グーグルとWordpressがタッグを組んだとして話題になっている新しいニュースメディア向けプラットフォーム「Newspack by WordPress.com」(以下、単にNewspackとする)。一体どんな物なのでしょうか、詳しくお伝えします。
目次
開発にはグーグル他から2.4億円を調達
「Newspack」のプロジェクトを主導するのは、Automattic社。Wordpressはオープンソースで開発が進められているプロジェクトですが、Automattic社は積極的に開発に取り組んでいるプレイヤーの一社であり、Wordpressにホスティング等のサービスを付加した「Wordpress.com」というSaaSとして提供しています。ちなみに、創業者のMatt Mullenweg氏はWordpressプロジェクトの創始者でもあります。
グーグルとタッグを組んだと言われるのは、「Newspack」への資金拠出者にグーグルがニュースメディアやジャーナリズムの発展のためのプロジェクトを支援するために設立した、Google News Initiativeから資金が提供されているためです。ただし「Newspack」にはグーグルだけでなく、以下の団体から資金が提供されているようです。
- Google News Initiative(グーグル) 120万ドル
- The Lenfest Institute for Journalism 40万ドル
- ConsenSys(ブロックチェーン企業) 35万ドル
- The John S. and James L. Knight Foundation 25万ドル
- そのほか5つの団体から20万ドルが拠出される見込み
合計で220万ドル(約2.4億円)となります。
ターゲットは小~中規模のローカルメディア
「Newspack」がターゲットとするのは「small- and medium-sized news organization」(小~中規模のメディア)です。
さらに発表文では「many local news organizations struggling to find sustainable models for journalism」(多くのローカルニュースメディアがジャーナリズムを実現するための継続的なモデル構築に苦労している)とした上で、米国デンバー、フィラデルフィア、ピッツバーグでメディアを展開するSpirite Mediaや、サンディエゴの「Voice of SanDiego」ともパートナーを組むということで、苦境に喘ぐ地域の新聞社のデジタル化を支援することが念頭にあるようです。
ちなみに、Wordpress.comの「VIP」バージョンは、「CNN」「TIME」「Variety」「Quartz」 など世界を代表するようなメディアにも採用されています。「Newspack」はまた異なるターゲットのようです。
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広告配信やサブスクリプションなど気になる機能は?
「Newspack」の特徴について、AutomatticのKinsey Wilson社長はMarketingLandに対して、「広告システムや、News Revenue Hubを含む複数のサブスクリプションやメンバーシップシステムとの独創的な統合を計画しています。これらが最初から統合されていて、すぐに理解して活用できる、この状態を目指しています」と述べています。
同じ記事では、グーグルによるグーグル製品(広告など)との連携のサポートも行われると書かれていています。
ちなみに、News Revenue Hubは、Salesforce(顧客管理)、MailChimp(メールマーケティング)、Stripe(決済)を連携させる仕組み、さらにWordpressでのリード獲得、寄付獲得、A/Bテストなどのプラグインをパッケージとして提供し、メディア用のサブスクリプションを支援しているサービスです。料金は月額500ドル~とのことです(Salesforce)。
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前述の「Voice of SanDiego」の元COOが立ち上げたもので、非営利団体でサービス収入や様々な団体からの補助金で運営されており、「The Intercept」、「Civil Beat」などが採用しているようです。
「Newspack」のプロジェクトに参加するには
「Newspack」は2019年7月下旬からβ版のサービスを開始することを目指していて、開発期間(2020年1月)までは無償で、その後は月額1000~2000ドルの料金が適用されるとのこと。
2月1日まで、参加申し込みが受付中です。注意事項として以下の事が挙げられています。
- 様々な組織形態、技術、ビジネスアプローチ、ユーザー、地域でテストを行いたい。
- コンテンツ・収益の両面で成功している、あるいはスタートアップの場合は強力なプランがあるものが検討される。また、他のメディア企業に適用できるモデルを持つものや、技術的な課題に直面しているものも。
- 既にWordpressを利用しているメディアが優先される。あるいは簡単に移行が可能なものは例外が認められる場合がある。
- メディアの開発と成長に対する明確なアプローチを説明する必要がある。
- メディアは特定の地域やエリアに関するニュースや情報を提供するものでなくてはならない。
- オリジナルコンテンツを制作しているメディアであること。
- 現時点では映像や音声をメインとしたものはサポートされない。
- 既にメディアとして提供している実績と、少なくとも12ヶ月間の継続運用を確実にするための予算が確保できること。
- 隔週のビデオ会議で進捗を共有すること。
- 最初の6ヶ月間でメディアを「Newspack」に移行すること。
申し込みはこちらから。
CMSのスタンダードとして広く世界中で利用されているWordpress。昨今、特に欧米のパブリッシャーが最も力を注いでいる領域とされるサブスクリプションモデルが統合されることで、メディアとして更に強力な選択肢となりそうです。どのようなものに出来上がるのか、心待ちにしたいと思います。
ちなみにAutomatticでこのプロジェクトを主導する社長のKinsey Wilson氏は、米国の公共放送「ナショナル・パブリック・ラジオ」(NPR)や「ニューヨーク・タイムズ」のデジタルを統括したメディア業界での経験豊富な人物。その観点からもこのプロジェクトの今後が楽しみです。
Newspack by WordPress.com
https://newspack.blog/
Announcing Newspack by WordPress.com — A New Publishing Solution for News Organizations
https://en.blog.wordpress.com/2019/01/14/newspack-by-wordpress-com/