世界のメディア経営幹部、将来の見通しは「慎重ながら楽観的」【Media Innovation Weekly】10/30号

世界新聞ニュース出版社協会(WAN-IFRA)が先日発表した「World Press Trend Outlook」によれば、メディア業界が世界的に不透明さを増している中でも、当面の事業見通しについて前向きであることが分かりました。

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今週のテーマ解説 世界のメディア経営幹部、将来の見通しは「慎重ながら楽観的」

世界新聞ニュース出版社協会(WAN-IFRA)が先日発表した「World Press Trend Outlook」によれば、メディア業界が世界的に不透明さを増している中でも、当面の事業見通しについて前向きであることが分かりました。今回は、世界60カ国、175人のメディア企業幹部が参加した調査について紹介したいと思います。

今後の見通しは「楽観的」が逆転

去年のこの時期を振り返ると、年初に始まったウクライナ戦争に端を発したインフレ、コスト上昇が世界を覆っていました。「自社の今後12ヶ月間の見通しをどう捉えているか」という質問で、去年は悲観的が55%、楽観的が45%だったのに対して、今年は楽観的が55%、悲観的が45%と逆転しました。

さらに長期スパンになると傾向はより強まり、「3年間の見通しをどう捉えているか」という質問では58%が楽観的、42%が悲観的となりました。

直近で大きなテーマとなっているAIの活用について「会社でChatGPTのような生成系AIに積極的に取り組んでいるか」という質問では、半数(46%)が生成系AIに取り組んでいると回答しています。協会は5月に同様の調査を行っていますが、その時点では49%が「ChatGPTのようなツールを活用している」と述べていました。若干数字が落ちているのは、当初の期待が剥がれたのか、あるいは慎重な会社は引き続き慎重という傾向を示しているように思えます。

関連して「組織ではAI活用のための明確なフレームワークが制定されているか」という質問では、僅かに28%のみが制定されていると回答しています。調査ではこうしたAIの活用について"広範な戦略に基づいているというよりも、個々のジャーナリストや小規模なチームが主導して、非構造的に進んでいるのではないか"と分析しています。

今後12ヶ月間で最も投資する領域は?」という質問では、「読者収益」(83%)、「プロダクト開発と研究開発」(81%)、「その他の収益源の開拓」(80%)が80%を超える回答となり、新しいビジネスモデルの追求がなされていることが伺えます。もちろん「広告販売やオペレーション」(77%)、「マーケティング」(72%)といった領域も引き続き注目されているようです。

また「今後12ヶ月で投資する技術や製品は?」という質問では、「AIと自動化」(87%)、「データアナリティクスとインテリジェンス」(86%)が高い注目を集めました。その他、「映像」(79%)、「音声・ポッドキャスト」(74%)というフォーマットのほか、「CMS」(67%)、「CRM」(65%)などの基盤が続きました。

協会の調査担当ディレクターのディーン・ローパー氏は「昨年と異なりパブリッシャーは目先の先行きに強気である事が分かりました。ただ、同時に45%が弱気であることも忘れてはいけません。しかも、この調査はハマスがイスラエルを攻撃する数週間前でした。少し差し引いて考える必要があるかもしれません、つまり『慎重な楽観主義』くらいが適切でしょう」と述べています。

個人的には半数が「楽観的」という見解を示したのは意外でした。協会の加盟は新聞社も多く含まれますので、紙からデジタルへの移行が進み、前向きな戦略が立てられるフェーズに移行してきているのかもしれません。ちなみに調査の全文は年内には公開される予定だとのことです。

今週の人気記事から 朝日新聞社がAIを使った校正ツールを法人向けに提供

朝日新聞社が、入力された文章の誤りをAIが自動で検知する校正支援ツール「Typoless(タイポレス)」の提供を個人向け、法人向けに開始しました。同社の記事校正履歴を学習させたAIが文章を解釈し修正候補を提示してくれるそうです。実用的に使えそうなツールで良いですね。12月末にはAPI連携プランも提供開始する予定だということです。CMSへの組み込みにも良さそうです。続きを読む

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会員限定記事から YouTubeな「権威ある情報源」のニュースを推奨するウォッチページ

偽情報の氾濫への危惧が高まっている中で、YouTubeは報道機関の短編動画製作能力をサポートする取り組みを開始します。助成金や専門家のサポートを提供するほか、ユーザーがニュース動画を視聴する際に、権威ある情報源からの動画だけを共有する仕組みを展開します。続きを読む

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編集部からひとこと

週末のハロウィンは今年は多少落ち着いたのでしょうか? ささやかなハロウィンイベントに家族で出かけて、子どもたちは沢山のお菓子をゲットして満足そうでした。だいぶ寒くなってきました。もう11月ですね。

《Manabu Tsuchimoto》

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Manabu Tsuchimoto

デジタルメディア大好きな「Media Innovation」の責任者。株式会社イード。1984年山口県生まれ。2000年に個人でゲームメディアを立ち上げ、その後売却。いまはイードでデジタルメディアの業務全般に携わっています。

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