パブリッシャー向けの広告ソリューションを提供するBoostrは、パンデミック下の2020年における米国パブリッシャー各社の戦略動向や広告トレンドについての調査結果を発表しました。今年の米国におけるデジタル広告費の予想が1,910億ドルと、1年前の予想より140億ドル上回る状況で、パブリッシャーの戦略立案を支援するために本レポートが発行されました。2020年に各社が念頭に置いていた課題、収益回復のための指針、広告主カテゴリーごとの収益成長率・シェアの推移をまとめつつ、3つの戦略がキーであると結論付けています。
パンデミック下の戦略動向
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新型コロナウイルスによるパンデミックはパブリッシャー各社に大打撃を与えました。メディア経営者と直接会話をしていたレポート著者によれば、安定した収益源であった広告カテゴリーが数週間のうちに休止したり、打ち切りになったこともあったようです。このような状況下で各社はどのような戦略をとったのでしょうか。その内容がレポートでまとめられています。
まず、パブリッシャーが意識していた課題について、これは各社それぞれ分散しており、上位から、収益目標達成が19%、リモートワーク導入が18%となっていました。このような課題に対して、オペレーション効率改善を施策とした企業は45%、付加価値向上は44%、チャネルの効率化は42%、という調査結果で多様な施策がとられていたことが分かります。
広告商品個別の戦略において、どのような形式で販売したいかと聞かれると、ビデオ形式を望む企業は56%、デジタルオーディオ形式が47%、スポンサーシップ形式が46%と続きました。また、1度の取引に含まれる広告商品の数は、2~5個が42%で主流であり、6~10個が39%と続きました。パフォーマンス上位25%に入るパブリッシャーでは、取引の48%が複数であることからも、複数取引がトレンドであることは間違いなさそうです。
最後に、2020年におけるパブリッシャーの収益を見ていくと、3分の2の67%が秋までには回復したと回答しており、年末までに収益が安定したと回答した企業は94%にも上りました。このことから、メディア業界におけるパンデミックの悪影響は現状ほとんど消滅したと言ってもよいでしょう。この収益回復の理由について、37%が状況に俊敏に対応したためと回答、33%はパンデミックによる消費者動向の変化の恩恵による、と続きました。
広告主カテゴリーのトレンド
広告主のトレンドについてBoostrのレポートでは、支出額の多い、つまり収益額シェアの大きいカテゴリーは、消費財メーカー(CPG)、小売業、エンターテインメントがトップ3で2019年から変わっていませんが、それ以下の順位で変化が見られます。まず、テック・通信系は2019年では11%のシェアであったのに対し、2020年には14%とシェアを大きく伸ばしています。同じくシェアを+3%伸ばしたのは政府系で、1%が4%となっていました。逆に大きくシェアを落としたのが旅行・運送系であり、5%から2%となり、パンデミックの影響を大きく受けていました。シェアを伸ばしたテック・通信系と政府系の広告主からの収益額自体も大きく成長しており、年間で前者は+31%、後者は+212%にもなっています。政府系の大きな伸びは、大統領選や上院選挙による影響と推測されています。
今後重要となる3つの戦略
Boostrのレポートでは、最後の結論部にて3つの戦略の重要性を述べています。
- 業務オペレーション効率の向上で次のトレンドに備えて俊敏に動けるようにする
- 既存広告主の引き留めによる収益維持
- 広告商品のバリエーションを増やす、特にオンライン広告の拡充が重要
米国は、ワクチン接種の広がりを受けて経済が回復し始めており、今後もトレンドが変化し続けることが予想されます。パブリッシャーはどのような戦略で対応していくのか、今後も注