おはようございます。Media Innovationの土本です。今週の「Media Innovation Newsletter」をお届けします。
メディアの未来を一緒に考えるMedia Innovation Guildの会員向けのニュースレター「Media Innovation Newsletter」 では毎週、ここでしか読めないメディア業界の注目トピックスの解説や、人気記事を紹介していきます。ウェブでの閲覧やバックナンバーはこちらから。
会員限定のコミュニティ「イノベーターズギルド」を開設しました。Discordにて運営しています、こちらからご参加ください。
★アプリも提供中です →AppStore/Google Play
目次
今週のテーマ解説 本命のTwitterキラー遂に登場、Instagramをベースにしたメタの「Project 92」
イーロン・マスク氏の買収以来、迷走を続けるTwitterに対して懸念の声が強まっています。一方で、インフラにまで成長した同サービスを捨て去るのも現実的な対抗馬がありませんでした。マストトンのような非中央集権型のツールも注目されたものの、迫力不足でした。
このような状況でTwitterの後継ポジションを虎視眈々と狙っているのがFacebookやInstagramを運営するメタです。同社は最近の社員向けミーティングで開発中の「Project 92」を披露したそうです。これはInstagramをベースにしたTwitterキラーと言われるプロダクトです(The Verge)。

最高製品責任者のクリス・コックス氏は「Twitterへの対応」として紹介した新アプリはコードネーム「Project 92」と呼ばれていますが、正式には「Threads」になる可能性が囁かれています。Instagramをベースに、アカウント連携ですぐに利用開始できます。マストドンなどが採用する分散型ソーシャルプロトコルの「ActivityPub」に対応しているため、フォロワーを別のアプリに移行することもできるそうです。
コックス氏は「安全性、使いやすさ、信頼性」がアプリの目標であると述べて、こうした特徴がクリエイターを呼び込むことに繋がるとしました。既にDJスライムなどの著名人がアプリを使うことに同意していて、オプラやダライ・ラマなどと協議をしているということです。
このプロジェクトはInstagramの責任者であるアダム・モセリ氏がリードしているということです。
分散型への転換点となるか?
新しいアプリはどうなっていくでしょうか?Twitterのユーザー数は3.5億、対してInstagramは10億以上です。こうした規模を活かすことができれば、一夜にして巨大なプラットフォームが誕生することも夢ではありません。
また、分散型のプラットフォームという点も見逃せません。新アプリは「ActivityPub」をサポートし、マストドンなどのサーバーと繋がります。マストドンは分散型ソーシャルメディアと呼ばれ、誰でもサーバーを構築して、自分のソーシャルメディアを構築できるツールです。世界で10億以上がアカウントを保有するInstagramとの連携で、10億人が分散型のソーシャルメディアに流れ込むとすると大きな転換点になる可能性があります。
テック業界を報道するThe Informationは3月、これまでウォールドガーデンの閉じた世界を築き上げて、非常に収益源の高い世界を構築したメタにとって「前代未聞の取り組みだ」と指摘しました。また、この新アプリが成功すれば、FacebookやInstagramでも分散型の世界を導入し、何かと批判を浴びるモデレーションやルール構築で、複数の異なる世界観を持ったサーバーを作っていくこともできるのではないかと述べています。
「ActivityPub」で繋がる世界はFediverseと呼ばれていて、直近ではTumblrやFlipboardといったメディアも参加を表明しています。
収益化の方法はあるのか?
ウォールドガーデンと対称的な分散型のソーシャルメディアになるとすると、気になるのは収益化の方法です。こうした形態で十分な収益を上げる方法は未だ確立されていません。前述のThe Informationは、ブロックチェーンと組み合わせて、トークンやNFTを収益源にする方法が模索されたものの、昨今の市場低迷もあり、上手くいってないと伝えています。
広告で巨大なビジネスを構築してきたメタが、この観点でどのような回答を用意するのか興味深いですね。また、この実験が上手く行けば、FacebookやInstagramの分散化も現実味を帯びてくるかもしれません。
◆ ◆ ◆
サービスの開始時期は未定ながら、できるだけ早い時期に登場させたい意向です。メディアにとっても新しいプラットフォームの登場は歓迎したいところです。また、こうした分散型の取り組みにメディアとして積極的に参加していくこともアプローチの一つとして検討したいところです。
今週の人気記事から メディアジーンが台湾TNLと経営統合、米ナスダックに上場へ
人気ランキングでは上位ではありませんでしたが、今週はこのニュースでしょう。「GIZMODO JAPAN」「DIGIDAY日本版」「Business Insider Japan」などを運営するメディアジーンが、台湾のThe News Lensグループと経営統合し、さらにSPACを活用して米国のナスダック証券取引所に上場することが明らかになりました。どちらもバーティカルメディアを運営する企業ですが、日本と台湾企業の統合で、アジア圏で強い影響力を持つメディアグループとなります。今後どのような展開があるのか注目です。続きを読む
1.国内外のポッドキャスト利用実態とメディア企業が音声に参入することの可能性【音声メディア最前線#02】
3.「LINE広告」、新たに「LINEオープンチャット」での広告配信を開始
4.電子版「神戸新聞NEXT」が大幅リニューアル 主要な記事が読み放題の「バリューコース」を新設
5.京急羽田空港「羽田サイネージラック」がLIVE BOARDマーケットプレイスに接続
6.SEOライターのノウハウとChatGPTを融合した効果の出やすい記事生成エンジンの実運用を開始
7.メディアジーンが台湾メディア企業TNLと経営統合 米SPACとナスダック上場にも合意
8.シーオーピーなど3社が「WithDriveトラック広告プラン」の実証実験 物流業界の新たな収益提供目指す
9.NewsPicks、EventHubと共同でイベントコンサルティング商品の提供を開始
10.大日本印刷がOpenXと協業 デジタル広告取引でのカーボンニュートラルを支援
会員限定記事から カルフォルニア州、メディアへの支払いに前進
世界各地で同様の法案が取り沙汰されていますが、プラットフォーマーからメディア企業への支払いを義務付ける「ジャーナリズム保存法」が米国カリフォルニア州で成立に向けて前進しているようです。ITプラットフォームのお膝元である一方、リベラル色が強い同地ではメディア企業を支援しようとする機運も盛んのようです。メタなどはニュースフィードからニュースを排除するとも警告、既に下院では成立し、これから上院での採決に注目が集まります。続きを読む
1.カリフォルニア・ジャーナリズム保護法、州下院を通過・・・IT産業のメッカでニュースフィードは止まるのか
2.ニューヨーク・タイムズ、異常気象の予測サービスをニュースレターで提供
4.Spotify、従業員の約2%に当たる200人をレイオフ・・・ポッドキャスト部門再編
5.5割のニュースメディアが生成系AIを使用、2割がガイドラインを設定・・・WAN-IFRA調べ
6.5000名調査で分かった、地元のニュースに求められるもの【Media Innovation Weekly】5/29号
7.ニューヨーク・タイムズ、ポッドキャストアプリに参入・・・オーディオの世界での一面を目指す
8.グーグル、情報源や専門性に基づいたニュースの優先表示システム・トピックオーソリティを開始
9.【メディア企業徹底考察 #112】公認会計士向けの独立支援メディア運営ブリッジコンサルティングがグロース市場に上場
10.ワシントン・ポスト、全社でのAI活用を目指して2つの組織を設立
編集部からひとこと
梅雨らしい季節になってきました。暑くて、ジメジメして、うんざりですが、何とか気合で乗り切っていきたいところです。繰り返しですが、メディアジーンとNTLの経営統合は驚きでした。ムーンショット狙っていかないといけないですね。