11月19日、バイデン政権が進める看板法案の1つである「ビルド・バック・ベター」法案が下院で可決されました。福祉の改善や再生可能エネルギーの促進などを含むこの大型法案の中には、地元ジャーナリストを雇用するローカルメディアへの税制控除案も含まれています。存続の危機に立たされているローカルメディアへの救済となるこの案が施行されるかどうかは、年末までの上院投票で決まります。
「ビルド・バック・ベター」法案の目的
バイデン政権は来年11月の中間選挙を控え、支持率の低下に苦しんでおり、その立て直しのために大型の歳出法案を実現させようとしています。今年の11月に成立が確実となった大型インフラ法案に引き続き、「ビルド・バック・ベター」法案はその看板法案の1つとなっています。
「ビルド・バック・ベター」法案は、その名の通り「より良い復興」という意味であり、チャイルドケアにかかる費用の減額、再生可能エネルギーの促進、有給休暇取得支援など幅広い範囲に目を向けています。その対策の多くはミドルクラスの救済を主としているとも言われています。
ローカルメディアへの税制控除
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メディア業界にとって注目すべきは、ローカルメディアへの税制控除案でしょう。これは、ローカルメディアが地元のジャーナリストを雇用することで、被雇用者1人あたりの雇用税が控除されるというものです。具体的には
- 初年度は被雇用者一人あたり雇用税の50%が控除
- 次の4年間は被雇用者一人あたり雇用税の30%が控除
- 対象となる被雇用者の上限賃金は四半期で12,500ドルであり、超過分は控除されない
- 対象となる被雇用者は1,500人が上限
となっています。よって、ローカルメディアはジャーナリスト1人あたり初年度は最大で賃金25,000ドルに相当する雇用税が控除されることとなります。
控除の対象となる地元ジャーナリストの定義についても法案に記載されています。法案では、
- フルタイムで週30時間以上働いていること
- 勤務先であるローカルメディアから50マイル以内に居住していること
となっており、勤務先と住居の距離関係で決まってくるということが分かります。また、控除を受けるローカルメディアの基準について、紙媒体、デジタル媒体、放送の全ての形式が対象となっており、ローカルニュースを地域社会に提供することが条件となっています。
ニューヨーク・タイムズによれば、アイオワ州にある小規模なローカル新聞のソルトレイクタイムズから、米国最大級の新聞チェーンであるガネットまで、多くのローカルメディアが税控除の対象となり、メディア企業に支払われる金額は5年間で16億7000万ドルにのぼるといいます。また、1か所のニュースルームのスタッフ数が1500人を超える場合には対象外となるため、ニューヨーク・タイムズ自身は控除を受けられないとのことです。
法案成立を握る上院の動向
無事に下院を通過した本法案ですが、賛成220、反対213という僅差での可決となっていました。これは、もともと共和党議員が全員反対に回っていたこともあり、共和党から支持されていないためです。さらに、法案による支出規模が2兆ドルにまで膨れ上がったことも懸念されています。
次の上院では、民主党議員でありながらこの法案に懸念を表明しているジョー・マンチン氏と対決することとなります。年末までの上院通過を目指している本法案ですが、無事通過し、ローカルメディアへの救済となるのでし