「Twitterは編集者ではない」ニューヨーク・タイムズがTwitter利用を減らすように呼びかけ【Media Innovation Weekly】4/11号

「Twitterは編集者ではない」と、ニューヨーク・タイムズのエグゼクティブ・エディターであるディーン・バケ氏が編集部に送ったメモで、記者のTwitter利用を減らすように訴えた事が話題となっています。ウクライナ報道でも活躍し、先日はイーロン・マスク氏が取締役に就…

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「Twitterは編集者ではない」ニューヨーク・タイムズがTwitter利用を減らすように呼びかけ【Media Innovation Weekly】4/11号

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今週のテーマ解説 「Twitterは編集者ではない」ニューヨーク・タイムズがTwitter利用を減らすように呼びかけ

「Twitterは編集者ではない」と、ニューヨーク・タイムズのエグゼクティブ・エディターであるディーン・バケ氏が編集部に送ったメモで、記者のTwitter利用を減らすように訴えた事が話題となっています。ウクライナ報道でも活躍し、先日はイーロン・マスク氏が取締役に就任した事でも注目を集めるTwitterですが、どんな背景があるのでしょうか?

「ここ最近、Twitterがもたらす弊害について同僚から深刻な懸念を耳にしていました。Twitterを執筆やフィードバックのツールとして頼りすぎると、フィードがエコーチェンバーになり、ジャーナリズムに悪影響を与えかねません。仕事のTwitterでの反応に過度に注目すると、私達の使命や独立性が損なわれる可能性があります」とバケ氏は述べました。(全文はこちら)

そして、ソーシャルメディアポリシーの変更を行い、Twitterやその他のソーシャルメディアで存在感を発揮することは”純粋なオプションになった”ということです。バケ氏は多くのスタッフが”Twitterから離れたい”と思っているとして、「このプラットフォームに費やす時間を減らすよう推奨する」と述べました。

さらに、Twitterを利用する記者に対する嫌がらせも頻発しているとして、支援するための専門の社内チームを設けた事も明らかにしています。「私たちはこれらの攻撃を深刻に受け止めていて、こうした行為が私達の同僚の幸福、安心感、仕事を遂行する能力にどれだけの影響を与えているか理解しています」

また、バケ氏は「ソーシャルメディアを使って、同僚の仕事を攻撃、批判、または弱体化させるような試みをするべきではない」と述べました。これは2020年にトム・コットン上院議員がBlack Lives Matterの抗議活動に対して治安回復のために軍隊を送るべきという論説をニューヨーク・タイムズに掲載した事に対してスタッフから猛烈な批判が巻き起こった事に対応している可能性があります。

ニューヨーク・タイムズのこの動きは記者やジャーナリストのソーシャルメディアと相対する難しさを再確認させるものであると同時に、先日ニューヨーク・タイムズを退社してワシントンポストに移籍したテイラー・ローレンツ氏の騒動に対応したものだと推測されています。

ローレンツ氏はアトランティック、デイリー・ビーストなどで働いた後、2019年にニューヨーク・タイムズに加わり、そして今年、ワシントン・ポストに移りました。インターネットカルチャーをテーマに取材をしてきて、ソーシャルメディアで人気の新鋭の記者として注目されてきました。Twitterは28万人、TikTokでは51万人のフォロワーを持ちます。

積極的に読者と交流し、歯に衣着せぬ投稿を24時間続けるローレンツ氏は人気を集める一方、騒動も巻き起こしてきました。ヴァニティ・フェアはそれが経営陣の不満に繋がり、自身は「退職の要因ではない」と否定しますが、2021年に退職した上司のホイワ・シチャ氏に対しても経営陣から”管理が自由すぎる”と批判があったようです(デイリービスト)。

知名度の高いローレンツ氏は自身の記事だけでなく、ニューヨーク・タイムズ全体への批判をも受けるようになったといい、MSNBCに出演して「オンラインでのハラスメントで深刻なPTSD」に苦しんでいると述べましたが、それが更に拍車をかけた面もあったようです。「メディア企業は、”あなたの深刻な悪意ある中傷を記事にしたいが、公平性を保つためにあなたをロリコンと述べている人の意見も入れて両方の立場を示そうと思います”という事を言います。その記事が更にハラスメントを招くなら、それは完全な失敗であり、適切に取材する方法を学ぶべきです」とTwitterでコメントしています。

記者がTwitterに時間を費やし過ぎていて本来の業務を疎かにしているのではないかという疑念を持ってしまうのは、管理職あるあるなのかもしれませんが、個人的にはCRJが言うように「使い方次第」であり、ソーシャルメディアの相手をする事は良い報道には繋がらないという姿勢は残念に思います。ソーシャルメディアが存在するのは現実であり、ニューヨーク・タイムズが身を隠しても、他の人が埋めるだけです。存在を前提に付き合い方を考える方が前向きではないでしょうか?

今週の人気記事から ドリームインキュベータがピークスを売却

民事再生法を適用した枻出版社のブランドは複数の会社が引き継ぎましたか、その大部分は子会社のピークスと共に、新生ピークスという形で、投資会社のドリームインキュベータが買収しました。買収完了はちょうど昨年2月の事でしたが、同社の方針転換もあり、DX支援のADDIXへの売却が発表されました。ドリームインキュベータはこれに伴い特別利益を計上、どうやら経営陣は引き継ぐようです。雑誌の新しいモデルを模索する同社の展開は今後も注目されます。

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ホワイトハウスの報道官としてメディア対応を引き受けるサキ報道官が5月に辞任しMSNBCのキャスターに転身すると複数のメディアが伝えています。サキ氏はオバマ政権の報道チームでの経験もあり、その後はCNNに勤務し、バイデン政権の発足に伴いホワイトハウスに戻りました。アメリカらしい官民のリボルビングドアという感じですが、政権の中枢にありながら、次の仕事を探している事に対しては批判もあるようです。

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編集部からひとこと

冒頭のソーシャルメディアを巡る騒動で思い出したのは3月に日経新聞を辞めた後藤達也記者のこと。Twitterで36万人のフォロワーを持つ人気記者でしたが、退職に当たってアカウントは引き継げなかったようですが、新しいアカウントでも21万人のフォロワーを既に獲得。分かりやすい金融政策の解説は定評があります。個人で活動を続けるようですか、記者のキャリアとしても注目されそうです。

《Manabu Tsuchimoto》

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Manabu Tsuchimoto

デジタルメディア大好きな「Media Innovation」の責任者。株式会社イード。1984年山口県生まれ。2000年に個人でゲームメディアを立ち上げ、その後売却。いまはイードでデジタルメディアの業務全般に携わっています。

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