クッキーレスへの対応、パブリッシャーの多くは十分ではない【Media Innovation Weekly】5/27号

グーグルがChromeブラウザにおけるサードパーティクッキーの廃止を2025年以降に延期しましたが、まだまだ大多数のパブリッシャーにとってはクッキーレスの世界への対応は十分ではないようです。

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クッキーレスへの対応、パブリッシャーの多くは十分ではない【Media Innovation Weekly】5/27号

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今週のテーマ解説 クッキーレスへの対応、パブリッシャーの多くは十分ではない


グーグルがChromeブラウザにおけるサードパーティクッキーの廃止を2025年以降に延期しましたが、まだまだ大多数のパブリッシャーにとってはクッキーレスの世界への対応は十分ではないようです。

アップルのiOSなどではクッキーが使えない状態になっていて、既に全体のトラフィックのうち45%がクッキーが使えない状態になっているにも関わらず、です。そして運用型広告の収益は低下を続けています。

広告プラットフォームのTeadsが21日に発表した調査結果によれば、クッキーレスに向けたパブリッシャーの取り組みは依然として混乱と準備不足に悩まされているようです。これは4回目の同様の調査であり、世界58カ国、555のパブリッシャーが回答しました。

調査によれば、クッキーのない世界に向けて積極的な準備を進めているのはわずか32%で、大半は行動を先延ばしにしているようです。53%はクッキーレスソリューションの多さに圧倒されていて、新しい状況を理解していると自信を持っているのは28%に過ぎないようです。

さらに45%のパブリッシャーは広告収入の大幅な減少を見込んでいるようです。これは前年から120%になりました。懸念が強まっている事が分かります。

一方、44%のパブリッシャーはファーストパーティデータを活用して、コンテンツの品質を向上させる機会と捉えているようです。ただ、ユーザーに登録やログインを促す事は依然として大きな課題で、70%のパブリッシャーはユーザーのル・グイン率が25%未満だと述べています。また、半数以上が月に3回以上訪問しているパブリッシャーはわずか24%に過ぎないということです。

ウォール・ストリート・ジャーナルを展開するダウ・ジョーンズの製品管理担当副社長のケダール・プラブ氏は「加入者との直接的かつ長期的な関係から得られる豊富なデータに重点を置くことで、クッキー後の世界に備えるだけでなく、成長とエンゲージメントの新たな機会を切り開く事ができました」とコメント。

さらに「当社は現在、既知のユーザーで構成される直接的なオーディエンスに基づき、好みや行動に関する実際の有意義な洞察を豊富に含んだ、ターゲットを絞った効果的な広告配置を広告主に提供できる立場にあります。その一方で、当社の顧客(規制当局は言うまでもありません)が期待するプライバシー基準も維持しています」と続けています。

クッキーレスへの対応はウォール・ストリート・ジャーナルのようなティア1(最上位)のパブリッシャーと、中堅パブリッシャー、下位のパブリッシャーで状況が異なるようです。

当然のようにティア1のパブリッシャーがリードする状況で、52%は「こうした変化によりデータとコンテンツの品質で差別化を図る機会となる」と前向きに評価しているようです。ログインユーザーの獲得にも積極的で、62%がこれを推進。ログインユーザーの割合は10~25%と世界平均の2倍になっているようです。ファーストパーティデータを活用して広告主と連携している割合も74%に上っています。

中堅パブリッシャーはティア1に続く状況で、26%がクッキーレステクノロジーの調査にリソースを割いているということです。

下位のパブリッシャーになると、クッキーレスへの移行をしっかり理解しているのはわずか22%で、クッキーレスの代替手段をテストしているのも17%しかないそうです。

グーグルはサードパーティクッキーの代替手段としてプライバシーサンドボックスという一連のシステム群を提供しようとしていますが、最終的な製品はまだ完成していません。

DIGIDAYは複数のパブリッシャーの声として、グーグルが来年以降に延期をしたことを受け、プライバシーサンドボックスのテストをスローダウンすると伝えています。広告主からプライバシーサンドボックスの機能を活用した配信のニーズも現状ではないようです。

他方、気になる話題としてはPress Gazetteが、グーグルがプライバシーサンドボックスの利用を拒否するパブリッシャーの優先順位を下げるのではないかという懸念を伝えています。グーグルは英国の競争市場庁にプライバシーサンドボックスの導入を巡って調査を受けていますが、検索ランキングへの適用も争点の一つになっているようです。

過去にもAMPを導入しなかったパブリッシャーは不利な立場になった事があり、グーグルがランキングシグナルへの活用について明言しないことが疑心暗鬼を生んでいるようです。

引き続きクッキーレス時代の広告のあり方については追っていければと思います。

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編集部からひとこと

私事で恐縮ですが、誕生日を迎えまして、40の大台に突入しました。まだ元気なつもりですが、たまに週末は整骨院に行きながら整えつつ、引き続き仕事を楽しんでいければと思います!不惑というらしいので、迷わず、バシッと行ければと(どこに?)

《Manabu Tsuchimoto》

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Manabu Tsuchimoto

デジタルメディア大好きな「Media Innovation」の責任者。株式会社イード。1984年山口県生まれ。2000年に個人でゲームメディアを立ち上げ、その後売却。いまはイードでデジタルメディアの業務全般に携わっています。

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