厳しい経済環境をメディアが乗り切るためには【Media Innovation Weekly】2/6号

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厳しい経済環境をメディアが乗り切るためには【Media Innovation Weekly】2/6号

おはようございます。Media Innovationの土本です。今週の「Media Innovation Newsletter」をお届けします。

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今週のテーマ解説 厳しい経済環境をメディアが乗り切るためには

メディア企業のレイオフが続いています。ワシントン・ポストがゲーム部門などで20名を削減(CNN)、ドットダッシュ・メレディスが広範な部門で274名をレイオフ(アクシオス)、スポティファイが600名をレイオフ(ロイター)、Fandomも買収したばかりのGameSpotなどでレイオフを行ったということです(バラエティ)。

昨年12月にPressGazetteがまとめたところによれば、2022年には1391名の編集やジャーナリストがレイオフされ、半数は9月末以降、1/4が最後の1ヶ月に発生したということです。一方で新規雇用は527名だったとのこと。昨年後半からの広告市場の落ち込みがダイレクトに反映されている形です。

こうした時期にメディア企業は何をすべきでしょうか? 2020年からのコロナ禍は特にデジタルメディアにとっては追い風でした。そうではなく2008年を参考にすべきだと主張するのはFT Strategiesです。同誌はマッキンゼーが、リーマンショックを挟んだ2007~2011年の欧米企業1200社を調査したところ、最もリターンが高かった上位20社に共通したのは以下の取り組みだったそうです。

(1)賢くコストを削減する
(2)投資を増やす
(3)財務レバレッジを下げる

多くの企業がまず取り組む事はコスト削減だと思われます。先日のZホールディングスの記者会見でも、コスト削減で10%の増益を生み出すと明言されていました。同社は人員採用の凍結にも踏み込みました(日本はレイオフが難しいため、自然減で対応)。ただ、「賢いコスト削減」が必要だとFTは指摘します。

「リーマンショックの後にアメリカのメーカーは人員を削減しましたが、労働者の再教育とスキルアップ、設備への投資を行ったドイツメーカーにアジアのシェアを奪われたのです」。重複するテクノロジースタックの見直し、重複された機能の統合、など出来る事は他にも沢山あります。

投資という観点ではFT Starategiesが2022年に400社のパブリッシャーを対象に行った調査で「非常に収益性の高い」パブリッシャーの89%が今後3年間に独自の報道と分析への投資を大幅に増やす予定だと回答したそうです。また、優れたパブリッシャーはプロダクトとテクノロジーへの投資がそうでない企業と比べて大きいという傾向も分かったそうです。コンテンツだけでなく、全方位的に差別化をどう実現するかというのは鍵になるのでしょう。

DIGIDAYは (1)広告クライアントへの柔軟な提案 (2)リモートワークの活用と多様な人材の確保 (3)慎重な資金の活用 が鍵になると伝えています。BDGのCEO兼社長であるジェイソン・ワゲンハイム氏は「(2020年3月には)私たちは何が起ころうとビジネスを前進させるためのレバーを握っていました。今、私たちは同じことをしているのです」と述べています。

ヤフーとLINEの合併を決断したZホールディングスの川邊健太郎Co-CEOは「広告市況の悪化は想定以上で、この状況を打開するには抜本的な改革が必要と判断した」と述べました。同氏は広告について「当面の回復は見込んでいない」とも指摘。今のような厳しさが状態化すると想定して、メディアの舵取りをしていく必要がありそうです。

今週の人気記事から ヤフー、LINEが合併・・・コスト削減で利益成長を目指す

Zホールディングスと傘下のヤフーとLINEの3社が合併することが発表されました。記者会見した川邊Co-CEOは「広告の落ち込みが想定以上だった」と述べ、世界的な経済環境の悪化が背景にあったと述べました。コマース領域も販促費を削減し、利益率を求める路線に転換。合併により重複したサービスや機能の削減を進め、コスト削減で10%増益を目指す方針を明らかにしています。

1.【会見速報】ヤフー、LINE、Zホールディングスが合併へ「広告市況の悪化は想定以上」

2.KADOKAWAのQ3業績、大幅な増収増益・・・出版とゲームが牽引

3.「radiko」アプリが全面リニューアル

4.TBSテレビと共同通信社が「コンテンツメディアコンソーシアム」に参画

5.翔泳社など傘下のSEH&Iの第3四半期は増収も減益、出版堅調も前年の電子書籍販売を超えられず

6.Mintoと講談社が コンテンツホルダーと共同でクリエイティブ制作、SNSマーケを支援

7.弁護士ドットコムの3Q業績、メディア事業は6.3%増益、「クラウドサイン」送信件数は31.9%増

8.ホットリンク、wevnalのSNS広告事業等について事業譲渡契約を締結

9.アイティメディアの3Q業績、リードジェンと広告ともに好調で増収増益

10.TVerとZホールディングスグループが業務提携に向け基本合意 広告分析の共同開発など連携強化へ

会員限定記事から バズフィード、OpenAI活用で株価が4倍に

上場から株価の低迷が続いていた米バズフィードですが、ChatGPTを提供するOpenAIのAPIをメディア作りに活用するとWSJにすっぱ抜かれた事をきっかけに株価が急騰。なんと数日で4倍近くまで上昇しました。同社はクイズやレコメンドに活用するということですが、世界中のメディアでどうやってAIを活用するかという議論が活発になっています。

1.バズフィード、OpenAI活用で株価はなんと4倍に【Media Innovation Weekly】1/30号

2.【メディア企業徹底考察 #94】TSUTAYAを運営のトップカルチャーが赤字転落、書籍悪化に打ち手はあるか?

3.サブスク獲得には「限定コンテンツ、ブランド、割引」が重要・・・サブスク支援のRecurlyが2023年のレポートを発表

4.メタ、好決算で株価急騰・・・VR会社の買収認可で形勢逆転か?

5.【メディア企業徹底考察 #95】WordPressを爆速にする「KUSANAGI」のプライム・ストラテジーが上場、売上急伸の理由は?

6.米・ソーシャルメディア大手のSnapの決算報告を受け、株価は大幅下落・・・ターゲット広告の不振

7.Spotify、ユーザー数5億人が視野に・・・損失拡大も株価は急騰

8.米・ソーシャルメディア大手のSnapの決算報告を受け、株価は大幅下落。ターゲット広告の不振。

9.米司法省、グーグルによるデジタル広告配信技術の寡占状態を独占禁止法違反として提訴

10.BBC、中東向けの放送局「BBCアラビックラジオ」を閉鎖・・・WWIIから85年の歴史に幕

編集部からひとこと

節分が終わり、立春。まだまだ寒いですが春の足音が近づいているようです。野球ファンの自分としては早くもキャンプが始まり、今シーズンが楽しみになるニュースが連日届いていてワクワクしています。春からはコロナに関する規制も大幅に緩和される見通しで、ようやく以前の日常が戻ってくるのでしょうか?

《Manabu Tsuchimoto》

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Manabu Tsuchimoto

デジタルメディア大好きな「Media Innovation」の責任者。株式会社イード。1984年山口県生まれ。2000年に個人でゲームメディアを立ち上げ、その後売却。いまはイードでデジタルメディアの業務全般に携わっています。

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