紙雑誌からあらゆる媒体へ飛躍・・・週刊文春のコンテンツトランスフォーメーション【Media Growth Summit 2022】

Media Innovationでは、世界中のパブリッシャーを支援するPiano JAPAN株式会社との共催で、5月29日にメディアのグロースをテーマにしたオンラインイベント「Media Growth Summit 2022」を開催しました。株式会社文藝春秋「週刊文春」編集部次長・電子版コンテンツディレ…

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紙雑誌からあらゆる媒体へ飛躍・・・週刊文春のコンテンツトランスフォーメーション【Media Growth Summit 2022】
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Media Innovationでは、世界中のパブリッシャーを支援するPiano JAPAN株式会社との共催で、5月29日にメディアのグロースをテーマにしたオンラインイベント「Media Growth Summit 2022」を開催しました。株式会社文藝春秋「週刊文春」編集部次長・電子版コンテンツディレクターの村井弦氏は、「『週刊文春』の“全方位”デジタル・コンテンツ戦略と題して、多様な手段によるコンテンツのマネタイズを目指す同社の戦略を紹介しました。

週刊文春は1959年創刊の総合週刊誌で、近年では芸能界の性加害告発キャンペーンを始めとした、「文春砲」とも呼ばれるスクープを連発することで世間に認知されています。週刊文春における戦略の根幹をなすのは、「CX=コンテンツトランスフォーメーション」であると村井氏は述べました。

CXは、紙の雑誌を発行するためにコンテンツを制作するのではなく、個々のコンテンツを切り分けて本誌、デジタル、書籍などコンテンツの特性に適したあらゆるフォーマットを用いてマネタイズし、これまで雑誌で得ていた収益を確保すること目指しています。とくに、紙媒体としての雑誌の収益が減少していくことは避けられない以上、デジタルを雑誌販売のためのPR媒体と位置付けコンテンツを出し惜しみするのではなく、デジタルそのものでマネタイズしていくことが必須であるとも村井氏は指摘しました。

また、週刊文春のCXでは単にデジタル向きのコンテンツと振り分けるのではなく、デジタルの中でも、サブスクリプション型の「週刊文春電子版」、無料広告型の「文春オンライン」、LINEを通した記事単品での課金、ヤフーなどのニュースプラットフォームへのコンテンツ販売などその特性に応じて展開しています。例えば、若年層の多い文春オンラインでは芸能関係の記事、中年層の多い「週刊文春電子版」では政治家のスクープや調査報道といった硬派な記事などです。

様々な媒体でコンテンツを展開している週刊文春ですが、多くのメディアが挑戦しているように、サブスクリプションにも注力しています。「週刊文春電子版」のサブスクを伸ばすうえで、強力な集客手段となるのがメールマガジンです。週刊誌の特性上、気になったスクープ記事を読み終わったら有料会員を解約するユーザーも多いため、無料のメルマガを通して再度契約するようリーチできるほか、SNS等で拡散された有料記事にアクセスしたユーザーにメルマガ登録を促すことで、有料購読につなげています。メルマガでは記事のラインナップの他、翌日公開する記事の予告を流すことで、中吊り広告のような広告効果も担っているそうです。

更に、既出の事をパッケージングした無料公開の特集や、話題の記事を書いた記者の音声番組、編集長の電子版限定コラムなど週刊文春ならではの編集経験を生かした企画も特徴です。既出記事を再度話題のテーマに合わせてパッケージングすることで、バラバラに読まれて終わりではなく深堀して読んでもらえるほか、有料記事も組み込むことでCVに繋げているといいます。そうした「週刊文春にしかできない」コンテンツへの自信は、価格政策にも表れています。週刊文春電子版では、月額2200円と紙版と同じ価格で展開しています。デジタルでは少々強気な設定にも思えますが、一週間無料の試読以外は値引きキャンペーンを打たず、高くてもハイクオリティな記事を読めるサイトとして差別化する方針だそうです。

デジタルへの進出によりコンテンツ展開が多様化した週刊文春ですが、デジタル化はコンテンツ展開に留まりません。文藝春秋社では以前からWEBディレクターやエンジニアを社内に抱えていましたが、週刊文春のデジタルでの成功要因をこうした内製化にあると分析した同社は、今年三月に「Bunshun Tech ZERO」を設立しました。新会社の設立によりテック人材を継続的に確保していくほか、編集者とエンジニアの協働によるコンテンツ制作・展開を強めていきたいそうです。また、取材においても、「文春リークス」を立ち上げ、読者から直接動画や音声ファイルの提供を募ることで、デジタルによる効率化がなされているといいます。村井氏は、六月には課金システムを含め週刊文春電子版の大幅なリニューアルを行うとして、サブスクリプションを強化していく決意を述べました。

以前よりワイドショーやSNSでは、週刊文春のスクープが「文春砲」と呼ばれ、芸能人の不倫から、政治家の買収に至るまで世間を賑わせてきました。こうした強烈なブランドイメージは、本イベントの基調講演で下山氏が指摘した「プラットフォームに配信することで媒体のブランドが限りなく希釈され、読者が媒体をイメージできなくなる」弊害を乗り越えてきたのではないでしょうか。そうした強烈なブランドと良質なコンテンツを、内製化されたエンジニアと編集者が協働しきめ細やかに読者に届けることで、今日の成功があるのではないかと感じました。

《Taketo Yoshida》

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Taketo Yoshida

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Media Innovation編集部 ジャーナリズムとニュースメディアのマネタイズに興味あり。

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