自動車産業に特化した情報プラットフォームを運営するマークラインズが、2026年12月期第2四半期(中間期)の決算を発表しました。売上高は28億63百万円(前年同期比2.2%減)と減収となったものの、営業利益は11億15百万円(同4.0%増)、経常利益は11億46百万円(同6.0%増)と3半期ぶりに増益へ転じています。通期業績予想は据え置き、売上高61億50百万円(前期比10.4%増)、営業利益23億50百万円(同12.1%増)を見込んでいます。
事業環境の転機 — 中東情勢とEV市場の再加速
決算補足説明資料によると、同社を取り巻く事業環境は転機の兆しを見せています。2025年度は主要顧客である日系メーカーがトランプ政権の関税政策や中国メーカーとの競争激化により業績が悪化し、同社の受注動向にも影響がありました。しかし2026年に入ると、3月の中東情勢緊迫化に伴うエネルギー価格高騰を契機にEV販売台数が増加に転じています。
特にEVは中国に加え、EU諸国でのEV補助金再開もあり欧州・南米・東南アジアで販売が伸びています。一方、米国では消費者の燃料費抑制志向から普及価格帯のHEVに需要が回帰し、日系メーカーが強みを持つ分野が上向いています。円安基調の為替推移と合わせ、日系メーカーの業績には追い風となりつつあるとの認識を示しています。

また、中国メーカーが世界販売台数で首位に躍り出る一方、日本および欧州メーカーの販売は低下傾向が続いていることにも触れています。SDV(Software-Defined Vehicle)の進展については、中国においてHuaweiやBaiduといったソフトウェア企業が開発の主導権を握りつつあり、自動車の付加価値がハードウェアからソフトウェアへ移行する構造変化を指摘しています。

生成AI機能 — 垂直型AIへの深化戦略
同社が今期最も注力しているのが、2026年1月にβ版をリリースした「マークラインズ生成AI」です。これは、2001年のサービス開始以来25年間に蓄積してきた販売・生産台数、モデルチェンジ予測、市場・技術レポート、部品サプライチェーンなどのコンテンツに対し、RAG(検索拡張生成)を活用して信頼性の高いデータを提示し、LLM(大規模言語モデル)が分析結果を文章で自動生成する機能です。

上半期はユーザーフィードバックをもとに機能改善を継続的に進め、ユーザーニーズへの適合性向上と回答速度の改善に取り組みました。同社はこの生成AIについて、広範囲をカバーする汎用型AIではなく、自動車産業に特化した「垂直型AI(Vertical AI)」として開発を進める方針を明確にしています。将来的には、質問に対してデータと分析結果を返すだけでなく、企業の意思決定と実行を支援する業務インフラとしての深化を目指しています。

情報プラットフォームのコンテンツ・機能強化
生成AI以外にも、プラットフォームの価値向上に向けた複数の施策を実行しています。2026年1月からは「独自インタビュー」コンテンツの公開を開始し、主要企業のキーパーソンへ直接取材する体制を構築しました。また、ユーザーが関心のある自動車メーカー・部品メーカーを選択してニュースをメール配信で受け取れる「自動車産業ニュース」機能を開始しています。
自動車生産台数ダッシュボードについても、従来のメーカー別・モデル別・国別に加え「パワートレイン別」のダッシュボードを新たに実装し、EVシフトの進展を定量的に把握しやすい環境を整えました。

セグメント別の状況 — 主力事業は価格改定効果で2桁成長
主力の情報プラットフォーム事業は売上高20億42百万円(前年同期比8.4%増)、セグメント利益9億96百万円(同10.0%増)と堅調に推移しました。特に第2四半期は、既存顧客に対する価格改定効果と人民元高による為替変動が重なり、売上高が前年同四半期比12.3%増と2桁の伸びを記録しています。
プロモーション広告事業は売上高77百万円(同13.5%増)と好調を維持しました。人材紹介事業も自動車メーカーの求人ニーズ回復を背景に成約が持ち直しています。市場予測情報販売事業は前期並みの水準でした。
一方、コンサルティング事業は自動車・大手部品メーカーからの受注減少により売上高1億75百万円(同23.5%減)、セグメント利益26百万円(同57.1%減)と大きく落ち込みました。自動車ファンド事業も組合契約に基づく管理報酬の算定額変化により売上高が減少しています。
セグメント再編とベンチマークセンターの稼働率向上
同社は当中間期より、ベンチマークセンター(神奈川県厚木市)および本社における採算性をより明確にする目的で、従来の車両分解・計測事業、車両・部品調達代行事業、コンサルティング事業、分解調査データ販売事業の4事業を「リバースエンジニアリング事業」と「コンサルティング事業」の2事業に再編しました。

リバースエンジニアリング事業では、2024年度に新設したベンチマークセンターのPR・マーケティング活動を技術展示会の開催などを通じて強化してきました。その結果、上期後半から自動車・大手部品メーカーとの商談が活発化しており、稼働率の上昇によりセグメント損益の改善につながっています。
自動車ファンド出資先がNASDAQに上場
同社が「自動車産業支援ファンド2021投資事業有限責任組合」を通じて2025年2月に投資したミックウェア(兵庫県神戸市)が、2026年5月にNASDAQ Global Marketへ新規上場しました。同ファンドが出資する企業としては初のIPO案件です。ミックウェアは車載プラットフォームやナビゲーションソフトウェアの企画・開発を手がけ、日本国内カーナビソフトウェア市場で15%のシェアを持つ企業です。

組織体制の整備と拠点再編
海外展開の強化として、上海子会社およびデトロイト子会社のオフィスを2026年1月・2月にそれぞれ拡張・移転しました。一方、福岡コールセンターについては事業の最適化を目的として2026年2月をもって廃止しています。第1四半期にはこれらのオフィス拡張・移転に伴う一時費用が発生し、営業利益を押し下げる要因となりましたが、第2四半期にはその影響が解消されています。
同社は自動車産業が電動化・ソフトウェア化という構造変化の渦中にある中、25年間蓄積した専門データを基盤としたAI機能の深化とコンテンツ強化により、情報プラットフォームとしての競争優位を高めようとしています。下半期はベンチマークセンターの商談活発化の成果が収益にどう反映されるか、また生成AI機能がβ版から正式版へどのように進化するかが焦点となりそうです。









