英国でプラットフォーマーにメディアとの支払い交渉を義務付ける機関が発足予定

1月29日、英国政府は、グーグルやフェイスブックなどがニュースコンテンツを使用する際に大元のメディア企業との支払い交渉を義務付ける法律を導入することを発表しました。新たに規制を担当するDMUと呼ばれる機関も設立されます。メディア企業のコンテンツを利用し、広…

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<p>Photo by Jack Taylor/Getty Images</p>

1月29日、英国政府は、グーグルやフェイスブックなどがニュースコンテンツを使用する際に大元のメディア企業との支払い交渉を義務付ける法律を導入することを発表しました。新たに規制を担当するDMUと呼ばれる機関も設立されます。メディア企業のコンテンツを利用し、広告収入を上げる一方、ほとんど還元してこなかったプラットフォーマーを締め付ける形があります。今回の法律はオーストラリアのシステムを参考にしたものであり、議会の時間が許す限りすぐに導入予定であることも述べられています。

プラットフォーマーによる広告収入の吸い上げ

英国における2019年のデジタル広告費用140億ポンドのうち、グーグルやフェイスブックが約5分の1を占めており、国内の新聞社は4%未満しかありません。さらに、例えばグーグルは検索広告の掲載費用を、次に高いBingの30~40%も多く請求しており、デジタル広告市場で莫大な収益を上げています。

このプラットフォーマーによる独占の裏には、複数のメディア企業のニュースコンテンツを自社サイトに集約させてユーザーを惹きつける一方、メディア企業への還元を行って来なかったことがあります。グーグルは「Google News Showcase」というサービスを発表し、メディア企業へ1,000億円以上を支払うことを決めたほか、フェイスブックは同サービスへの掲載と引き換えに数千万ポンドを支払うなど譲歩を始めています。しかし、オーストラリアでは2021年の2月にメディア企業への支払いを義務付ける法律が可決されました。

英国政府によるプラットフォーマーへの締め付け

これに続いたのが英国政府で、オーストラリアのシステムを参考にして新たな法律と規制を担当する新機関設立を発表しました。新たに施行予定のこの法律では、グーグルなどのプラットフォーマーはメディア企業のコンテンツを使用する際に支払い交渉が義務付けられることとなります。さらに、交渉が決裂した場合には独立した仲裁人が適正価格を設定することにもなります。

この新しい規制を担当するのがDigital Markets Unit(DMU)で、CMA(競争・市場庁)の内部に設立されることとなりました。この機関はメディア企業とプラットフォーマーの関係性を公正なものにすることに尽力し、強力な権限が付与されるとのことです。

上記に加えて、DMUはグーグルなどによる検索エンジンのアルゴリズムに対しても調査を行うことも述べられています。これは、過去に検索結果が左寄りのニュースメディアを優先するよう操作された、と信じられている背景があります。

ニュースメディア協会も歓迎

今回の発表を受け、英国のニュースメディア協会(NMA)が歓迎の声明を出しています。同協会の最高責任者であるOwen Meredith氏は、「NMWは一貫してDMUを法的な位置付けにするような法律を早急に施行するよう訴えてきました」と述べ、「プラットフォーマーはニュースコンテンツを制作するメディア企業から広告収入を吸い上げる一方、全く還元をしてこなかった」とも言います。

この法律の施行は議会の時間が許す限り早く行われるとのことです。グーグルやフェイスブックの反応はどのようなものになるのか注目が集まります。

《Yuichi Tateishi》

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