米アルデンが地方紙リー・エンタープライズへ買収提案・・・リー側は”ポイズンピル”で対抗

11月22日、ヘッジファンドのアルデン・グローバル・キャピタルが、多くの地方紙を所有するメディア企業リー・エンタープライズへ向け買収提案を行ったと発表しました。米国内の地方紙は今、ヘッジファンドによる買収が相次ぎ危機的な状況と言われています。今回の買収が成立すれば過半数がヘッジファンドによって支配されることとなり、ジャーナリストだけでなく米国議員も警鐘を鳴らしています。

また11月24日、リー・エンタープライズは買収防衛策”ポイズンピル”を実行することを決定しました。

米地方紙の危機

発行部数の低下、紙面広告の減少により米地方紙は存続の危機に立たされています。そして、そんな危機に追い打ちを与えるようにヘッジファンドによる買収が続いています。2020年の時点でほぼ半数の地方日刊紙が投資グループによって支配されていると伝えられており、ジャーナリストだけでなく米国議員からも懸念が挙がっています。

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アルデンに買収された地方新聞社では、利益を最大化するためにジャーナリストの削減が行われてきました。こうした人件費削減によってファンドは短期的な利益を得ることができますが、長期的な視点で見ると地方紙は衰退し、やがて消滅してしまいます。Axiosによれば、アルデンは地方紙全体が衰退産業であることを理解した上でこうした行動をとっていると言います。

アルデンによる買収提案

このような状況の中、米ヘッジファンドのアルデンは地方紙リー・エンタープライズへ買収提案を行いました。アルデンは既に、「シカゴ・トリビューン」、「デンバー・ポスト」などの有力地方紙を多数所有しており、2020年の時点で米新聞社の保有数第2位となっていました。保有数はトリビューン社を買収したこともあり、207社でした。

一方のリー・エンタープライズも多数の地方紙を所持しており、保有数ではアルデンに次ぐ第3位です。出版社である同社がアルデンによって買収された場合、米国の地方紙の過半数がファンドによって支配され、保有数1位のガネットと二大勢力構造を形成することとなります。

買収においてアルデンは、1株あたりの買取価格を市場終値の130%で提示しつつ、全て現金払いが可能としています。また、約4週間で買収作業は完了すると見通しを示しています。

リー・エンタープライズの反撃

アルデンによる買収提案発表後、リー・エンタープライズの株価は26%も上昇しており、投資家は買収に期待を寄せているようです。しかしその一方、改めて報道関係者の間に懸念を広めることとなりました。さらに、独占禁止法の専門家がAxiosに語ったところによると、今回の買収はアルデンの持つ新聞社と競合関係にないため、制限される可能性は低いと言います。

こうした中、11月24日にリー社の取締役会は買収防衛策であるライツプラン(「ポイズンピル」とも呼ばれる)の適用を決定しました。ライツプランとは、既存の株主に対して有利な条件で株式を取得できる権利を発行し、発行株式数を増加させることで、買収側に余分なコストを負担させる敵対的買収防衛策のひとつです。

同社が今回発表したライツプランでは、いずれかの株主が10%以上の株式を取得したときに行使可能となります。行使後は、既存の株主は50%の割引価格で株式取得ができるほか、所持している1株につき、もう1株を追加で取得できる権利が得られます。

悪名高いアルデンと対決することになったリー社の行く末はどうなるのでしょうか。注目が集ま

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