【メディア企業徹底考察 #111】大規模増資で潮目が変わった楽天、モバイル戦略の転換が功を奏すか?

楽天グループ株式会社が国内外の公募増資と第三者割当増資を行い、最大で3,300億円あまりの資金を調達すると発表しました。 楽天はモバイルへの先行投資に充当した、巨額の社債やコマーシャル・ペーパーの償還期限が迫っています。2023年6月に期限を迎える100億円の社債…

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楽天グループ株式会社が国内外の公募増資と第三者割当増資を行い、最大で3,300億円あまりの資金を調達すると発表しました。

楽天はモバイルへの先行投資に充当した、巨額の社債やコマーシャル・ペーパーの償還期限が迫っています。2023年6月に期限を迎える100億円の社債、同年12月に初回任意償還日が到来する680億円の劣後債及び540億円のコマーシャル・ペーパーの返済の目処が立ちました。更に2,000億円あまりをモバイル事業に追加投資する計画です。

楽天は2023年5月11日にKDDIとローミング協定を締結したとも発表しました。これは何を意味するのでしょうか?

先は長い借金完済への道

楽天は国内で2億3,400万株、海外で2億3,400万株を新規で発行する他、サイバーエージェント、三木谷氏一族の資産管理会社である三木谷興産・スピリット、東急を割当先とする7,800万株あまりの第三者割当増資も実施。公募増資で2,900億円、第三者割当増資で420億円を調達します。

今回の増資でひときわ目を惹くのは、サイバーエージェントがその一部(100億円分)を引き受けていること。かつて上場したばかりのサイバーエージェントは、インターネットバブルの崩壊で株価の下落に苦しみ、村上ファンドに株を買い進められるという憂き目にあいました。サイバーエージェントの積みあがった利益剰余金を吐き出して、株主に還元する有償減資を提案されるなど、激しい圧力に苦しみました。

それを救ったのが、楽天の三木谷氏。サイバーエージェントに10億円を出資して10%の株式を取得します。安定株主の比率を高めたサイバーエージェントは難を逃れることができました。このエピソードは広く知られています。

サイバーエージェントの出資は、その恩返しをしたという意味が多分に込められているでしょう。

楽天は今回の大規模調達で借金の返済の目処をつけましたが、実はまだまだ残っています。2024年11月には2,000億円あまりのドル建無担保社債の償還期限を迎えます。この債券は利回りが10%を超えており、楽天にとっては金利負担が重いものです。すでに格付けは投機的水準のジャンク債レベルで、借り換えをするとなると金利が急騰するのは避けられないでしょう。

楽天は更なる資金繰りに奔走しています。5月12日には保有する西友ホールディングスの全株を投資ファンドのKKRに220億円で売却すると発表しました。2020年11月にウォルマートから西友の株式20%を取得していましたが、早くも譲渡します。

2023年4月21日に新規上場した楽天銀行に続き、楽天証券のIPOも準備中です。

楽天はグルメメディアのぐるなびや、住宅情報サイトHOME’SのLIFULLなどを持分法適用関連会社化しています。これらの会社とのシナジー効果は今のところ限定的で、グループ会社の見直しやスリム化が進むかもしれません。

KDDIとのローミング契約で短期的な投資額を抑制


《不破聡》

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