若者のテレビ離れが進む中、テレビ業界そのものへの就職意欲も低下していることが明らかになりました。10代・現役高校生を対象としたマーケティング情報サイト「ワカモノリサーチ」が実施した調査によると、全国の現役高校生に「テレビ業界で働いてみたいと思いますか?」と尋ねたところ、61.4%が「働きたいと思わない」と回答しました。
調査は2025年9月13日から9月25日にかけて、全国の現役高校生(男女)101名を対象にインターネットリサーチで実施されました。かつては華やかな世界として憧れの的だったテレビ業界ですが、現在の高校生にとっては必ずしも魅力的な就職先ではないようです。
「興味がない」「闇が深そう」という声が大勢
「働きたいと思わない」と回答した高校生の理由を見ていくと、ほとんどが一言で「興味がない」という回答でした。テレビ業界の印象に関しては、「大変そうな割に給料が安そう」「上下関係が大変そう」「拘束時間が長そう」「どんな仕事をどれくらいやらないといけないのか?」など、「仕事としての不透明さ」と「厳しい世界」といった認識があるようです。
また、社会的にも大きな話題になった「フジテレビ問題」の影響もあってか、良い印象を持っていない高校生も目立ちました。「闇が深そう!」「ブラックそうだから」「暗いお話しか耳にしないから」といった意見が多く見られました。
この背景には「フジテレビ問題」だけでなく、国分太一さんの「鉄腕DASH」の降板や、お笑い芸人・千鳥が自ら降板を申し入れ、異例の番組終了を余儀なくされた「酒のつまみになる話」など、近年の「お騒がせ」が悪影響を与えているのかもしれません。「テレビ業界は闇が深いと最近よく聞くから」といった回答もあったように、「闇が明るみになった」ことによって職業としては「疑念を抱く若者」が増えているような結果となりました。
「働きたい」層は芸能人への憧れが中心
一方、テレビ業界で「働いてみたいと思う」と回答した38.6%の高校生の回答を見ていくと、「推しに会えるかもしれないから!」「楽しそうだから」「色んな芸能人にあえる」「有名人に会えるから!」といった俗に言う「ミーハー心」を理由に挙げており、テレビ業界に対しての憧れというより「芸能人に対する憧れ」に対しての回答が多い結果になりました。「働きたいか否か」という問いに対しては大きくかけ離れている印象でした。
その中で、制作に興味を示している人たちは、「ドラマが大好きでその制作に携わりたいと思ったから」「テレビの裏側で番組作成をしてみたいから」「自分が関わった作品や番組が他の人にも役立ったり楽しんで貰えたら絶対嬉しいと思うから」といった回答をしており、「制作に携わる」ことを仕事にしたい人は大前提として「自分が(その仕事が)好きだから」というどの業種においても必要な要素がテレビ業界に対してもあるように感じました。
動画編集の身近さが新たな入口に
また「編集作業をしたい」という回答も多く、「スタッフになって編集作業をしてみたい」「不特定多数の人のために編集作業などをするのがカッコイイと思ったから」「CGとかVTRとかの映像制作に興味があるから」などといった声も多い印象となりました。
「動画編集が好きだから」という回答もあり、TikTokやYouTubeの影響もあって、編集作業という言葉が身近にあるのも昨今の特徴です。自分たちで動画を撮影し編集する習慣がキッカケで、「セルフプロデュースがそのまま仕事に繋がる」といった新しい入口も増えていくかもしれません。
業界の持続可能性に課題
今回の調査結果は、テレビ業界が若年層の人材確保において大きな課題を抱えていることを示しています。業界への興味の薄さ、労働環境への懸念、相次ぐ不祥事による印象悪化など、複合的な要因が重なっていることが明らかになりました。
一方で、制作や編集といったクリエイティブな側面に関心を持つ層も一定数存在しており、SNS時代の動画制作経験が新たな人材の入口になる可能性も見えてきました。テレビ業界がメディアとして持続的なビジネスを続けていくためには、若年層に対する業界イメージの改善と、働き方の透明性向上が急務と言えるでしょう。



