MIの6月特集「メディアのサブスクリプション戦略2020」では、メディアの新しいビジネスモデルとして世界的にチャレンジが続くサブスクリプションについて取り上げます。6月30日(火)には7社がサブスクを語るオンラインセミナーも開催。サブスクに挑戦するメディアの話を直接聞けるチャンスです。ぜひご参加ください。
ミレニアル世代をターゲットとしたビジネスメディアとして世界で支持されている、アクセル・シュプリンガー傘下のInsider, Inc.が運営する「Business Insider」(ビジネスインサイダー)。日本では株式会社メディアジーンが同社からのライセンスを受けて「Business Insider Japan」として2017年1月より運営を開始しています。
本国でもサブスクリプションが立ち上がっていて、世界の成功事例の一つとして数えられていますが、国内でも「BI PRIME」という名称で2020年1月に正式ローンチしました。本プロジェクトを担当するメディアジーンの常盤亜由子氏に、立ち上げまでの経緯や「BI PRIME」が目指す世界について聞きました。
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―――メディアジーンに加わった当初から、「BI PRIME」の立ち上げが主なご担当だったそうですね。これまでの経歴を教えていただけますか?
出版社で書籍の編集を長くやってきました。特にビジネス書が中心です。3社目がダイヤモンド社だったのですが、たまたま入社したタイミングと前後して、Amazonが日本でもKindleマーケットがローンチするなど“電子書籍元年”と重なったんです。それで社内でも電子書籍のプロジェクトが立ち上がり、私もそのメンバーとしてデジタルに関わることになりました。
その経験からデジタルの可能性を感じて、もっと勉強したいと思い、NewsPicksに転職しました。入社するにあたって言われたのは、「NewsPicksはまだフロー型のコンテンツしか取り組めていないけれど、いずれストック型のコンテンツもやっていきたい。そこを手伝って欲しい」ということ。コンテンツとUI/UXで、どう読者に届けられるものを作るか、ということをNewsPicksでは取り組みました。
その後、別の業界で一社経験したのですが、やはり自分のドメインは編集だと感じ、改めてデジタルの可能性を追求したいと転職することにしました。そこでエントリーしたのが、読者としても世界観に共感していたBusiness Insider Japanだったんです。ただ、その時はまさかBusiness Insider Japanがサブスクリプションをやろうとしているとは全く知りませんでした。ダメ元で面接に臨んだら、「実はサブスクリプションプロジェクトの構想はあるのだけど、なかなか取り組めてなくて……」という話を初めて聞き、その後何度かやりとりを重ねて、昨年9月に加わることになりました。
―――「BI PRIME」の企画はどのように立ち上がっていったのでしょうか?
入った時はまだ、具体的な計画は何もない状態でした。入社初日に人事部のオリエンテーションを終えたらもう夕方で、編集部に軽く挨拶したら子どものお迎えに行かなきゃ……と考えていたら、浜田(浜田敬子氏、現・統括編集長)に捕まりまして(笑)。20分くらい怒涛の勢いで構想を聞かされて、必死にメモを取ったのを覚えています。コンセプト以外の中身は何も決まっていなかったんですけど、サービス開始時期だけは2020年2月と決まっていて。浜田の構想を受けて企画を練り上げて、制作体制を整えて、エンジニアなど社内調整も含めて、あっという間に時間が過ぎて行きました。
―――本国でもサブスクリプションサービスは展開されていますが、どのような関係なのでしょうか?
Business Insiderは米国をはじめ世界中で14のエディションが展開されています。その中で、サブスクリプションを実施しているのは米国と日本だけです。
各エディションはもちろん連携もありますが、独立性は高く、独自の記事や企画も自由に出来る関係です。BI PRIMEについても同様です。実際にはBI PRIMEのオリジナル記事は、日本で制作したオリジナル記事と、各国で作られた選りすぐりの記事を翻訳したもので構成されています。
―――それでは、どういったコンセプトで企画されていったのでしょうか?
もともとBusiness Insider Japanのミッションは、次の時代をつくるミレニアル世代のビジネスパーソンに役立つ情報やインサイトを届ける、というものです。
私たちのメディアに集ってくれる読者の方の特徴は、他者も自分自身も繁栄する「プラスサムゲーム」を志向している人たち。他社を犠牲にして自社の繁栄を目指すというゼロサムゲーム志向は、Business Insider的ではないんだろうと思います。
私たちの読者を表すキーワードとしては、Business Insiderが使っている「Better Capitalism」(より良い資本主義)、あるいはエシカル消費、SGDs、サーキュラー・エコノミーなどでしょうか。行き過ぎた資本主義を正すために、何ミリかでも社会を良くしていくために、自分自身が培ってきたスキルやノウハウで貢献したいという志向の強い人たちがBusiness Insider Japanを支持してくださっています。
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