メタバースの時代はもう来ている―ゲームから始まる大いなる可能性・・・Thirdverse新CSO/チーフエヴァンジェリストに聞く

俄に世間の注目を集め始めたWeb3。ブロックチェーンが生み出す新たなコミュニティの先にはメタバース(現実世界とは異なるバーチャル空間)があると指摘する向きも多くあります。一方で、メタへと社名を変更したフェイスブックが傘下に収めたOculusのように、ゲームの延長…

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俄に世間の注目を集め始めたWeb3。ブロックチェーンが生み出す新たなコミュニティの先にはメタバース(現実世界とは異なるバーチャル空間)があると指摘する向きも多くあります。一方で、メタへと社名を変更したフェイスブックが傘下に収めたOculusのように、ゲームの延長線からメタバースを考えてきたプレイヤーもいます。いま、「メタバース」という言葉はその両方を包含して期待を高めています。

2022年の重要キーワードとなりそうなメタバース。今回は、ゲームやVRの側からメタバースを考えてきた、株式会社Thirdverseの取締役CSO/チーフエヴァンジェリストの新清士氏にお話を聞きました。新氏はゲーム会社勤務を経てジャーナリストとして活躍した後、自身でVRスタートアップ、よむネコを創業(現Thirdverse)。昨年にはgumi創業者の國光宏尚氏を代表に迎え、総額20億円もの資金調達を実現しています。

新清士
株式会社Thirdverse 取締役CSO/チーフエヴァンジェリスト
慶応義塾大学商学部及び環境情報学部卒。ゲーム会社勤務、ゲームジャーナリストを経て、Thirdverseの前身となる株式会社よむネコを設立。デジタルハリウッド大学大学院准教授。Tokyo XR Startups取締役。 著書に『VRビジネスの衝撃「仮想世界」が巨大マネーを生む』(NHK出版)。

―――ジャーナリストとして活躍された後にVRスタートアップを起業という異色の経歴ですが、VRにはどういった魅力を感じたのでしょうか?

新: もともとVRには否定派でした(笑)。VR酔いの問題もありますし、デバイスも複雑で普及しないだろうという読みがありました。幾つもデモを体験しても、その考えは変わらなかったのですが、GOROmanさん(近藤義仁氏、VRクリエイターとして著名)の「Miku Miku Akushu」(初音ミクとVR空間で握手できるというデモ)に触れて、本当に現実に存在しない没入した体験として感じられるという事に衝撃を受けました。

それで居ても立っても居られず、もともとゲーム開発に携わっていたということもあり、Oculus Rift DK2を自分で買って、VRのデモを自分でも作って遊ぶようになりました。ちょうどその頃、Oculus Connectという開発者向けイベントが米国であり、それを取材して、報告会を開いたのですが、そこに國光が来てくれて、その後で食事もしました。ちょうど米国ではVRのスタートアップを支援する仕組みが出来てきている、というような話をしたのが、その後に繋がります。

―――gumiが2015年に立ち上げたTokyo XR Startupsというインキュベーションプログラムで新さんはサポート役でありながら、自分も参加するというのを聞いて驚いた記憶があります(笑)

Tokyo XR Startupsで、よむネコはVR脱出ゲームを作っていたのですが、プログラムに参加したスタートアップには面白いメンバーが沢山参加していました。トータルで20社以上の起業への投資が行われましたが、後にVTuberプロダクションで成功するカバーの谷郷元昭氏やVRのライブプラットフォームを立ち上げるVARKの加藤卓也氏などもそこにいました。思ったよりもVRはハードの普及が遅れたため、厳しい時代を過ごしましたが、そこで生まれた技術がVTuberなど周辺領域で花開いた、という事が色々とあったように思います。

よむネコ自身は『エニグマスフィア』というVR脱出ゲームを作りましたが、アーケードゲームとして梅田ジョイポリスに置いてもらって、半年間で約1万人に体験してもらう事が出来ました。そうした成果に評価をいただき、本格的にgumiのグループ会社に入り、メタバースの世界を作る事を最終ゴールとして据えて、その過程としてのMMORPGの開発、さらにその手前のゲームプレイを想定したマルチプレイを実現した上での剣劇アクションの『ソード・オブ・ガルガンチュア』の開発に進みました。

―――メタバースというキーワードは当初からあったのですね

『ソード・オブ・ガルガンチュア』の企画書にもメタバースを目指すということは書かれていました。現在も「ソードアート・オンライン」か「レディ・プレイヤー1」のような世界を作るというのは会社の基本的な思想として常に意識されています。もともとOculusでVRに触れた時から、バーチャル空間に没入する楽しさは、一人でも楽しいけれど、複数人でインタラクションすると更に刺激的なものになると感じていました。

『エニグマスフィア』も『ソード・オブ・ガルガンチュア』もコアとなる体験はソーシャルVRで、一緒に同じ空間で遊ぶというものです。『エニグマスフィア』は2人、『ソード・オブ・ガルガンチュア』は4人ですが、これは技術的な制約が大きく、将来的には参加人数を広げることができるようになると自然とメタバースになっていくと思っています。現時点では『VRChat』のようなものは大人数で処理できますが、ゲームを複数人で実現することは単にチャットシステムを開発するのよりは難易度が高いです。ただ、これは処理性能の問題なのでいずれ解消されてくると思っています。

VRの剣劇アクションとして世界的なヒットとなった『ソード・オブ・ガルガンチュア』

―――Thirdverseとしては当面はVRゲームの開発にフォーカスしていくのでしょうか?

まずは世界で有数のVRゲームスタジオを目指すというのが当面の目標です。既に複数の開発ラインがあり、年内に2タイトルを発売予定です。いま日米で50名を超える規模になりましたが、サイズとしても世界でも指折りになってきたと思います。『ソード・オブ・ガルガンチュア』は開発開始から約5年が経ち、VRならではの開発ノウハウはかなり蓄積できました。これも少々では追いつかれないリードがあると思います。VRのハードはまだ世界でMeta Quest 2 で1200万台程度の普及ですが、今後はPlayStation VR 2も登場します。また、いまのVR開発の規模感は相対的にコンシューマ機向けゲームほどの開発費用はかからないので1200万台の市場でも十分にビジネスになってきています。


《Manabu Tsuchimoto》

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Manabu Tsuchimoto

デジタルメディア大好きな「Media Innovation」の責任者。株式会社イード。1984年山口県生まれ。2000年に個人でゲームメディアを立ち上げ、その後売却。いまはイードでデジタルメディアの業務全般に携わっています。

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