フェイクニュースよりも深刻な政府による誤報、最新の研究で明らかに

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本記事はThe Conversationに掲載された、イギリスのCardiff UniversityのStephen Cushion教授とMaria Kyriakidou教授とMarina Morani教授とNikki Soo教授による記事「Coronavirus: fake news less of a problem than confusing government messages – newstudy」をCreative Commonsのライセンスおよび執筆者の翻訳許諾の下、掲載するものです。

調査によると、ソーシャルメディアでは正しくない情報が氾濫しており、多くの人々は現在COVID-19に関する誤った、あるいは誤解を招くような情報に頻繁にさらされていることが明らかになっています。

しかし、4月16日から5月27日までの6週間に及ぶニュース視聴者への調査では、調査対象のほとんど全てである200人がフェイクニュースを簡単に見分けることができることが明らかになりました。彼らは、5GがCOVID-19感染爆発と関係があるという陰謀論や、塩水でうがいをするとコロナウイルスが治るという根拠のない治療法などが疑わしい情報であると識別していたのです。

しかし、彼らが識別していたフェイクニュースは、ソーシャルメディアやウェブサイト上で拡散されている最も被害が大きいと想定される類いのニュースではありませんでした。私たちがCOVID-19についてどのような誤った情報や誤解を招くような情報に遭遇したかを調査で尋ねたところ、多くの人が政府やメディアの誤報による情報を挙げていました。

今回の調査における参加者は、英国の人口分布にほぼ等しい比率で構成されていました。調査の中では主に、感染爆発に関する彼らの知識と、それらの情報がニュースメディアによってどのように報道されているかを知ることを目的とした質問を行いました。

COVID-19に関する誤報の再考

調査によって、多くの人々がCOVID-19に関する誤報を目にしたことが明らかになりましたが、彼らが目にした誤報や誤解を招くような情報が何であったのか、あるいはそれがどこから来たのかは必ずしも明らかになってはいません。また、そうした誤報は人々の感染爆発への理解に影響を及ぼしていると考えられています。

しかし、既に広まっている誤情報に関する質問を参加者に尋ねたところ、彼らはそれらは誤った情報であるとすぐに指摘しました。例えば、5Gはパンデミックの原因ではない、水を多く飲んでもコロナウイルスは死滅しない、塩水でうがいをしてもCOVID-19の治療法にはならないといった指摘をしました。

彼らはフェイクニュースを簡単に見抜くことはできましたが、パンデミックに対し各国がどのような対応をしているかについてはあまり詳しくありませんでした。例えば、10人に3人は、政府が検査目標を達成できていないことを知りませんでした。

また、約3分の1の調査参加者は、イングランドとウェールズでの感染リスクが高いことを知りませんでした。また、参加者の多くは英国の死亡者数を他国と比較して少ないと感じており、英国政府の数字を疑っていました。

5月10日にイングランドで新たな封鎖措置が発表された後、スコットランド、ウェールズ、北アイルランドでは必ずしもその措置は適用されるわけではないという事実に多くの人が気づいていなかったことも明らかになりました。参加者の半数が、英国政府が4カ国すべてのロックダウン措置を担当していると誤解していたのです。

政府とメディアの誤報

何かメディアが報じた情報で誤った情報はあったかと参加者に尋ねたところ、トランプ大統領が消毒薬を注射するとコロナウイルスから身を守れると信じているといった情報を挙げた人がいました。また、多くの参加者は、政府の主張やメディアの報道が、誤った情報や誤解を招くような情報を広める一つの原因になっていると答えました。ある人は私たちに次のように回答しました。

私にとっての誤報は、学校が6月1日に再開するという記事です。その記事では詳しい説明はなく、その後、年齢別に段階的に再開していくのだと分かりました。この記事により多くの保護者が混乱していました。見出しは簡潔であるべきですが、誤解を招くようなものであってはなりません。

別の参加者は、「政府の発表と関連があり、後に誤っていると判明した」次のような誤報を信じていました。「PPEの不足、実施された検査数、介護施設での死亡」などです。これらは、政府が声明で明らかにしていない事実をメディアが報道したことに由来していると考えられます。

放送局の責任範囲については、国民の信頼を確保するためにどこまで政府の声明を事実確認するべきかという議論が長い間交わされてきました。この難しいバランスの取り方について調査の参加者に尋ねたところ、多くの人は事実確認を重視することがジャーナリズムに対する国民の信頼を高めることになると回答しました。

ある参加者はこう回答しました。「私は、事実確認はこれまで以上に重要だと思います。なぜなら、残念ながら権力を握っている人たちは、悲しいかな、虚偽の主張をするからです。」

国民の混乱に対処する

パンデミックに対する政府の対応への国民の信頼度は、4月中旬以降、劇的に低下しています。私たちは、4月16日から5月27日までの6週間の調査で、この信頼度の推移を記録しました。

この期間中、参加者の多くは、疑わしい主張の事実確認を含め、政府の意思決定に対するメディアの調査を増やしてほしいと回答しました。また、政治家ではなく専門家がメディアの報道に情報を提供することを望んでいました。

6月6日のように、政府の閣僚が科学や健康福祉の専門家なしで毎日ダウニング街の記者会見に現れるのが日課になれば、記者の閣僚への質問が制限されることになるかもしれません。スカイニュースの政治特派員サム・コーツ氏が指摘しているように、専門家が不在の場合、政府は記者からの質問に対し政治的に都合の良い回答をすることができてしまうでしょう。

英国政府に対する国民の信頼が急落する中、放送局の役割はますます重要になってきています。6週間の調査では、参加者は一貫して、記者による政治家の政治的な発言の事実確認や疑わしい主張への異議で保たれる正確で公平な情報を求めていました。

私たちの調査では、放送局が人々にフェイクニュースを見抜くことに対し自信を与えている可能性が示唆されています。しかし、多くの参加者は、日常的な政治的決定に混乱しており、最も顕著なのは、スコットランド、ウェールズ、北アイルランドの措置とは異なる可能性のあるイングランドのロックダウン措置決定です。

私たちの調査は、放送局がより効果的に誤報に対抗するために重要なのは、政治家の発言に大胆に疑問を投げかけ、政府の責任を問うことだけではないことを示しています。人々が混乱していることを特定し、複雑で論争の多い問題についての理解度を高める方法を見つけることも同様に重要なのです。

《The Conversation》

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