テレビ局が共同運営する日本最大級の見逃し配信サービス「TVer」の広告事業が急成長を遂げています。2024年度(2024年4月1日~2025年3月31日)の「TVer広告」は売上前年度比221%、キャンペーン数131%という驚異的な伸びを記録。広告主数は2,138社(前年度比187%増)、広告会社数は651社に達しました。


この急成長の背景には、メディア消費行動の変化とTVerの戦略的対応があります。特にコネクテッドTV(CTV)での視聴ユーザー増加に伴い、テレビ画面でのデジタル広告という新たな市場が形成されつつあるようです。
成長を支える3つの要因
TVer広告の成長を支える要因には、大きく3つの特徴があります。
まず一つ目は、多額の年間広告出稿をする広告会社の増加です。広告予算の配分先としてTVerの重要性が高まっていることを示しています。
二つ目は、開発チームの体制見直しによるプロダクト強化です。ターゲティングやレポート機能の拡充により、広告効果の可視化・最適化が進み、広告主が増加しています。
三つ目は、2023年から提供を開始したセルフサーブ機能の浸透です。広告会社自らが入稿から配信、レポーティングまで行える仕組みにより、運用の自由度と効率性が向上しました。
メディアビジネスとしての意義
この成功はメディアビジネスの文脈で見ると示唆に富んでいます。多くのメディア企業がデジタル収益化に苦戦する中、TVerは放送コンテンツという質の高いコンテンツと、デジタル広告の柔軟性を掛け合わせることで新たな収益モデルを確立しつつあります。
特に注目すべきは「ブランドセーフティー」への言及です。広告主からは「TVerのコンテンツやプラットフォームとしての信頼性、健全性」が評価されています。昨今、SNSやUGCプラットフォームでのブランド毀損リスクが懸念される中、放送局が提供する安全性の高いコンテンツ環境は差別化要因となっているようです。
従来のメディア広告との違い
従来のテレビCMが番組視聴者全体に同じ広告を届けるマス広告だったのに対し、TVer広告は「運用型」という特徴があります。これはデジタル広告の強みであるターゲティングや効果測定、柔軟な予算設定などが可能であることを意味します。
また「セルフサーブ機能」の普及は、広告会社が直接運用できる利便性をもたらすと同時に、TVerとしては営業コストを抑えながら出稿社数を拡大できるメリットがあります。
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TVerの急成長はメディア企業にとって希望をもたらすモデルであり、広告とユーザー体験のバランスを損なうことなく、魅力的なコンテンツを広げるプラットフォームとして今後も成長を期待したいところです。