2019年10月29日、Facebook Japanは同社が提供する写真投稿/共有サービス「Instagram」の現況や今後の展望、ビジネスにおける活用法などを提示するBtoBセッション「Instagram Day Tokyo 2019」を開催しました。本稿では、Instagram製品部門責任者のヴィシャル・シャー氏によるキーノートスピーチと、同社執行役員本部長の鈴木大海氏によるプレゼンテーションの模様をお届けします。
最初に登壇したシャー氏は、Instagramの掲げるミッション「大切な人や大好きなことと、あなたを近づける」にあらためて言及しながら、「大切な人」は、たとえば家族や愛する人。「大好きなこと」は自分が関心・興味を持っていること、持ちうることであると補足しました。
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Instagramは、ユーザーによる利用のされ方の変化にともない、日々進化をし続けています。現在テストが行われている「いいね!」の非表示化もそのひとつです、シャー氏はこれに関し「人によっては、「いくつ「いいね!」が付いたかなとプレッシャーに感じてしまうこともあります。我々としては、(自身が投稿しているものも含む)コンテンツにより集中していただきたい、より楽しんでいただきたいと思っているので、このテストを行っています」と補足しました。
次にシャー氏はビジネスに多大な貢献をしているイノベーションとして「発見タブ」、「ストーリーズ」、「ショッピング機能」を挙げました。Instagramのホーム画面は利用者がフォローしているものが表示されますが、発見タブでは利用者の興味や関心に合わせてパーソナライズされ、「まだフォローしていないが、興味を持ちうるもの」が表示されるため、未知なるものとの出会いを求めるニーズに応えています。
米国時間で2019年6月26日より、そんな発見タブにも広告を出せるようになりました。シャー氏は「発見タブには同じものは二つとありません。それを受けて、多くの方がInstagramについて語るとき「My Instagram」と言ってくれます。コンテンツが格子状に表示されるので一覧性が高く、世界でも有数の検索機能といえるでしょう。「何かを発見したい」という人に向けて広告を打てますので、ぜひ有効活用なさってください」と語りました。
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ストーリーズ機能に関しては「広告の存在感をより目立たせるためには、(ビジネス目的の)みなさんも消費者の方たちと同じことをすべきです」とこちらも活用を推奨。画像や動画は必ずしも(スマートフォンの縦持ちを想定した)縦長にしなければならないわけではなく、従来の横に長い画像をうまく組み合わせてデッドスペースを作らず縦長の画像のように見せる手法も見られるようになってきています。「広告にアンケートスタンプを使えるようにしました。広告の未来は消費者を巻き込むインタラクティブなものになると信じています(シャー氏)」。
Instagramの投稿から直接ECサイトへと移動できるショッピング機能(Shop Now機能)をさらに発展させ、Instagram内だけで購入まで完結できる「Checkout」機能も、クローズドβ環境で入念なテストが行われています。シャー氏はCheckout機能の現状と今後の見通しについては、優れたエクスペリエンスを提供できなければ、二度と利用してもらえなくなるのをよく理解しているので、テスト運用をじっくり行っていると語りました。
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さらに、今後の展望として、顧客とのつながりをより一層強化していく方針が掲げられました。InstagramはAR機能を活用することで、販売されているコスメやサングラス、ジュエリーなどを疑似的に試着できるサービスをテスト運用しています。「実店舗に足を運んで試着できるのはその店に在庫があるものだけですが、ARを活用すれば世界中のどこかに在庫があれば試着できます。今はインカメラで自分を映して試着するわけですが、アウトカメラを用いれば「この家具を部屋に置いたらどうなるだろうか」などという使い方もできうることを考えついた方もおられるのではないでしょうか」。
日本でもそのコミュニティを爆発的に拡大させ続けているInstagram。運営はその支持に応えるため、エンジニア、デザイナー、データサイエンティスト、リサーチャーなどからなる日本専用のプロダクトチームを国内に配置。日々日本のことを学び、それをサービスに反映させているとのことです。シャー氏は最後に「日本で学ばせていただいたことは、日本だけでなく世界に向けて発信しています。私たちはこれからも、一般利用者とビジネスユースのみなさんを近づけたいと思っています」と語り、スピーチを締めくくりました。
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続いて、Facebook Japan執行役員本部長の鈴木大海氏より、Instagramの直近の概要が語られました。2010年10月に日本でサービスを開始したInstagramは、2015年10月に810万、2016年3月に1200万、2017年10月に2000万、そして2019年3月に3300万アカウントと、着実に、かつ極めて急速にコミュニティを拡大しています。
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鈴木氏はその要因の一つとして「(Instagramが)若年層の間でマスメディアと化している」ことを挙げました。博報堂の調査によれば、日本の10代から30代の若年層は男性、女性ともにモバイルに触れている時間がテレビを見ている時間を凌駕。さらに、18歳~29歳が1カ月間でInstagramに触れている時間は1億時間以上にも及ぶとのことです。
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若年層の利用の仕方としては、ヴィシャル・シャー氏も言及した「発見タブ」の活用が挙げられました。鈴木氏は「”感じいいお店”というような特定のキーワードにしづらいものは、検索サービスで探すよりハッシュタグをたどる方がマッチングしやすい」と語り、電通の電通メディア
イノベーションラボ 主任研究員の天野彬氏の言を引用し「自分好みのものを探すときの行動が「ググる(Googleなどの検索エンジンで検索する)」から「タグる(Instagramで好みのハッシュタグをたどる)」へと変わりつつあります」と力強く語りました。
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さらに、「タグる」具体例として、発見タグを「ニュアンスネイル」で検索し、検索結果の中から自分の好みに合うネイルの写真をたどってどのネイルサロンであるかを調べ、そこを実際に訪れたという、とある20代女性の話が紹介されました。こうした発見タブで「タグる」手法はファッション、グルメ、レジャーなどで特に活用されているとのことです。
Instagramの急成長を支えたもうひとつの要因として、ストーリーズ機能が挙げられました。ストーリーズは24時間で投稿が自動的に削除される仕様となっており、鈴木氏はそうであるがゆえに「(投稿を)カジュアルで遊び心があるものにできた」と言及しました。
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そして、日本は世界でも有数の「ストーリーズ大国」で、1日あたりのストーリーズ投稿数は日本だけで700万以上であるとのことです。さらに、日本におけるInstagramのDAUの70%は何らかの形でストーリーズを利用しており、そのうち三分の一は企業アカウントなどによるビジネスの投稿であるとのこと。BtoCの場としても大きく活用されていることを強調。その好例として、Instagramをフル活用することで年商5000万を誇るまでに成長を遂げたという女性向け服飾ブランド「COHINA」が紹介されました。
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鈴木氏は最後に「Instagramは若年層にとってマスメディアといっていい影響力を持っており、発見から行動まで促すことができる特徴を持ちます。ビジネスユースでのストーリーズ投稿や質問スタンプの活用によるフィードバックの獲得なども盛んにおこなわれており、これからも顧客と企業が相互交流できる場として、よりビジネスに生かせるようにしていきます」とまとめました。
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(11/13 15:57) COHINA の月商を5000億としていましたが、5000万円の誤りでした。お詫びして訂正いたします。