クックパッド株式会社の業績悪化に歯止めがかかりません。
2022年12月期第2四半期の売上高は前期比10.6%減の45億6,600万円、営業損失は13億8,800万円(前年同期間は10億5,600万円の営業損失)、純損失は13億7,100万円(前年同期間は11億4,200万円の営業損失)でした。
損失額が拡大しています。クックパッドは通期の予想を出しておらず、業績を立て直す具体的な計画も公表していません。その背景には、自己資本比率を80%超えており、財務体質が極めて健全であること。そして創業者の佐野陽光氏が4割を超える株式を保有しており、株主からの圧力が少ないことが挙げられます。
しかし、乾汽船株式会社を苦しめたアクティビストの影がちらついており、将来的に株主と経営者の間で火花を散らす激しい衝突が起こるかもしれません。
会員の流出を止めることができず
クックパッドは2016年3月期に売上高が過去最高となった後、減収を続けています。2桁台をキープしていた利益率も減退して2021年3月期は営業赤字に陥りました。
■クックパッド業績推移


なお、クックパッドの減収が始まった2017年から10年間の投資フェーズで達成したいこととして、以下の3項目を挙げています。内容は抽象的で具体的な数字は盛り込まれていません。

クックパッドは会員からの課金と広告収入が業績を支えています。現状、その2つとも縮小を続けている状態です。
2022年8月末時点での課金対象会員数は173.4万人。1年間でおよそ8%減少しています。クックパッドは2018年に204.8万人の会員を獲得した後、減少に転じました。
広告収入の縮小も深刻。2022年3月期6-8月の広告収入は3億9,400万円。前年同期間は5億500万円でした。12.0%減少しています。
クックパッドの一番の問題点は、これらの解決すべき課題が山積しているにも関わらず、何ら手を打とうする姿勢が見えないことです。クックパッドは2017年3月に穐田誉輝氏が社長を退任して新体制を構築した後、M&Aを含む大型投資も行っていません。
アクティビスト「アルファレオ」の登場
クックパッド2022年6月末の自己資本比率88.6%という数字は上場企業上位100位に入る優良なもの。蓄積された現金も潤沢で、200億円近くを保有しています。
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クックパッドは営業損失を計上した2021年12月期に営業キャッシュフローが17億7,000万円のマイナスになりました。2022年12月期第2四半期においても8億8,800万円のマイナス。2期連続で営業キャッシュフローがマイナスとなる公算が高まっています。しかし、豊富な現金があるためにキャッシュ切れを起こす危険性は中期的にはないでしょう。
経営状態は危機的でありながら、財務状況は健全。筆頭株主は創業者・佐野陽光氏で取締役でもあります。強力な株主の圧力にさらされることもありません。それがクックパッドの成長を阻んでいるとも言えます。
しかし、経営を脅かす存在が現れました。
もの言う株主として知られるアクティビストです。アルファレオが2021年9月からクックパッド株を市場内で買い集めていたことが明らかになりました。現在は9.17%の株式を保有していると考えられます。
大量保有報告書によると、2022年7月6日にバリスターという会社が9.17%の株式を保有していますが、この会社の住所は「東京都千代田区永田町二丁目11番1号山王パークタワー」。これはアルファレオと同じものであり、実質的にバリスターとアルファレオは同一の会社だと考えられます。
アクティビストとは、一定の株式を保有して株主提案を行い、経営陣の刷新や増配などを求める集団。多くは投資家から資金を集める投資ファンドの形態をとっています。
有名なアクティビストに、株式会社東芝の経営を混乱させている旧村上ファンド系のエフィッシモ・キャピタル・マネージメントがあります。
YouTubeやプレスリリースも使う総力戦に
実はクックパッドの株式を取得したアルファレオは正体不明の組織として有名。ただし、PC周辺機器「バッファロー」ブランドを展開する株式会社メルコホールディングス創業者の資産管理会社マキスの資金を運用しているとされ、メルコホールディングス創業者一族と何らかの関係があると言われています。
アルファレオは乾汽船と激しいやり取りを繰り広げました。
乾汽船は2019年6月の定時株主総会で買収防衛策を提案。30%以上の株式を取得した買収行為に対して、最長60日間を期限に情報提供を求め、会社や株主の利益を損ねると判断すれば対抗措置をとるというもの。これに対してアルファレオは2019年9月に臨時株主総会の招集を請求し、取締役の解任や買収防衛策の廃止などを求めました。
乾汽船は買収防衛策の廃止は適法性に問題があるとして、臨時株主総会に付議しないことを決定。すると、アルファレオは乾康之取締役の解任請求訴訟を起こしました。
アルファレオは攻撃の手を緩めず、2020年5月には「当社が招集した2020年5月7日開催の乾汽船株式会社臨時株主総会買収防衛策廃止の決議の結果および本総会までの経緯の動画公開」というタイトルで、PRタイムスやYouTubeに資料や動画を公開しました。
しかし、2021年12月に乾汽船が勝訴すると、次第に攻撃の手を緩めます。2022年3月には乾汽船の保有比率が26.15%から4.37%に下がりました。
臨時株主総会で経営陣総入れ替えが決まったオウケイウェイヴ
アルファレオはクックパッドに標的を定めたように見えます。先手を打ったのがクックパッド。乾汽船同様の買収防衛策を2022年3月の定時株主総会で決議しました。
アルファレオがクックパッド株を取得した2021年9月ごろは、株式が220円前後で取引されていました。現在とほぼ同じ水準です。乾汽船に対する執念とも呼ぶべき一連の攻撃を見ると、アルファレオはどんな手を使ってでもクックパッドの企業価値を上げようとするはず。無風でやり過ごせるとは思えません。
近年はアクティビストの提案が決議されるケースが多くあります。ベンチャーキャピタルのフューチャーベンチャーキャピタル株式会社は、2022年6月の定時株主総会で経営陣の刷新が決議されました。アクティビストの金武偉氏が代表に就任しています。
2022年8月に開催された株式会社オウケイウェイヴの臨時株主総会でも、経営陣の総入れ替えが決議されています。株主提案を行っていた杉浦元氏が代表に選出されました。
クックパッドが業績を改善するための手を打たなければならないのは明らか。アクティビストが一石を投じることで、業績回復への道筋を立てられるかもしれ