米大手日刊紙「ワシントン・ポスト」は、DX(デジタルトランスフォーメーション)を推し進め、成功している新聞のひとつです。今月初め、リスボンで開催されたテクノロジーカンファレンス Web Summitで登壇したワシントン・ポストのマネージングエディター キャット・ダウンズ・ムルダー氏が、現代のニュースメディアにおけるジャーナリズムとテクノロジーの共存について話しました。
今日のジャーナリストに求められていること
ムルダー氏によれば、ワシントン・ポストには200人以上のソフトウェアエンジニアが在籍しており、同紙のeコマースやサブスクリプションプラットフォームなどあらゆるものに携わっています。驚くべきことに、ソフトウェアエンジニアやプロダクトエンジニアらは、ジャーナリストと隣同士の席に座っているといいます。
ワシントン・ポストのジャーナリストたちは単に記事を書くだけでなく、発案から最終的な読者への届け方まで、記事の「ライフサイクル全体」を理解することが求められており、そのためにはエンジニアやプロダクトチームと常に協力する必要がある、といいます。
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ムルダー氏は以下のように述べました。
「ジャーナリストとして必要なスキルは変わりません。変わったのは、(ジャーナリストとエンジニアの)より深いレイヤーでの協力が求められるようになったことです。」「私たちはコーディングができるジャーナリストを求めているわけではありませんが、ストーリーを見極め、その情報を魅力的な方法でパッケージ化できるジャーナリストを求めています。」
成果の測定方法とソーシャルメディアへの向き合い方
オーディエンスや記事の測定方法について、ムルダー氏は、ワシントン・ポストに属する全員が自分の関わった記事のパフォーマンスにアクセスできるようになっていると説明。そのうえで、数字そのものは目的を達成するための手段であり、他の指標も同様に重要である、としています。PV数だけでなく、記事を公開することによって何を学べたのか、オーディエンスにどのような影響を与えたのか、ということも評価基準として重要です。
ワシントン・ポストの主な収入源は購読料であることから、重要な評価基準には新規ユーザー数やニュースレターへの登録数、アプリのダウンロード数、新規購読数、継続率といった指標も含まれます。
ムルダー氏は、「チームにとっては、実際に動かせる(小さな)指標に集中することがより重要であり、(購読者数などの)大きな指標は四半期や半期の評価に委ねています。」と述べました。
また、ソーシャルメディアプラットフォームについては、大きなリーチを生み出すことができるが、収益を奪ってしまう可能性もある、と分析。プラットフォームとの関わり方を常に監視し、進化させ続ける必要性を強調しています。
「人々は情報に圧倒されている」
最後に、近い将来のメディアについて聞かれたムルダー氏は、「パーソナライゼーションの進化」と「メディアの消費方法の変化」を挙げています。特にメディア消費については、「人々は情報に圧倒されており、10分間座って記事を読めというのは、ますます難しくなっています。」と分析しており、個人の趣向に合わせた手軽なニュース体験を重視しているようです。
ワシントン・ポストは、読者へ新たなメディア体験を提供するべく、さまざまな試みを行っています。より手軽に読めるニュースの提供や、音声によるニュース提供、ファーストパーティデータの活用など、ワシントン・ポストのデジタル戦略には、世界中から注目が集まって