オールアバウトはコロナ禍で強みを発揮しています。2021年3月期の売上高は前期比10.8%増の172億8,300万円、営業利益は111.3%増の9億900万円となりました。2022年3月期の営業利益は9.9%増の10億円を見込んでいます。
■オールアバウト業績推移(単位:百万円)
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オールアバウトの事業は、マーケティングソリューションとコンシューマサービスの2つに分かれています。マーケティングソリューションは「オールアバウト」などのメディアを運用して広告費を得るメディア事業です。コンシューマサービスは、2012年3月に連結子会社化したオールアバウトライフマーケティングの「サンプル百貨店」が主体となるEC事業です。
この記事ではわかりやすく、マーケティングソリューションをメディア事業、コンシューマサービスをEC事業と呼びます。
実は、成長の萌芽となったオールアバウトのメディア事業は、新型コロナウイルス感染拡大前から頭打ちが鮮明になっていました。コロナ禍の巣ごもり特需で、EC事業が大躍進を遂げているのです。しかし、2022年3月期の売上高を8.0%減と予想している通り、コロナ特需は息切れ間近で今後収束に向かうものと考えられます。
この記事では、オールアバウトの事業構造を分析した上で、次なる成長戦略としてどのような一手を打とうとしているのかを解説します。
目次
オンラインゲーム事業の売却でメディア事業の利益率は悪化
まずはメディア事業とEC事業の事業別業績推移を見てみます。
■オールアバウト事業別業績推移(単位:百万円)
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メディア事業から見てみます。
オールアバウトはメディア事業の一つに入っていた、オンラインゲームのファイブスターズゲームの全株を2018年5月にファイブスターズゲーム代表の渡邉幹雄氏に売却しました。ファイブスターズゲームは2017年3月期から債務超過に転落しており、売却はオールアバウトの財務体質改善の一環でした。全株を譲渡したことで2019年3月期メディア事業の売上高は前期比8.3%減の35億6,300万円となっています。営業利益は44.5%減の4億5,100万円。営業利益率は売却前の20.9%から12.7%まで悪化しています。