースレターはRSVP(リソース予約プロトコル)を活用しているため、ユーザーを特定でき、誰が何に興味を持っているかを知ることができます。
・ユーザー登録をしてもらうことで、関連性が高く慎重に選別したコンテンツを配信でき、長期的な関係性を構築するきっかけとなります。
・ニュースレターのインフラを一度整えれば、追加でニュースレターを発行するためのコストは非常に低くなります。ニュースレターのフォーマットは非常に柔軟性があり、エンゲージメントの低いニュースレターの停止も比較的短時間かつ簡単にできます。

課題

・ニュースレターの流行はピークを超えたのではないかという声もありますが、読者が自分に合ったニュースレターを読む時間を確保していることには変わりません。そのため、読者の抱える問題をどのように解決できるかを研究することが重要です。
・読者のために、適切な配信頻度やフォーマット、コンテンツの選定方法を確立する必要があります。
・多くのパブリッシャーはニュースレターをブランド構築のためのものと考えていますが、広告やスポンサー、ニュースレター自体が有料の商品として収益を生み出すことができます。たとえば広告収入を得る場合は、広告の導入方法を決め、広告が目立たないようにニュースレターをデザインする必要があります。

ポッドキャスト

ポッドキャストの視聴者数は着実に増加しており、オーディオへの投資が大きなリターンとして得られる日も近いと考えられています。

メリット

・ネット広告業界団体のIABの調査によると、ブランドや広告代理店はポッドキャストの広告枠の購入を年間にかかる費用の一部と考えており、広告枠の購入率は2018年の24%から2019年には47%に増加しています。
・ポッドキャストに費やす時間は、ウェブページに費やす平均時間よりも短くなる傾向があります。また、ポッドキャストは定期的に配信されるため、顧客ロイヤリティを高められ、購読者の獲得や維持につながります。
・ポッドキャストコンテンツの制作は、比較的低コストで済みます。音声の録音と編集は、既存のコンテンツ制作のワークフローの中に組み込むことも可能で、既存の業務の延長線上にあるものと捉えられるでしょう。

課題

・何百万ものポッドキャストがあり、Apple Podcastの番組数は2021年3月に196万件、エピソード数は4700万件となっています。この業界で勝ち抜くには、価値を提供し、定期的な配信スケジュールを組む必要があります。
・ポッドキャスト配信プラットフォームであるBuzzsproutによると、1エピソードが1週間のうちに3,000回以上視聴されれば、上位1%に入るということです。そのため、視聴者の規模ではなく、エンゲージメントや質について運営チームで話し合う必要があります。
・ポッドキャストの収益化はまだ確立されていないのが現状です。そのため、リード創出やトラフィックドライバーとしてではなく、新たな事業としてポッドキャストを始めましょう。ニュースレターやLP、ソーシャルメディアアカウントなどの関連メディアで宣伝する必要もあります。

今回の調査結果を振り返ると、パブリッシャーがいかにユーザーとの関係を構築できるかがカギといえるでしょう。先日、サードパーティクッキー廃止が2022年から2023年後半まで延長されると報じられましたが、本格的な廃止までにファーストパーティデータの活用方法を確立しておくことも重要といえそ

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デジタルメディアの生き残りを賭けた戦略の中で世界的に注目を集めているサブスクリプション。月額の有料購読をしてもらい、会員IDを軸に読者との長期的な関係を構築。ウェブのコンテンツだけでなく、ポッドキャストやニュースレター、オンライン/オフラインのイベント事業などメディアの立体的なビジネスモデルをサブスクリプションを中核に組み立てていく流れもあります。

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Yuka Hirose
Yuka Hirose
ライター・翻訳者。大学で工学を学び精密機器メーカーで勤務ののち、2020年に独立。群馬県出身。

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