読者のゾンビ化を防ぐ「アンバンドリング」とシェア獲得の「バンドリング」・・・両者を使い分けた5つの戦略指針を紹介

7月14日、ペイウォールやサブスクシステムを提供するZephrは、サブスク戦略におけるアンバンドリング、バンドリングそれぞれのメリットと具体的な戦略をレポートにまとめ、発表しました。サブスク登録しているにもかかわらず月に1度も購読をしないゾンビ購読者やサブスク市場の飽和を問題として提起し、アンバンドリングがどのようにしてその問題を解決できるかを紹介しています。また、旧来的なバンドリング手法のメリットも消滅していないことを強調し、新たな戦略として異業種とのコラボレーションを提案しています。最後に、両者のメリットを活かしつつ、パブリッシャーがサブスク業界で勝ち抜くための5つの戦略指針を述べています。

アンバンドリングとそのメリット

新型コロナウイルスによるパンデミックは、ニュースメディア業界におけるデジタル化を大きく促進し、米国人の90%近くがニュースのデジタル購読を行うまでになったと伝えられています。さらに、サブスク市場自体も急激に成長しており、2012年から2020年の間にサブスク収益総額は400%以上増加しているということです。

このような状況では、ニュースメディアは同業界だけでなく他業界とも飽和するサブスク市場で戦っていかなければならず、それに並行して購読者のゾンビ化にも対処しなければなりません。レポート著者は、新規購読者の獲得・維持やゾンビ化を防ぐためには、購読者に敏感に合わせたコンテンツのパーソナライズ化が必要不可欠であると語っています。

[MMS_Paywall]

従来のバンドリングされた購読パッケージからコンテンツを選択的にするアンバンドリングは、上記のパーソナライズ化に大きく貢献する手法であると言います。このアンバンドリングによるパーソナライズのメリットの1つは、解約を減らすことにあります。購読者のニーズに合わせてコンテンツをアンバンドリングできるようになれば、購読者は未購読コンテンツに対する過剰支払い感を払拭することができ、解約を踏みとどまらせることもできます。このアンバンドリングを全ユーザー共通で画一的な方法で提供するのではなく、購読者のニーズや状況に応じて適応的に提供することがポイントであると述べられています。

調査によれば、ローカルニュースのサブスク登録者の約半数が月に一度もコンテンツを購読しないゾンビ状態にあり、いつ解約してもおかしくない状態にあるようです。このような状況はサブスクリプションサービスに対して購読者が受動的であることが起因しており、購読者が能動的に参加するようにすることが必要と述べています。Vox Media社の調査によれば、ポッドキャストのリスナーの71%が、信頼するホストのために他のプラットフォームへの移行を厭わないと報告されています。

さらに、Philadelphia Inquirerが試験的に、従来の印刷物で掲載していた同州のグルメレポートをデジタル化し、限定コンテンツとして単独で販売しました。結果、従来のサブスクリプションと比べて開始直後の新規購読者が53%も多くなったようです。

この2例のように、ホストや著者など特定人物や限定コンテンツを従来のサブスクリプションからアンバンドリング(分離)することで、ニッチな興味分野を持つ能動的な購読者を増やすことができます。こうしたニッチ分野の購読者はCookie衰退後で重要となるファーストパーティーデータの提供源にもなるため、パブリッシャーだけでなく広告主にとっても利益をもたらすと強調しています。

旧来式のバンドリングのメリット

アンバンドリングがサブスクリプション解約やゾンビ化に効果的である一方、従来式のバンドリングにメリットはあるのでしょうか。Zephrによれば、アンバンドリングのメリットを踏まえたとしてもバンドリング自体にはまだメリットが残されていると言います。その根拠として、2020末に行われた調査で米国消費者の約70%が購読するものを選べるのであればバンドル化したい、と回答していることがあります。

これは不要なコンテンツを外すアンバンドリングとほぼ同義ではありますが、複数のコンテンツを同時に利用したい層が多数を占めているという意味で、バンドリングは有効な戦略と言えそうです。ただし、サブスクリプション期間中は購読者が自由にバンドルの選択を行えるようにすることが重要と強調しています。

バンドリングを有効に扱っていくための戦略として、異業種とのコラボレーションを挙げています。多くの購読者の解約理由が、購読メリットを感じられないためであるとし、ニュースメディア以外のコンテンツと組み合わせることでこの問題に対処できると言います。ワシントンポストのシニアディレクターであるRyan Kellettは、2020年末にはクレジットカード会社がニュース購読を既存ユーザーへのオファーにバンドルするだろうという予想を立てていましたが、逆に異業種とのコラボレーションを行うニュースパブリッシャーはほとんど存在していないようです。

唯一ウォールストリートジャーナルだけは、このバンドルモデルを5年前から導入し、40件以上の実績を持っているとのことです。このようなバンドリング戦略は、パブリッシャーが通常の方法では達しえない市場シェア獲得に貢献するだろうと述べています。

パブリッシャーがサブスク市場で勝ち抜くためには

最後に、パブリッシャーが飽和したサブスク市場を勝ち抜くための戦略について、レポートの内容を踏まえて以下の5点を挙げています。

  • 購読者はそのライフタイムの中で何度も求めているものが変化する。その変化に追従し、購読者のニーズに合わせたオファーを行えるよう備えること。
  • アンバンドリングによる通常のオファーから分離したニッチサブスクリプションは、価格面やコンテンツ内容の面どちらでも購読者が求めているものを与えられる。
  • アンバンドリングを購読者に提案することで新規獲得と同様に解約を防ぎ、ゾンビ購読者をも再び活性化することができる。
  • 旧来式のバンドリングは、パブリッシャーの枠を超えて異業種とのコラボレーションを行うことで、いまだに大きな付加価値を与えることが可能。
  • パブリッシャーは購読者に対して、パーソナライズ化できる範囲を正しく理解し、それが技術的に可能であることも保証しなければならない。
  • <
2,779ファンいいね
226フォロワーフォロー
2,466フォロワーフォロー

【12月6日更新】メディアのサブスクリプションを学ぶための記事まとめ

デジタルメディアの生き残りを賭けた戦略の中で世界的に注目を集めているサブスクリプション。月額の有料購読をしてもらい、会員IDを軸に読者との長期的な関係を構築。ウェブのコンテンツだけでなく、ポッドキャストやニュースレター、オンライン/オフラインのイベント事業などメディアの立体的なビジネスモデルをサブスクリプションを中核に組み立てていく流れもあります。

最新ニュース

ヘリテージが Pinterestに高品質の雑誌ビジュアルを提供開始

株式会社ヘリテージが、ビジュアル探索プラットフォ...

「MicroAd COMPASS」が「The Trade Desk」と提携 動画広告フォーマットの取引量を拡大へ

株式会社マイクロアドが運営する媒体社の広告収益化...

ChatGPTをリリースしたOpenAI、なぜ4兆円もの超高額な評価額がつくのか?

ChatGPTは、ユーザーからの問いかけに対して...

次世代SNSアプリ「TapNow」のサンゴテクノロジーズ、総額1億円の資金を調達

サンゴテクノロジーズ株式会社は、SBIインベスト...

関連記事